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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
九章 第四回公式大会

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9-13.本戦 三回戦第二試合 なななぽいみんVSトラキチボンレスハム

※リーダー視点

『さー時間になりましたね!三回戦第二試合!』

『最初に入場してきたのは!ギルドランキング5位!ギルド777(セブンス)のメンバーだ!』

『ギルドリーダー!ランサーのなななさん!』

『メインヒーラー!ビショップのぽいみんさん!』

『さあなななさん、顔色が悪いぞ!?』

『いやー、うん、気持ちは分かる!!』

『お相手の入場だ!最強のファイター!トラキチ!』

『爆発ビショップ!ボンレスハム!』

『このゲーム基本プレイヤー対エネミー(PvE)だからさあ、アタック+200%とか、過剰火力が過剰火力になりすぎてませんかねえ!?』

『まーアレのメインはリジェネと防御+200%だし?』

『おっと、敏捷+200%も無視できないぜ!』

『さあななな選手はどう相手をしていくのか!始まりますよ!』


 カウントダウン! 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 GO!


『ホーリーショット』

『チャリオットランス』


『ボンレスハム狙いだ!』

『ハムは10秒棒立ちだからな!10秒以内に倒せばバカバフは発動しないぜ!』


 ギルドハウスで画面を眺める。

 手の空いているギルド員が総出で会議室の大画面を覗き込んでおり、室内は結構な人数が集まっている。


「いややっぱ無理よな」

「10秒でトラ出し抜いてハムさん倒すのは、やっぱ厳しいよねえ」

「あいつタンクとしても優秀っすからね」


 あいつ普段は暴走機関車だけど、上から何番っていうトップ勢だからなぁ。ワントップ型だから受けは上手いんだよな。


「無振り無補正ビショップとはいえ、一応レベル200のステはあるしね。ホーリーショット程度じゃ万が一当たっても倒せないかな~」


 さて10秒。タイムアップだな。


女神よ英雄を歌えヘーロースアエイデテアー


『発動したああああ!!!』

『何回見てもすごい爆発!!!』

『ダメージは特にないただのエフェクトだけどな!』


「常にトラの左側に立とうとしてるのは、さすがだねぇ」

「あそこ視界ないからな」

「あいつは装備画面閉じたりはしないの?」

「素材採取のときくらいしか閉じてないって聞いたけど」

「むしろ素材採取の時は閉じるんだ」

「初めて聞いたわ」


 画面ではトラキチが圧倒的な速さでなななさんを追い回し始めた。


「そういやこの女神よ英雄を歌え?って元ネタなんなんです?」

μῆνιν(メニン) ἄειδε(アエイデ) θεὰ(テアー)、イーリアスの叙事詩の序文だな」

「意味は?」

「女神よ怒りを歌え…みたいな意味だったはずだ。物語の序盤の、引き込み文だな」

「ロイド詳しい~」

「それしか知らない。イーリアスは読んだことがない」

「いや普通ないでしょ。ってか何語?」

「多分、古代ギリシャ語だと思うが……」

「それで聞き慣れない音なのか」


 勝負はついたかな、という雰囲気が部屋に流れ、みんなの口数が増え始める。


「奇術師のスキルも元ネタ知らないやつが結構あるなあ。コインチェンジは手品のやつだよね?さっき使ってた……デモンリュネールは?」

「ピエロ・リュネールというフランスの古い詩…だと思う。後から作られた楽曲の方が有名だが」

「あれ強そうだよね」

「火力としてはかなり高い。ただスキル効果がな……」

「味方を含む全てのキャラクターからランダムに対象を決定、そのキャラクターに向けて鎌のような斬撃が飛んでく。しかも当たり判定は常にあって、道中に関係ない味方がいてもぶつかるスキルっすね」

「また巻き込み(そういう)系か……」

「カフェオレが落ちたから使えたのかー」

「そういうことだな。予選の……Bブロックのどこかだったはずだが、1/100なら引かないだろうと発動している奇術師がいた。鎌は味方に飛んでいった」

「なにそれアーカイブ見ようよwww」

「1%は、引くからなw」

「実際に1%を引いたのかは分からないけどな。もしかすると後ろのプレイヤーが選択されたのかもしれない」

「ああそっか、乱戦で強そうって思ったけど、そういうこともあるのかー」

「あ、みんながよく使ってるプライズイズアサプライズは?」

「あれはただのダジャレ」


 画面では槍射程を生かして引き打ちのようなことをしていたなななさんの懐に、とうとうトラキチが入り込んだ。


『海竜拳』

『ハイプロテクション!』


「おお、今のタイミングは上手いにゃ」

「ぽいみんさんのプロテクションは上手いよねー」

「チャージを常に保持し続けるのが上手いのよねー、ハイプロは意識を外すとチャージが減ってく仕様だからにゃ」

「まじビショップとブラマジはできねえわ…」

「リー君にそう言ってもらえると、ビショップやってる甲斐があるにゃ」


 剣士系がマルチタスク不要かと聞かれれば全くそういうわけではないのだけど、それはそれとしてビショップやブラックマジシャンのそういう意識の傾け方は本当にできる気がしない。


 目の前に座る猫の獣人のプレイヤーの顔を見る。

 ニャオニャオとねむねむ蝉は、このゲームの公開初日にフリーで組んだ相手だ。

 序盤のゴールド節約のため、できればアコライト希望者と組みたかった。

 普段は女性キャラクターとは組まないようにしているが、ニャオニャオは固定パートナーが男性――御夫婦だと聞いたので組みやすかった。

 それ以来2年以上の付き合いだ。


「?どうかした?」

「いや……ニャオ姉との付き合いも長くなってきたなと思って」

「まる二年か〜このくらいの歳になると一瞬だったけど、そういわれると長い気もしてきたにゃ」

「ニャオ姉そんな年じゃないでしょw」

「みんなに比べたら大分おばちゃんだよ〜」


『勝者!トラキチ&ボンレスハムペア!』

『ぐっどげええええええむ!』

『いやー結構食らいついてたね!グッドゲーム!』


 そんな話をしている間に、勝負が着いた。

 まあこれはもうどうしようもない。GG。


 ニャオ姉がうーんと伸びをして、少しさみしそうに微笑った。


「しばらくまたリアルが忙しそうなんだよにゃー」

「言ってたねー、まあ無理しないでな。……それはそれとして、ビショップの代理って難しいんだよなぁ」

「信用商売だからねえ。でも悪いんだけどほんと終わりが見えなくて、本格的にメインメンバー探すくらいの感じで行ってもらっても良い?」

「それはさすがに周りと相談かな……」

「えー!やだやだニャオ姉がいい〜!」

「ぽこちゃんわがまま言わないで〜!ボスチャレこれ以上停滞させるのはダメにゃ〜!私も潜りたいけど~!」


 実際ニャオ姉の代わりってなるとすごい難しいんだよなー。大会終わったらまた方々に相談しないと。


 今日は一日いるらしいニャオ姉にみんなが集って、会議室は賑やかだった。



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