8-1.サブリーダーのいない日
リーダー視点
「あれ、ロイドは?」
「さっき出ていきましたよ。特に行き先は言ってなかったです」
「うーん、そっか。打ち合わせしたかったんだけどな」
「まあすぐ戻ってくるでしょ」
「だな」
あいつは時々ふらっといなくなる。
大抵はスキル回しの研究とかで、手頃なインスタントダンジョンに潜っていることが多い。
結構そういうの見るの俺は好きなんだけど、あいつは研究中のところ見せるの嫌がるんだよなぁ。
そろそろ年末年始向けの打ち合わせをしておきたかったんだけど、まあちゃんと待ち合わせをしたわけではないので仕方ないか。
今日は仕方ないので何か他のことを。
「そういやリーダー、次の大会概要出ましたけど、ロイドペアっすか?」
「そのつもりだよ」
「他の面子どうします?」
「いつも通り、出場は自由。出場パーティが複数になったらサポメンの割り振りを後で相談。当たったら両者全力」
4回目の公式大会の概要が発表された。
ソロ、ペア、パーティと来て、今回はペア戦らしい。
こういうお祭りは楽しみたい奴らで楽しむのが良いと思っている。参加制限も、強要も、手加減もしない。
「ニャオ姉とねむ蝉は出るって言ってました。あと、ニンカとグライドが出るそうです」
「お、今回はグライドたち出るんだ!たっのしみ~」
「傀儡師なら動けますからねー。結構楽しみっすよね傀儡師ペア戦」
「グライドはどれで来るんだろ?いやー当日の楽しみにするのもいいな」
「バトルジャンキーみたいな顔になってますよ」
「ねえほんとに、俺どんな顔してるの?」
「鏡いります?」
「いらない」
「あ、リーダーいた~!」
ギルド員で、配信スタッフでもあるドリアンが駆けてくる。
「おうドリアンどうした?」
「年末年始のイベント決め進んでる?」
「えーと、年始を遊び尽くせスペシャルにゲストで呼ばれてるから、元旦の昼はいない。夜にでも雑談枠でもとろうかなーと思ってる。ソレ以外はまだ未定で……今年は年末お遊び企画どうしようね?」
「結構問い合わせ来ちゃってるからぱぱっと決めて告知出したいんだけど」
「はい、スイマセン」
イベントの概要決めは俺とロイドの役目だ。進んでないんだけど。
去年は上級レイドにみんなで挑もう企画だった。
今年はギルド員も増えたし、どうすっかな……。
「それはそれとしてなんすけど」
「うん?」
「年末年始の特設ガチャに合わせて、ニンカの錬金やって欲しいって要望が……」
「めっちゃ嫌がりそう」
「人気なんですよおおおお分かってくださいよおおおおお」
「自分で言って!俺に振らないで!」
「リーダーでしょ!?」
「ってかそれお前がガチャ回したいだけだろ!?」
「そうですけど!?」
あまりにも錬金を失敗しまくるので、一度お遊びで配信してしまったニンカの錬金配信、こんなにも人気コンテンツになるとは全く思わなかったんだよな……。
ってか何だよ錬金中ガチャが当たりやすいって。いや気持ちはわかるけどさ。
「あ、リーダーおる~。あれ、ロイドはどったん?」
今度はサポートメンバーのびっくり箱が来る。
「今どっか行っちゃったって。また研究かなー?」
「そか。じゃあリーダーでええんやけど、こないだ集めた稲妻鳥の羽と雷光の御子合わせた雷雷風木エンチャ、成功したで」
「え?なにそれ聞いてない」
「はあ?聞いとけや。盾につけたら雷の反撃*2と風のノックバックと木の耐久アップ全部つくんちゃうかってロイドがゆうとってな。二属性素材2つのエンチャは今んとこ成功例なかったけど、こりゃ組み合わせ相性問題っぽいわ」
「まじかよ大発見じゃん」
「でな、これ公開する?大会までは黙っとく?」
「え、あ……あーどうしよう」
ええ、すっごい大発見だけど……?え、そんなさらっと成功したの?正気?
「ちな成功率は1%くらいやった。もらった素材全部溶かした」
「二重の意味でまじかよ」
「失敗演出がな、"失敗"演出やってん。微妙やけど"不成立"演出とはちゃうんよあれ」
「その演出見分け小技はどっかに情報ある?」
「しらそん。よく見りゃわかるしどっか載ってるんちゃう?」
いやーーーー聞いたことないですねえええええ~~~~~!
なんだこいつびっくり箱か。びっくり箱だったわマジ勘弁してくれ。
「リーダーいるじゃーん、ロイドは?いない?じゃあリーダーあの件なんだけど」
「あ、リーダーこないだ頼まれてた作成なんすけど」
「ロイドさんは?じゃあリーダーで。次のボスチャレなんだけど」
――――――ロイド!早く帰ってきて!!!




