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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
九章 第四回公式大会

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9-16.本戦 準決勝第一試合 リーダーロイドVSトラキチボンレスハム

ぼっくん「……」

けっとC「ほら、ぼっくん、始まる」

ぼっくん「やべえ、どうしよう緊張する……」

けっとC「お前が緊張すんのかよwwwほらもうカメラ回ってっから、起きて」

ぼっくん「それは先に教えろ!?」

けっとC「ほい、じゃあぼっくん復活したから喋ってくぜ!準決勝第一試合!!」

「準決勝、3位決定戦、決勝の4試合のみ、試合時間に制限がありません。万が一30分をオーバーした場合、以降の試合時間が繰り下がります」

けっとC「繰り下がり試合時間は公式つぶやいたーと特設サイトで公開されてるから、チェックよろしくぅ!」

ぼっくん「さあ選手の入場d……あ、ああああああああああああ!?!?!?!?」

けっとC「ぼっくんサイレンになっちゃった(笑)」

「うーん、気持ちは分かります。さあ最初に入ってきたのはAグループより、リーダー&ロイドペア!」

けっとC「反対側、Bグループのトラキチ&ボンレスハムペアも入場だ!ほらぼっくん、言うんだろ!」

ぼっくん「や、やりますっ!!――3名がサザンクロスメンバーですが!今日この時だけ、こう呼ばせて頂きましょう!」

けっとC「ギルドランキング1位、ギルドサザンクロスより!ギルドリーダー、サブリーダー!リーダー&ロイド!」

ぼっくん「最高ギルドランキング2位!()()()()()()()()()!ギルドリーダー、サブリーダー!トラキチ&ボンレスハム!!!!」


「「因縁の対決が、幕を開けます!!!!!」」



ぼっくん「巨人の小盾だあああぁぁああああぁああ!!!!!!」

けっとC「通常の盾はフルエンチャでジャストガードのダメージカット率95%なんだけど、リーダーが持ってる巨人の小盾は98%までカットできるぜ!」

ぼっくん「その代わり取り回しがすっごい難しい!重量が大きくてほかの装備妥協しなきゃいけないし、サイズが大盾相当だから装備デメリットとして振り回しにスローデバフがかかる!あと単純にデカくて視界制限が結構きつい!それからエンチャ適性が低くてフルエンチャのために必要な素材がバカ高い!あと」

けっとC「ぼっくんちょい落ち着こうか?」

ぼっくん「俺さ!昨日リーダーがどの装備で来るかめっっっっちゃ考えてたんだよ!」

けっとC「超考えてたよね」

ぼっくん「3択くらいまで絞って!その中のひとつが巨人の小盾でさ!!!」

けっとC「予想的中じゃんおめでとう」

ぼっくん「解説するために文章書いてきたんだよ!」

けっとC「ガチかよ」

ぼっくん「文字数が6000字とかになっちゃって!!!」

けっとC「うん、その解説はしまっとこうね。後でブログで公開しようか」

ぼっくん「でもほんとに来るとは思ってなくて!!俺実は夢見てたりしない!?大丈夫!?」

けっとC「ごめんみんな、ぼっくん第一回大会の思い入れが強すぎてちょっとバグってるけど許して」

「巨人の小盾は、第一回大会決勝のリーダー・トラキチ戦でリーダー選手が使用していた盾になります!」

ぼっくん「俺、俺あの試合見てEFO始めたんだよ!!!マジ、マジこれを目の前で見れるとか、泣きそう……」

けっとC「泣かないで、これから解説だから」

「おや、トラキチ選手よりメッセージが届きましたよ!」

けっとC「え、マジあの人そういうことするの?」

「"今度はその盾ごとぶち抜く"」

(バタン)

けっとC「ぼっくんダウン!!」

(バンバンバン)

けっとC「マイクに入るから台バンしないで」

「あ、リーダー選手からもメッセージです!」

けっとC「え、向こうも?」

「"抜かせねえよ、今度は1人じゃないからな"」

(昇天アイコン)

けっとC「オーバーキルだから!ぼっくんにオーバーキルだから2人とも!!!」

「さあそろそろ開始時間が近づいてまいりました!」

けっとC「ぼっくん起きて!ここで解説逃したらお前一生後悔するぞ!」

ぼっくん「それはダメ!!!さあ!さあ!伝説の再来が!!始まります!!!」



 □■□■□■□■□■□


「ファンサなんて珍しいですね」

「効率がいい時はやってる」


 隣の敬愛する彼に声をかければ、何でもなさそうにそう言った。

 目の前には因縁の相手が、因縁の装備を持って立っている。


「またあの盾か」


 彼は忌々しそうに眉をひそめた。


「あなたを受ける装備としては、正しいですからね」

「まあいい。今度は俺も、一人じゃねえからな」

「ぶち抜いてください」

「当たり前だ」


『さあ!カウントダウンです!』


『カウントダウン! 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 GO!』


「ファイヤーアロー ウォーターアロー メテオアロー ファイアーバレット」


 1,2,3

 即座にロイドの短時間魔法が次々と飛来する。

 だけど決して動かない。その場から動かない場合にのみスキルのチャージ時間を短縮するパッシブスキル、不動の決意が発動する。

 4,5,6

 大丈夫だ。彼は。トラは。決してこちらに攻撃を通さない。

 槍の振り回しスキルに絡め取られ、魔法の矢が次々に落ちる。即座に装備が剣盾に切り替わりジャストガード。そこからまた槍に持ち替えてバレットを落とす。

 7,8,9

 さあ、あとは任せました。私の英雄。


女神よ英雄を歌えヘーロースアエイデテアー


 視界が光の奔流に飲まれ、そして即座に控え室に飛ばされた。





 飛ばされた控室で急いで動画を覗く。

 トラが凄まじい速度でリーダーに接敵し槍を入れた。

 ジャストガード……ガードの瞬間に何かが光った。リーダーのダメージは…………ゼロ。


『え、ぜ、ぜろ?』

『マジックシールドか!?』

『いや、演出が地味だ。多分ただのバリアじゃないか?』

『バリア……って軽減率いくつ?』

『メイジが使用できる障壁系初期スキルのバリアは、軽減率は2〜5%になります!』

『ダメージカット率はアレだけど、初期スキルだからクールタイムは短いぜ!』

『チャージ時間のほうが軽減し易いし、巨人の小盾ジャスガと含めれば最小倍率引いても100%カットか!』

『その代わり固定1秒受付時間のあるマジックシールドに比べて、バリアの受付時間はチャージ時間依存だから、最小チャージだと0.1秒とかだね!』

『ジャスガよりきつくねえ!?!?』


 本当にやってきましたね、巨人の小盾+バリア。理論カット率100%の机上の最強編成。

 すべての攻撃のジャストガードに加え、魔法職にもジャストガード並の発動精度を求める、トンデモ構成です。

 特に本気になったトラはスキル名を言わないファンサービスをしないので、リーダーもロイドも彼の発動スキルをすべて見きらないといけないというかなり過酷なスタイルになります。


 リーダーの装備は巨人の小盾のデバフを軽減できる狂戦士シリーズ、ロイドの装備はMP自然回復量を増やす流星の賢者シリーズ。

 長期戦で来ましたか。

 正直、ブラックマジシャン覚醒を使用しての短期決戦で来ると思っていましたね。

 そちらの方がトラの美麗なプレイが見れたはずなので、残念です。


『海竜拳!』

『ジャストガード!カウンタースラッシュ!』

『じゃすとが…え、いつ剣に持ち替えたの!?』

『ん、今のスキルなんだ!?』

『グリードソードですね!』

『スキル名言えええええ!!!』

『言わないほうが強いのは分かってるけどさ!』

『きたぞダブルキャスト!』

『ファイヤーバレットとサンダーバレット!』

『トラキチに、え、当てに行かない?!』

『いや逃げ道塞いだ!』

『からのリーダー烈火!』

『をジャストガード!』

『後ろから最後のバレットが直撃!!』

『すげえ上手い!』

『でもトラキチの捨て身アッパーも入った!』

『ジャスガはしたけど、バリアは来てないな!』


 ロイドの操作するバレットがトラの逃げ道を塞ぐように降りかかり、タイミングを合わせて正面からリーダーのスキルが襲い来る。

 ジャストガードした後ろ隙にバレットが刺さる。

 後方バレットを無視してそのまま突き出したトラのアッパーをリーダーがジャストガードで止めるが、バレット操作中は他の魔法が発動できないのでバリアは発生せず、初ダメージが通った。

 98%カットは伊達ではないが、回復手段の乏しい二人にとっては痛いだろう。

 耳につけているアクセサリーがおそらくリジェネⅠだけど、200レベルともなるとリジェネⅠの回復は焼け石に水です。――まあその水に泣かされる日もあるので、馬鹿にはできないのですが。


 スキルとカウンターの応酬が続く。

 リーダーもロイドも初期地点からほとんど動かず、ただひたすらスキルが乱れ飛ぶ。


 ジリジリと削れる互いのHP、そしてジリジリと削れる――――時間(・・)


「勝って、ください。私の、英雄」


 □■□■□■□■□■□



 拳のほんの少しの光の違い。


 槍に纏う色の僅かな差。


 振るう剣に纏うエフェクトの違い。


 エリシオンファンタジーオンラインは、スキルは全て発動0.017秒(1フレーム)でどのスキルが発生しているか分かるようになっている。

 魔法などによっては、発動前の溜め段階から分かるものもあるが。


 ――タイダルランスをジャストガード。カウンターブレードをジャスガされ、返しの拳激骨にグリードソードを当てる。


 +200%の補正がキツイ。スキル応酬で相殺するには少し上のスキルを使わなければいけない。頭のいつもと違うところがチリチリと焼ける感覚がする。


 ――通常攻撃に一閃をぶつける。一閃をジャスガする。


 バリアはクールもチャージも短いが、ゼロではないので、ジャスガをする攻撃は選ばないといけない。


 ――五月雨斬りを槍スキルで絡め取られる。剣の通常攻撃に一閃を入れる。


 HPが満タン状態だとダメージが上がるパッシブスキルがファイターの基礎スキルにあるので、HP自体は削り続けなければならない。


 ――ロイドがトリプルキャストバレットを発動する。逃げ道を塞いだ正面に烈火を入れ相殺させる。後ろから数発バレットが刺さる。


 リジェネⅢの回復が追いつかない程度に削ろうと思うと、どうしてもロイドの嫌がらせバレットが必要になる。


 ――背後のバレットを気にも止めず正面からぶち当たる回し蹴りをジャストガード。本当に98%カットされているのか怪しいダメージが入る。


 動き回ることを想定した対人戦ではあまり強くないので、独立ツリーのスポットマグマはロイドは置いてきてしまっていた。


 ――メテオアローが飛来する。ジャストガードの直後に烈火を合わせたはずなのに、何故か拳の通常攻撃で大分相殺された。


 過集中に陥ったとき独特の、音が消えていく感覚がする。


 ――海竜拳をジャストガード。五月雨斬りを絡め取られ、返しの桜蘭突にスネークウェイブを合わせる。


 剣先を見る。槍先を見る。拳を捉える。


 ――五月雨斬りに五月雨斬りを当てる。ロイドがマジックシールドを発動し、ダメージを抑えた。


 目の前のトラが獰猛な笑みを浮かべているのが、嫌に鮮明に視界に映った。




 時間の感覚が消えていく。視界の隅が暗く歪む。

 解説の音も観客席の歓声も全く聞こえない世界で、目の前の男の息使いだけが一定のリズムを持って時を告げる。



 剣戟だけがどこか遠くに聞こえる、嫌に静かなフィールドで。





「っぱ、ミス待ちは駄目だな」





 その声だけが、確かに響いた。





()()()()()()()()()()()()()()()()





 ロイドのバレットが飛来する。





 黄金に輝く髪の横にきらめいていたアイコンが、消えた。





 □■□■□■□■□■□




「――――」

「――――――ぁ」

「――――っ――――――」

けっとC「――――――――――ぐっっっっっっどげええええええむ!うぇる!ぷれええええええええいど!!!!!!!!!」

ぼっくん「きゅーどす!とぅざ!ぷれいやあああああああああず!!!!!!」

「し、勝者!リーダー&ロイドペア!」


Good game, well played! :超いい試合だった!

Kudos to the players! :選手たちに称賛を!

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