7-5.ソロアサシンとガールズトーク
「で、なんで断ったの?」
ログイン早々呼び出された先で、ニンカさんがパーティを組みウィスパーモードにする念の入れようで問いかけてきた。
「えーと、何の話でしょう?」
「ロイドさんが、とくめ……セリスにそれとなく聞いといてくれって」
「"それとなく"って言葉の意味は知ってる感じです?」
「意味は知ってる」
意味は知ってるのかー。
あと地味に呼び方が名前になっている。リーダーさんに怒られたのかもしれない。
「いいじゃん入れば。一緒に遊ぼうよ」
「ん、んー……ニンカさんは、どうしてサザンクロスに入ったんですか?」
「グライドが、あたしと一緒ならサザンクロス入るってリーダーに交渉したから?」
ほほう、なにそれかっこいい。今度詳しく聞きたい。
「顔がうっせえよ」
「掲示板はもっとすごいことになってるけど見ました?」
「アーアーキコエナーーーイ!!!」
昨日あれからいろいろあったようで?ニンカさんとグライドさんは一躍時の人となっていた。
ってか詳しく聞きたいんですけど?聞いてもいいよね?
「デートするってホントなんですか?」
「すっ……る、けどぉ!」
「わ~!映画館って噂を聞いてて」
「まってどこまで話広がってんのちょっと待って」
「雑談系の掲示板どこもかしこもこの話でもちきりでしたけど?」
「ホントに待って!?」
ニンカさんが顔を真赤にしてうずくまる。
真っ赤だなぁ。かわいいなぁ。デートの話とかすごい聞きたいなぁー!
「いいいいい、今はあたしの話はいいの!!あんたの!セリスの話!!」
「けちー。まあえっと、そうですねぇ、なんて言ったら良いんでしょう。……自信がない?」
「超上級ボス相手に完璧な避けタンクかまして、見向きもされていなかったスキルを上級ギルド必携スキルに押し上げて、新規フィールドの隠し要素発見して、あと何が必要なのさ?」
「うーん、そう言われるとアレなんですが……」
ニンカさんは「わっかんないなー」と言って足をブラブラさせた。
「まーセリスが目立ちたいわけじゃないのは知ってるけどさ」
「そうですね。トップギルドに入って目立ちたいとか、そういう気持ちは皆無です」
「でも現状、入らないほうが目立つじゃん?」
「そう……なんですよねぇ」
毎日何十件という規模で、ギルド勧誘のメッセージやギルド招待通知が届く。
サザンクロスに入ればとりあえずこれは収まるのだろうことは分かっている。分かっているけれど。
ニンカさんはじっと私の顔を見て。私は私で曖昧に微笑って。
「――――気持ちの問題?」
「ええ、はい。気持ちの問題です」
「そか」
「嫌なわけではないです。気持ちの問題に区切りが付いたら、入れたらいいなって思ってます」
「ん、リーダーとロイドさんに伝えとく」
「すみません、ご迷惑おかけします」
するとニンカさんはニッと笑って。
「迷惑じゃないよ。ちょっと残念なだけ」
「いつでも一緒に遊びましょうよ。グライドさんとのお邪魔にならなければ」
「そーいうのはいいの!!まーあれだ、グライドよりあたしのほうがちょいプレイ時間長いからさ、ちょいちょい呼ぶから覚悟しとけ!」
「はい、覚悟しときます。結婚式は呼んでくださいね?」
「ちげえって言ってんだろ!?!?」
「え?ウェディングってフレンド呼べますよね?」
「~~~~~~!!!!!!お~~~ま~~~え~~~!!!!」
からかったのが分かったようで、ニンカさんがムニムニと頬を引っ張ってくる。
「にんはさんははんちふぁいしふぁんれすよう~」
そんな日常が、とても楽しい。
いつかきちんと自信を持って、この人たちの隣に立ちたい。
真っ赤になって話をする彼女に茶々を入れながら、そう思った。
7章ここまでになります。
ちょっと次のまとまったお話の前に作中時間が空くので、間章挟みます~
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