9-5.予選 Dグループ第4ブロック 下
『この予選は、勝たなくていいんですよ』
セリスが真剣な顔で言った。
『どういうことでしょ?』
『ダメージランキングでトップに立ち、最後の瞬間に全滅していないなら、キルスコアはゼロでいいんです』
『…………まぁ、そうですね?』
理論上はそうだけど、ダメージスコアを稼いでキルしないのは現実的じゃないよね?他のプレイヤーはキル狙ってるわけだし。
『アサシンの、さらに言うと毒アサシンに死にスキルがありまして』
『それは一般に産廃ってやつでは』
絶滅危惧種の毒アサの、さらに死にスキルって。
『攻撃力に応じた数の毒を降らせるというスキルなんですが』
『クリティカル補正なしの攻撃力判定ですか?』
『そうなんです。しかも入るのは状態異常最弱と名高い毒Ⅰでして』
『そりゃ産廃ですね……アサシンは攻撃力自体は低いですし、そんなに数も出ないのでは?』
『そうです。なので初手にこれを、奇術の時間込で打ちます』
「やっぱセリス、天才系のプレイヤーだと思うんだよなぁ」
外周を走り回り、適当なところにワープマーカーをセットしながら独りごちる。
イリュージョンは幸い大当たりを引いて、大虎がそこら辺のプレイヤーに向かって突っ込んで行った。
フィールド中央ではほぼ全てのプレイヤーが上を向いて、たった1人のプレイヤーを追いかけている。
「すごい……魅せプだ……」
大会でそれをやるのか、魅せプレイ。
プレイヤーの頭を積極的に踏みつけ、高く飛び上がりまたポイズンレインを降らせる。
特に戦闘に入ったプレイヤーの頭を必ず踏みつけ、戦闘自体を中断させている。
ウザイ、これはウザイ。全プレイヤーの「とにかくアイツを落とせ」という殺意がこちらまで伝わってくる。
毒ダメージを稼ぎ切るまで他のプレイヤーを落とさせない、完璧な魅せプレイだ。
これ他のプレイヤー、後から気がついて頭抱えるんじゃないかな。その頃には勝負着いてるだろうけど。
そろそろ開始1分、毒を入れ続けたならダメージランキングはトップになっただろう。
私もイリュージョンは切らさないように気をつける。
2回目はカクレクマノミ、……ハズレだ。
そしてしばらくして、セリスが落ちた。
いや頑張った。1人で80人くらいに追われて2分持ったのはほんとに凄い。
中央は乱戦に突入し、殺気立ったプレイヤー何人かがこちらに向かって走ってくる。
向こう側では魔法職がこちらに杖を向けているのが見えた。
でも残念ですねぇ、あなた方がセリスに釘付けになってるうちに、こちらの準備は終わったんですよー。
「神出鬼没」
私はフィールドのちょうど反対側に転移し、先程居た場所に複数人のバレットが突き刺さった。
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「第4ブロック、今最後の選手が降参を宣言しました。ゲームセットです!」
リーダー「あっはは、おめでとう!」
先生「これは作戦勝ち、おめでとー!」
ロイド「おめでとう、グッドゲーム」
先生「実際問題あれどうやったら勝てんの?」
ロイド「セリスはどうせそのうち落ちるから、初手パートナー狙いをする。奇術師にテレポートマーカーを設置させたら負けなのでスピード勝負だな」
リーダー「全員が一斉にバラければ二回目のポイズンレインは効果が薄いから、ダメージ勝負ももしかしたらできたかも?」
先生「対人戦初心者を大量につっこんだ乱戦じゃ厳しいな…」
リーダー「何人か気付いてた人はいたけど、半数がセリスの魅せプに引っかかったら負けだからねー」
ロイド「あとはビショップが敵味方問わずアンチポイズンをばらまくという手もあるが……」
先生「それ、やったペアは負けるよね?」
リーダー「だね。セリスを勝たせないことはできるけど、そのペアはビショップのMP不足で負ける。囚人のジレンマ的な?」
先生「魅せプが強すぎたんだよなー……」
「さて、予選の全ブロックが終了しました!少し時間がありますので、予選を振り返って参りましょう!」
Dグループ本戦出場者
第1ブロック:どん太(ソードマン)・もちまる(セージ)
第2ブロック:リゲル(レンジャー)・アルデバラン(ブレイダー)
第3ブロック:bookstack(ブラックマジシャン)・ボイルドエッグ(ロイヤルガード)
第4ブロック:セリス(アサシン)・アネシア(奇術師)
第5ブロック:烏丸(ソードマン)・クリオネ(セージ)
第6ブロック:△○□(細剣士)・ぼっちゃん(レンジャー)
第7ブロック:ロケット(ウォーハンマー)・Hattrick(ランサー)
第8ブロック:あるくん(傀儡師)・クレシェンド(ブラックマジシャン)




