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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
九章 第四回公式大会

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閑話 控室の溜め息

「勝っちゃったねえ」

「勝っちゃい、ましたねえ」


 アネシアと二人で、控室で呆然とする。

 勝ったほうが呆然とするって何だという感じなんだけど、これはもう呆然とするしかない。

 最後まで足掻くとは決めていたけれど、根本的な相性が絶望的に悪く、本当に勝てるとは思っていなかったのだ。


 本戦用控室は大会終了翌日まで利用できるらしく、すでに本日分の試合はすべて終わったけれど自由に出入りができた。

 ということで二人で呆然としているところだ。


「え、明日、明日何時からでしたっけ?」

「試合開始は9時からで、時刻の繰り上げなしです。Dグループは11:15スタートですね。今日と一緒です」

「朝がゆっくりなのはちょっと助かります」

「シアさんは朝弱いんですか?」

「寝起きが悪いんですよね~。妹に毎日起こされてる感じで」

「妹さんもEFOやってるんでしたっけ」

「やってますよ~、イモリアです。()()()()()()()()()()に会いたがってたので、そのうち一緒に遊んであげてください」

「あ、あーはい、そのうち……」


 姉だからアネシアで、妹だからイモリアらしい。

 最初の言い出しっぺがどちらなのか、ちょっと気になるところだ。


「さて、現実逃避はこの辺にして、ほんとに明日の相談しましょっか」

「そうですね、明日の初戦は、あるくんさんとクレシェンドさんですね」

「お散歩同好会ギルドリーダーと、スタッカートの後衛火力担当かー」

「リアル車椅子ペアですね。動画は、まあ、見てもアレですが」

「高機動魔法職、実現できたらそりゃ強いだろうよという感じですね……」


 公式アーカイブを開く。

 山羊車に乗ったブラックマジシャンが周囲を旋回し、溜めの短い魔法をバンバン使っていく。

 傀儡師の召喚獣が嫌がらせのように戦場をかき乱している。


「セリスは、次の試合どっちの装備で行きますか?」


 二回戦は突如お披露目した麻痺武器で敵を止めて、行動不能時間にタンクを倒すという作戦だった。

 お相手が麻痺対策を切らず、毒を受けるつもりで来ていたら詰んでいたけれど、賭けには勝った。

 いやなかなか麻痺入らなくて結構焦ったけどね。レンジャーを放置する戦術だったから、アレ以上時間かかってたらシアさんが落ちてたと思う。

 というか私狙いだったら、アサシンのほうが耐久が低いので負けていた。予選の逃げシアがよほど嫌だったと見える。


「そうですね、実は、この武器を使おうと思ってて」


 取り出した武器を表示すると、シアさんの顔が引き攣った。


「…………マジですか?」

「え、ええ。これが一番いいかなって……」

「これ、持ってたんですね……」

「実は借り物なんです。ニンカさんから。なので明日終わったら返さないと」

「ああー、なるほど、そういう」


 クリスマスデート配信の話を根掘り葉掘り聞こうとしたら、頼むから黙れと押し付けられた短剣だ。

 短剣よりもデートの話が聞きたかったのだけど、大会出るんでしょ、と話を変えられてしまって、結局これは借りたままだ。


「さすがトップギルドの短剣、エンチャがエグい……」

「すごいですよねぇ、ちょっと持ってるの怖いくらいです」

「試し切りはしました?」

「ちょっとしました。これなら火力出ると思います」

「じゃあ、私があっちを受け持って、セリスがそっちを追い回す感じですか…」

「そうなります、よろしく、シアさん」

「分かりました。大役、お受けします」



 短剣を大事にアイテムボックスにしまい込む。


 掲示板ではトトカルチョを外したらしい人たちの絶叫が書き込まれていた。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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