第204話
立夏の強襲を香奈子は自然に対応してみせる。
このタイミングで立夏が勝負に出る事はわかり切っていた。
時間稼ぎのためでも、撃破のためでもここで香奈子を自由にさせる理由が存在しない。
作業を中断して、香奈子は迫る2つの色に対応する。
「落とす」
『「さっきまでとは違うわよッ!」』
先ほどは香奈子の魔力放出による防御すらも突破出来なかった魔剣が、今度は紙でも切り裂くようにオーラを切り裂いていく。
体力が不足しているのは変わらないが、立夏は軋む体を無視して魔力を絞り出す。
後10分、それを乗り切ればどうなっても良い。
後先を考えない全力の発露は消耗開始前と変わらぬ様子を周囲に印象付ける。
もう1つの太陽、あったかもしれない可能性は枯れずに確かに其処にあった。
『「はああああッ!」』
10、20、100、500と加速度的に剣群は数を増して香奈子へと殺到する。
並みの魔導師を百度は蹂躙して余る攻撃。
学園で五指に入るだろう魔導師、それも前衛魔導師の距離で戦う事が無茶だったしか言えない。
如何な障壁であろうが、これだけの数を前に無傷とは言い難く、1度決壊してしまえば後は脆いのが後衛魔導師の定石だった。
それは真由美すらも逃れられない砲撃型魔導師の宿命。
しかし、立夏が常識を超えた魔導師ならば、香奈子もまた常識を超えた魔導師である。
いや、可能性という意味では現時点で立夏を容易く上回っていると断言出来た。
「物量、受けて立つ。早い話、量と質であなたを超えれば良いだけ」
『「世迷言を簡単に言うッ!」』
「出来る」
静かに断言する様に立夏は言葉を失う。
もしかしたら込められた思いの重さが、立夏を怯ませたのかしれない。
澄んだ瞳が立夏を射抜く。
『「――あなたっ」』
「皆が出来ると信じて、私をここに導いてくれた。だから――」
私には出来る、と小さく呟いて香奈子は魔導機を構える。
剣を薙ぎ払う破壊の一閃。
休みなく放たれるショートバスターと魔弾の群れは立夏に魔剣に劣らない猟犬だった。
近接戦と考えるから戦えなく、だからこそ、香奈子は意識を逆転させた。
自分は至近距離で砲撃を撃ち合っているのだ、と。
近接戦は専門外でも砲撃戦はお手の物である。
認識を変えただけで勝てるほど甘い相手ではないが、精神的な遅れを解消することこそが重要だった。
「退かない。絶対に、絶対に」
『「私も、それは変わらないッ!」』
ぶつかり合う思いと思い、術者の舌戦と同じようにお互いの攻撃は潰え、蘇り、再度ぶつかり合う。
立夏の確かな能力に裏打ちされた魔剣と香奈子の全てが凝縮された魔弾に差異が見当たらない。
この学園で過ごした3年間を等しく込めた攻撃はどちらも一歩も引かなかった。
破壊系の魔弾は魔力を容易く砕く、魔力の放出に晒された剣では耐えきれない。
しかし、戦友を踏み越えるかのごとく、勇者たちは魔王に殺到する。
肉薄しては砕かれて、砕かれては蘇っていく。
どこかダンスでも踊るかのような2人の戦いに周囲は目を奪われていた。
「っ、次、この程度では止めれない」
『「いくらでもあるわよッ! 『曙』ッ!」』
『――展開、『剣の界』』
立夏が空間を切り裂くかのように剣を一振りする。
空間展開、剣の界。
文字通りの意味で剣の世界を生み出す立夏を象徴する術式。
直向きで我武者羅に前に進んできた立夏は切り開くという行為に強く惹きつけられた。
だからこそ、彼女の得意スタイルは今のように至ったのだ。
剣を生み出すのが上手いのは偶然ではない。
自分の道を、それだけではなくチームの道を切り開く力だった。
「……無為、さっきも言った。勝つのは私ッ!」
滅多に見られない雄たけびを上げて、香奈子は1000を超える魔剣に正面から飛び込む。
香奈子は冷静に今の状況を理解していた。
熱くなった中にも冷たい思いが残っている。
それは彼女に情がないわけではない。
熱く、同時に勝利ため思考を絶やさずにいる。
これが出来ないと世界にはいけない。
「本命は私じゃない。味方を逃がすため――」
香奈子は立夏の思考を読む。
同時に立夏は読まれる事すらも前提で自分の最大の技を放ったのだろう。
立夏の読み通り、香奈子は考えを悟り、迷ってしまった。
それが致命的な隙となる。
逃げ場を塞ぐように全方位を覆い尽くす魔剣の世界。
これを前に選択肢をぶらしてしまったのだ。
立夏はそれを見逃さない。
剣の界、そしてもう1つの奥義が香奈子を仕留めるべく放たれる。
『「これで!! 終わりだッ!!」』
『発動――『剣の嵐』』
香奈子の周囲見渡す限り全てを剣が覆い隠してしまう。
空が見えなくなるほどの黒い剣の嵐。
2つの全力、一瞬だけ見えた辛そうな表情が立夏をして、制御に苦しむ技だと言うことを香奈子に教えてくれた。
「あっ」
その表情を見た時、香奈子に1つの言葉が聞こえてきた。
もう、いいじゃないかと誰かが囁く声。
誰が囁いたかなど議論する余地もない。
香奈子自身が一瞬とはいえ、この時、香奈子は立夏に屈してしまった。
今の香奈子ではもう、どうしようもないと彼女が1番よくわかっていたからだ。
『剣の界』は何も剣を大量に生み出すだけの術式ではない。
生み出した魔剣を即時再生させるためのものでもある。
皮肉と言えば、皮肉だろう。
破壊系を極めた香奈子を超える再生の力を持つ立夏が、今、彼女に勝とうとしているのだから。
破壊するよりも多くの剣が香奈子を突き刺してしまう。
試合後の影響も考えない文字通りの全霊、アマテラス戦ですらもう少し後を考えていただろう。
最終戦だからこそ出来る暴挙でもあった。
「……でも」
負けを認めたからか、不思議と穏やかな心でその時を待つ。
むしろ、どこかワクワクするような心なのは何故だろうか。
敗北を前にして狂ったのか。
もしかしたら、そうかもしれないし、違うかもしれなかった。
「まだ、終わりたくない」
自然と言葉が口から飛び出す。
あまり多弁ではない香奈子の意思をチームはよく汲んでくれていた。
何から何まで初めて尽くしの国内大会。
何しろ、香奈子がきちんと試合をしたのはこの1年だけなのだ。
この明星のかけら戦に至るまでの全てを彼女は魔導の学校にいながら――初めて体験した。
普通の授業でも彼女は戦闘を行った事がない。
普通の術式はおろか、飛行すらも固有能力に覚醒するまでは真面に扱えなかった。
遠距離系は魔力を離れた場所に発動させる系統。
近くにも発生させるのは可能だが、当たり前の事としてより精密なコントロールが必要になる。
破壊系の魔力でも術式を使えるように、今のものは改良されているためまったくの未経験ではなかったが、それは言うならば補助輪を付けて自転車にのるようなものだった。
恥ずかしい、と彼女も1年生の時は人並みに思ったものである。
周囲から笑われた事など1度や2度では済まない。
それでも折れる事がなかったのは、これが自分の選んだ道で、共にいてくれた人たちが居たからだった。
止められたし、デメリットも知っている。
前人未到、誰も挑んだことのない狙った能力の覚醒。
それを試合にも出場しないで行おうとした馬鹿で夢見がちな少女。
1年生の赤木香奈子を端的に表現すれば、そのような人間になるだろう。
どれほど良いように言っても奇人であることに疑いはない。
「そっか……。私……」
能力に覚醒して、試合を行いここまでやってきたがあまりにも段階を突き抜けすぎたせいだろうか。
ここまで試合を楽しむ余裕すらなかった。
義務感、ではないが使命感のような重苦しいもので戦ってきたのは間違いない。
しかし、今、敗北を認めて香奈子はようやく楽しむ事が出来るようになった。
自分などよりも凄い人が世界にはいる。
それはなんと悔しいことで、――素晴らしいことだろうか。
気付けばエースになっていたから、自分のために頑張るという当たり前を忘れてしまっていたのだ。
この3ヶ月、いろいろな強敵とも戦ったがまだ足りない。
「ふ、ふふ」
迫る攻撃に笑みを浮かべる。
相手が怪訝に思っているのが伝わってきたが無視した。
素晴らしい敵、そして素晴らしい仲間たち。
ここでまだ負けるわけにはいかない。
何より、敵に対して失礼だろう。
赤木香奈子はまだ、きっと全てを絞り出していない。
こんな素敵な気持ちで戦うのは初めてだったから――彼女は歓喜と共に宣言する。
「まだ、私は上にいける」
自分で自分を縛っていたのだ。
最後まで諦めないと向かってくる敵へ、能力に縛りを付けて対峙するなど侮辱以外の何者でもないだろう。
魔導は認識の産物でもある。
これ以上は無理だ、と自分で判断すればそれが限界になってしまう。
枷を自分で作ってしまうのだ。
今こそ、それを超えなければならない。
「バランスブレイカ―、最大出力。――今、私は限界を超える」
『「なっ、きゃあ!」』
黒い魔力が香奈子を中心に噴き出す。
さながら彼女は台風の目だろうか、そこだけが奇妙な空白に包まれていた。
迫る魔剣群が砕かれて、光になる。
そして、黒い渦に飲まれていくのだ。
ブラックホールのように巨大化を続ける膨大な魔力の渦。
収束系能力の最大発動を持って、誰も見たことがなかった破壊の極みが姿が見せる。
創造系がそうであったように破壊系の魔力は変質を起こす。
破壊系の最終段階、砕いた魔素を魔力として吸収し際限なく巨大化する――究極の力押し、単純なエネルギーによる蹂躙はここに具現する。
「全てを、捻じ伏せるッ!」
『「――あなた、何者!? まだ――」』
立夏の叫びはここに集った全ての人間の叫びだった。
『「まだ、成長するというのッ!?」』
香奈子は立夏の魂の叫びに微笑み返す。
1度は目覚めて猶敗北したが、2度目は力に溺れるような事はない。
どんな破壊力も当たらなければ意味がなく、そして当て方は彼女の後輩が教えてくれていた。
「ありがとうクラウディア。術式解放――『ディストラクション・ストーム』」
『「これは……、そんなっ!!」』
香奈子を中心に魔力が周囲へ一気に放たれる。
クラウディアと同系統の術式だが、破壊力の規模、そして威力が桁違いだった。
何より、破壊系の極み『魔力崩壊』により、空間すらも荒して魔力を飲み込んでいく。
明星のかけらの陣を選手ごと蹂躙するように黒き力は暴れ回っていた。
立夏はとっさに障壁を張ろうとしたが、
『「術式が、展開出来ない……。違う! まさか、この魔力は!」』
障壁は展開出来るのだが、注いだ魔力がかたっぱしから分解されていく。
いや、正確には魔素へと還元されているのだ。
そして、立夏が輝きを失う程に香奈子の渦は力強さを増していく。
気合を入れれば、立夏ならば対抗可能だったが、それは普段通りの戦い方を出来ないことを意味している。
何より、経験豊富な立夏ですら1度も見たことがない光景が其処にはあった。
『「これは、一体……何よ!!」』
「創造系だけでなく多くの系統に極みがあるように、破壊系にもそれがある」
おそらく現在において、ただ1人だけ至れる可能性がある人物が至った。
事実はただそれだけだったが、このタイミングで覚醒してよいものでない。
『「っ……こ、この土壇場でそれに目覚めるなんて!」』
「あなたのおかげ。――あなたが、紛れもないエースだったから」
『「そ、それでも、まだ負けじゃないッ!」』
魔力の渦が当たると任意で魔力が消えていく。
当たらなければ意味がないのは変わらないが究極の魔力キラーである。
通常の魔導師では、もはや香奈子を倒すことなど不可能だった。
「私の魔力が満ちた場所で、魔導は使わせない」
『「っ、舐めるな!」』
立夏は飛行術式を稼働させて離脱しようとするが、
『「出力が、上がらない」』
「言ったはず、私の魔力が満ちた場所で――魔導は使わせない」
『「剣よ!」』
もはや、前に出て香奈子を倒すしかないと判断した立夏は魔導機を香奈子に投げつける。
召喚術式を応用した奇襲攻撃、かつて健輔たちを苦しめた技だが、
「通さない」
『「――こんな、ものにッ!!」』
香奈子は魔力を回転させるだけで対処してしまう。
近接用の攻防一体の術式『ディストラクション・ストーム』。
外側は圧縮された破壊の魔力が暴れ回り、内側は香奈子の魔力が満ちているため、一定の条件を満たさないと魔導の効果が著しく低下する。
ここに取り込まれた時点で勝負は付いていた。
香奈子が元々、明確は格下キラーである。
相手の工夫を潰して、真っ向勝負を要求した上で叩き潰す。
これに嵌ってしまった以上、もはや勝ち目はなかった。
『「っ、まだよ! 時間を稼げば!」』
残りは後5分。
立夏が離脱させたはずのチームメイトはもう十分に距離を稼いではずだった。
ここに香奈子を縛り付ければ、勝機はまだある。
「ん、それは間違いない。でも、私も考えがないわけじゃない。このまま、全魔力を放出すれば、最低でもこっちの陣は潰せる」
『「ど、どんな魔力してる!」』
「今まで使う機会がなかっただけ。この内側は副産物だけど、元々出来たはずのもの」
枷を壊して能力が全体的に1段階向上している。
特に破壊系の本質たる破壊に限ってなら、桜香にすら比するレベルだった。
カウンター系の術式が今だに鬼門だが、ただ創意工夫をして勝てる相手ではない。
「――準備はいい? そちらが残れば私の負け」
『「落ちれば、あなたの勝ち」』
お互いに確認し合うように頷きあい、
「弾けろ」
宣言と共に香奈子を中心に光が飽和して、周囲を吹き飛ばす。
自分を半ば爆弾とした香奈子の最強術式。
圧倒的な破壊力は周囲の全てを文字通り、破壊の嵐として飲み込んでいくのであった。
『……会場の皆様は、今少し、お待ちくださいッ! 魔力乱流により、結果の確認が遅れております』
教師陣や大学生が結界の補強に駆り出されるという珍しい光景の中、会場は固唾を飲んで結果を待った。
そして――
『今、結果が届きました! 試合終了! 明星のかけら、両名が撃墜! 勝者は――天空の焔、赤木香奈子だあああああ!』
勝者の名が呼ばれて、会場で歓声が爆発する。
明星のかけらの敗因は1つ。
試合を決めに行った立夏を信じて、陣地内に留まってしまったことだった。
時間的に爆発圏内から逃れられる事は十分に可能だったが、立夏を信じないような行動を取る事が出来なかったのである。
たらればを語る事が許されるならば、仮に慶子が残っていれば、勝者は明星のかけらだっただろう。
立夏を信じて、疑う事が出来る彼女ならば結果は逆だった。
それほどまでに危ういバランスの上で勝負は決まったのである。
『試合時間は58分! 最後まで戦い抜いた両チームに惜しみない拍手をお願いします!』
溢れんばかりの拍手、笑顔でそれを見送り、放送部部長は閉会を宣言する。
『それでは、これにて天祥学園、魔導競技大会。国内部門、最終戦を終了とします! 皆様、ありがとうございましたッ!』
数多の敗者、多くのドラマを生んだ国内大会。
約3ヶ月に渡る激闘はここに終わりを告げるのであった。
「終わったな」
「はい」
健輔たちは試合が終わったフィールドを複雑な表情で見送った。
クラウディアの勝利はライバルとしても、友人としても嬉しかったが、同時に明星のかけらに対する遠慮もあったからだ。
無邪気に喜べる程、無神経ではなかった。
「次は世界で、だな」
「香奈子さんとクラウ、何より他の方も大きく進歩してくるでしょうね」
「油断できないチームが増えたわね? 健輔は勝てそう? もう1度あの人たちに」
「どうだろう。やってみないとわからないが……」
疲れたようにフィールドを後にする香奈子に視線を送る。
最後の術式などは強力だったが、同時に陥穽も見えた試合だった。
それに健輔は負けるつもりで戦う気なども微塵も存在しない。
勝てない相手だとも思っていなかった。
「健輔?」
「いや、何でもない。後から言うのは誰でも出来るからな。今は両チームの健闘を讃えようぜ」
「そうだね。世界戦がどうなるのかはわからないけど、今はそれでいいと思うよ」
圭吾の言葉に頷き、健輔は再度視線をフィールドに向けた。
そこには勝者と敗者の姿がある。
涙を流す明星のかけら、喜びを露わにする天空の焔。
幸いにも今まで健輔本人は多くの敗北を経験しているが、チームとしては負けた事はない。
しかし、この先の戦いではどうなるかはわからなかった。
相手は格上や同格ばかり、楽な試合はおそらく1つも存在しないだろう。
「……負けたくないな」
「……そうですね。勝ちましょう」
「ああ、そのためにも残りの時間で強くならないとな」
「ふふ、健輔さんらしいです」
優香の言葉に頬を掻く。
いつも似たような事を言っていることは自覚があった。
言っておかないと不安な心を隠しているのだが、それを見抜かれたようで恥ずかしくなったのだ。
「ん、んん! よし、部長たちのところにいくか」
「はい」
「りょーかい」
「そうだね」
仲間たちを連れて健輔たちは会場を後にする。
国内総合優勝1位『クォークオブフェイト』。46戦、無敗。
第2位『アマテラス』。46戦1敗。
第3位『天空の焔』46戦2敗。
いずれも強豪の名に恥じぬ優秀なチームばかり、ここで彼らの戦いは一旦の幕を降ろす。
しかし、それは新たな戦いへの準備期間に過ぎない。
この日、天祥学園国内大会が終了した日から僅かに遅れて、世界各国の国内大会も終わりを迎えた。
翻ってそれは、世界戦に出場するチームが決まったということでもある。
大会終結に伴い、各国の大会運営本部へ出場チームの情報が伝達された。
――日本。
数奇な運命で集った太陽を破りし、新興の星々。
潜在能力、爆発力、安定性と相反する要素を備えたビックリ箱のようなチーム。
優勝候補アマテラスを1度は破った実力で世界大会の嵐となる。
――チーム『クォークオブフェイト』
国内大会でのまさかの敗北を超えて、復活した太陽。
個人戦闘能力では世界においても頂に立つと言っても過言ではない天才魔導師『九条桜香』率いる国内最優秀チーム。
日本に悲願の優勝を持ち帰るため、何よりも雪辱のため、『不滅の太陽』は明日を照らす。
――チーム『アマテラス』
昨日、激闘を制したばかりの燃え上がる焔。
欠片から受け取った思いによって、執念の魔導師は更なる高みに至る。
雷の乙女を筆頭にチーム力や安定感に欠けるが逆に爆発力を見せる脅威のチーム。
破壊の黒と雷光の黄、2つの光が相手を燃やし尽くす。
――チーム『天空の焔』
――欧州。
美貌と実力、そして実績を兼ね備えた美少女のみの集団。
歴代最強にして最優秀の『元素の女神』フィーネ・アルムスター率いるチーム。
欧州最強の呼び名が高く、頂点を狙える器にも関わらず玉座には手が届かなかった。
餓えた最強は万難を排して世界に挑む。欲しいのは1つだけ、1度も負けない事。
――チーム『ヴァルキュリア』
歴史においては欧州最古。近接系バトルスタイルの元祖にして、力押しに長けたパワーファイター、近づけば何人たりとも逃さぬ騎士の集団。イギリスの英雄たち、その名に恥じぬよう自らを強固に律する。目指すは最強の地位を奪還すること、女神は我らが討つ
――チーム『ナイツオブラウンド』
機動力に特化した高速チーム、飛行術式で音速を突破可能な世界最速の風。
試合終了レコード3分を持つが反面攻撃力や防御力に難がある特化集団。
勝つ時は最速で勝ち、負ける時はあっさりと負ける。
名前の通り、風のような魔導師たちのチーム。
――チーム『ラファール』
超火力集団、特殊な集団術式『意識共融』により、チームが1つの魔導師のようになっている。防御能力においても世界最先端の多層結界術式を用いて鉄壁を誇るその姿は名に恥じぬものである。火力と防御を突き詰めているが、エースは存在しない。
力を合わせる、その究極系を体現した凡人たちのチーム。
――チーム『アルマダ』
――アメリカ。
3連覇を狙う魔導師世界の『皇帝』クリストファー・ビアス率いる世界最強のチーム。
皇帝の能力を中心とし、分業が進んだチーム。最大の特徴はその物量。
皇帝が国であり、国が皇帝のため、彼を倒さない限りチームは常に最高のポテンシャルを維持する。歴代最高の空間展開範囲を誇り、広げる事だけを考えるならば、日本を覆う事も可能。戦闘単位の桁が違う。
――チーム『パーマネンス』
皇帝の進撃を阻めるのか。3度目の挑戦、真由美との決戦も期待される『女帝』ハンナ・キャンベル率いる過去最高の布陣を持って挑むアメリカ最高の砲撃集団。
エース2名、準エース4名という質を極めた輝く流星。
国内大会では対皇帝の秘策を隠し通した策士めいた1面も持つ。
『クォークオブフェイト』にとっては因縁の相手。
――チーム『シューティングスターズ』
次代の『皇帝』とも言われる若き天才率いるチーム。
潜在能力では現皇帝を凌駕するとも言われている『皇太子』率いる新興軍団。
弱点は経験不足、才能でどこまで補えるのかが鍵。
未だに底を見せない不気味な存在でもある。
――チーム『クロックミラージュ』
何れも劣らぬ強豪たち、国内最終戦すらも超える規模の戦いしかこの先には存在しない。
戦場は世界に点在する全ての魔導校。
規模、そしてレベル全てがこれまでを上回る。
真由美の悲願、葵の望み、優香の後悔、健輔の夢。
乗せるものはいくつもあり、その全てが大事だった。
しかし、勝者は1チーム。
他の夢を全て粉砕して、初めて栄光を掴むことが出来る。
残酷な勝負の世界で、少年少女の夢を賭けた戦いがついに幕を開けようとしていた。
開催は2月。
残りの期間を悔いなきように過ごせるよう、健輔たちもまた前に進み始めるのであった。
冬の始まりと終わり、そしてもう1度の春に向けて、時間はただただ針を進める。
終わりの始まりはもうすぐそこに――。
3章完結です。
ここまで読んでくれた方、全てに感謝を。
更新などについては活動報告に記載しますので、そちらをご覧くださいませ。




