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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
九章 第四回公式大会

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9-20.準決勝第二試合アーカイブ

 アーカイブを見終わって、動画選択画面になったウィンドウをじっと眺める。

 試合自体は予想通りですぺなるてぃの勝利だった。


「……どう思う?」

「彼は、バレットを使えたんだな……」


 率直な感想を述べると、目の前のリーダーが苦笑した。


「いやまあ、スキルのツリー的に、火と隕石のアローバレットは必須だから、持っていることは知っていたんだが……」


 使っているところは見たことがなかった。

 大技の地獄の門と星の怒り、雑魚狩り兼決着用のアロー2〜3種、それからスポットマグマとポイズンチェーンバインド。

 β時代からそろそろ2年半彼を見ているが、他のスキルは、最初期のレベル上げ時以外では何一つ使っているところを見たことがない。

 奥義系の技さえも見たことがないことには今思い至った。


 正直なところ、マルチタスクが全くできないのではないかと思っていた。

 実際マルチタスクを一切しない魔法職として様々な動画や記事で紹介されている。

 圧倒的なタンクがパートナーで、周囲がそれを許しているからこそできる、パーティブラックマジシャンの解答の一つだと、そう思っていた。


 ――傀儡師のジョブがこなければ、あるいはニンカが傀儡師を嫌がったら、最後には提案するつもりでいた構成だ。

 暗闇で4分間待機はそれはそれで精神的なキツさがあるので、彼女にそれが出来たかはまた別の話になるが。


 動画を戻す。

 バレットは若干の時間の差をつけて、アネシアさんにぶつかっている。

 1つ目でなにかアクセサリーが反応するエフェクトが走ったので、多分身代わりチャームだろう。4発が同時に着弾していれば、おそらく彼女は耐えたのではないだろうか。


 それにしても地獄の門が開いてからが本番とは。よく考えたものだ。


「ロイドから見て、どう?」

「きちんと操作できている。このバレットの時間差は偶然ではない」

「やっぱそうか」

「今までは必要なかったってこと?」

「でもこれできたらもっと楽に勝った勝負いくつかあるだろ」

「本人に聞いたわけではないから単なる予想になるが」

「うん」


「この戦闘スタイルが、一番アルマジロ先生が格好良く見えるから、じゃないか?」



 会議室がしんと静まる。


 全員がぽかんと画面を見て、


「――――――そんなロイドみたいなことある?」

「なぜそこで俺を引き合いに出す」

「準決勝でリーダートラ戦を成立させるために、ブラマジ覚醒での短期決戦をしなかったお人のことを引き合いに出しております」

「……一応想定はしたが、その作戦だと負けていた」

「うっそでしょ!?」

「本当だ。今回俺は大技をほとんど置いてきたので、3分じゃ倒しきれない」

「マジ!?え、そっちの試合も見たい!今度やって!」

「トラはともかく、ハムさん誘うのはできるかな……」

「あの人掴み所がないからにゃ〜」

「トラが呼べば来るとは思うが……どの道当面は勘弁してくれ。さすがにアレの二度目はすぐはやりたくない」

「絶対やらないって言わないあたりがロイドだよね」

「トップなら、チャレンジャーの挑戦は受けるべきだろう」

「それトラに言ったらすぐにでも再戦出来そう」


 会議室にさざ波のような笑いが広がる。

 次の3位決定戦はセリス・アネシアペアが連戦になるので、少し休憩時間が長い。

 公式配信は裏で解放されているフリー戦闘の様子が流れていて、おるさんとねころさんが憂さ晴らしのように連戦している。


「まぁでも、先生が格好良い、か。確かに有り得るかな。ですぺなのCCOからの持ち上がり組は本当に先生のこと大好きだから」

「EFO加入組との温度差凄いよね」

「あれは、仕方ないというか……」


 グライドが奥歯に物が詰まった言い方をする。

 なるほどこいつは知っている側か。


「なんか知ってんの?」

「悪い、個人情報」

「りょ。お前ほんと色んな人と知り合いだよな」

「あー、ブレイダータンクは、実は先生に教わった」

「マジ?」

「ですぺなはゲーム的な質問にはなんでも答えてくれるよ。教えてくれって言ったら普通にフィールドで一緒にやってくれた」

「学校の宿題も教えてくれるって噂はほんと?」

「それはものによる。全く嘘ではないけど」

「嘘じゃないんだ……」


 まあ、彼は文字通り先生だからな。

 そんな思考を少し隅に追いやって、リーダーを見る。


「装備には考えがあると言っていたが、決まったか?」

「おう、決まった。コレ」


 リーダーがアイテム欄から取り出したそれを目の前に置く。

 全員が一様に微妙な顔をした。


「あの、リー君」

「おう、どうした?」

「本当に、それで行くのかにゃ?」

「え、なんかダメ?」

「ロイ君、なんか言ってあげて」

「…………ええと、勝ちに行くんだな?」

「当たり前じゃん」

「……………………分かった。それでいい」

「ロイドが匙投げちゃったじゃん」

「え、これ俺悪いの?」

「むしろなんで悪くないと思ったの?」

「大会のフィナーレを彩る盛り上がりとかは考えない感じ?」

「いや、まあ、それが簡単なわけでは、ないから……」


 グライドの言葉に少し冷静になった。いや、そうだ、落ち着け。それだって別に簡単なわけではないんだ。

 トラキチ戦があまりに盛り上がりすぎて少し基準がおかしくなっているが、それだってすべて決まれば十分スーパープレイだ。

 一つ深呼吸をして、もう一度それを見る。


「分かった。いつも通りだな」

「ああ、いつも通り。俺が釘付けて、お前が倒す」


 そろそろ休憩が明ける。

 次は三位決定戦。

 セリス・アネシア対、トラキチ・ボンレスハムだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] マンガだとおるくんの扱いは、予選回でわかりづらくモブっぽくやられてて閑話回でそのコマが拡大されてココ⇒とか描かれてそうだとか、 この97話もモニター映像としてはまともに描きこまれてなくてセリ…
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