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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
七章 ソロアサシンはトップギルドに誘われる

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7-2. ソロアサシンと雷光の御子

「曇ってきたな」


 リーダーさんがそう言ったのと、他のプレイヤーが駆け出したのは、ほとんど同時だった。

 中には戦闘が終わっておらず、首刈り兎(ヴォーパルバニー)を引き連れて駆け出したパーティもいるが、プレイヤーのほうが早いらしく引き剥がされ、次第にタイムアップで消えていく。


「曇り?」

「例の雷雨だよ。単純な時間経過じゃないっぽくて、まだ雷雨タイミングが検証できてなくてね。それでみんなここで時間つぶしてたの」

「……ああ、雷雨限定モンスターがいるって」

「そうそれ。田園エリアに雷を落とすボス格モンスター。ドロップの雷鳥の羽が防具エンチャにすごいよくて、みんな狙ってる。風雷の二重属性で、素材ランクが7。アイテム欄でスタックする」

「それはすごい」


 ランク7素材も、二重属性素材もそれなりの種類があるが、その両方を満たすものは基本的にスタックしない。

 アイテム欄をすごい圧迫するし、ギルド倉庫の容量は知らないけれどそっちも無限ではないはずだ。

 純粋に雷属性自体がエンチャントとしても有用だし、武器防具を山程作る上位の人達ほどほしいだろう。


「雨だと戦闘はしにくいし、休憩しよっか」

「そうですね」


 リンゴの木の上に登る。

 背の高い木の上からは田園風景が一望できて、曇り空なのが残念なほどきれいだ。


「そういえば、ギルドの他の方たちは今どちらにいらっしゃるんですか?」

「んー?アレ見える?神殿っぽいやつ」

「えーと……あれですかね?」


 遥か遠くに神殿?と言われれば神殿っぽい石の建物が見える。


「あそこにここのフィールドの稲を供えると、ボス戦ができんの。雷鎚の神ボルナデラ。あれに無限アタックしてる」

「え、リーダーさん行かなくていいんですか?」

「あー、実は抜けてきたんだよね。アイツラが心配で」

「……なるほど、それは仕方ないですね」


 一度抜けたから戻りにくいんだろうか。もし私のために戻っていないんだとしたら少し申し訳ない。

 話していると本格的に雨が降り始めた。雨脚は刻々と強くなり、遠雷が響く。


 そして黄金に輝く大きな鳥が現れて翼を大きく広げ、田園に雷が落ちた。

 田園プレイヤーは雷耐性装備なのか、とくに避けもせず陣形をとっている。

 雷鳥の2羽目が現れる。3羽目。4羽目……え、多くない?


「雨の時に田園の中にいるパーティの数だけ稲妻鳥が来る。ほらあそこ、右はじのパーティ、3羽きてるでしょ、あれ2人パーティを3つで行動してるんだよ。倒せれば一気にドロップを稼げる」

「とんでもないことしてますね……」

「まあやりたくはなるよね。でも、んー、あの装備で3羽はムリじゃないかな?ああやっぱり、一人落ちた」


 突進、落雷、風圧。足場は水没フィールド扱いの田園で、雷に当たらなくても感電するため防具が雷耐性に固定される。雷雨状態で視界も悪く、一般的に雷に通りやすいはずの火魔法系は威力減状態。なるほど、"凶悪"ってそういうことか。

 手を輪っかの形にして「拡大」状態で周囲を見る。

 特に攻撃にあたったように見えなかった人が落ちて……あ、田んぼの中、確かドジョウがいるって言ってたっけ?踏んだらダメージ?なるほどね……?


 稲妻鳥の雷が落ちる。

 プレイヤーには当たらなかったが、稲がブワッと光り、田んぼの中を光の波が伝わっていく。


 ――――あれ?


「リーダーさん」

「ん?どうしたー?」

「雷が落ちた地点の稲、なんかちょっと光ってません?」

「雷のエフェクトで光るけど……え、どこ?」

「ちょうど雷が落ちたその場所のやつですね、えーとすみません見てたのはもう光らなくなっちゃって……あ、あそこ雷挙動ですかね?」


 稲妻鳥が雷を落とす。

 雷攻撃の後は少し敵の高度が落ちるので、プレイヤーが我先にと襲いかかる。

 その背後で、先程ちょうど雷が落ちた場所の稲が、ほんの少しだけふわりと輝いた。


「……………………ほんとだ」

「ちなみに稲って収穫」

「できる」

「じゃあ何かありますね」

「っし、取りに行こっか。雷耐性ってどれくらいある?」

「えーと、アクセ全部雷耐性のにすれば、80%ですね」

「この盾あげる」

「リリパットの盾、雷耐性30%」

「俺の予備だから使って。俺はアクセで100%にできるから」

「あ、はい」

「鳥倒す装備ではないから、戦闘は回避優先。セリスは田んぼ脇で待機、稲を回収して。敵意を使うからタゲは全部俺になるはずだけど、タゲが向いちゃったら速攻で田んぼから離れて。君が死んだ場合はアイテム保守のため風切羽を。俺が死んだ場合はタウン復帰するから撤退。あの鳥はパーティ全員が田んぼの外に出ればいなくなるから、俺が消えたら逃げられるはず」

「了解です」


 いてもたってもと言う様子で手早く指示を出し走り出すリーダーさんの後に続く。

 広い田園の中で他のプレイヤーがいない場所まで迂回し、リーダーさんはずぶ濡れのまま田んぼに入った。

 どこからともなく現れた稲妻鳥が空中を旋回し、雄叫びを上げた。


 リーダーさんが敵意の塊を使用する。


 雷が落ちたのを、転がって避ける。

 先程までリーダーさんのいた地点に飛び込み、黄金に輝く稲を掴み取る。

 ばちゃばちゃと動きにくい田んぼ(水没フィールド)を動いて脱出。アイテム確認は後だ。

 次の雷にも飛び込む。田んぼを抜ける。飛び込む。田んぼを抜ける。


 5回目の回収後なにかヌメッとしたものを踏んだ感触があり、直後に足先を締め上げられる感覚が走り、HPをごそっと八割持っていかれた。とっさにジャンプブーストで上に飛ぶとヘビのようなものが足に絡みつき、つま先を喰らっていた。


「アーケインムーブ!」


 一刺ししてから離脱するという技を利用してドジョウに短剣を突き刺し、スキルの反動で後ろに転がる。

 田んぼから体をはじき出され盛大にころんだが、ドジョウの方もぬめぬめと体をくねらせながら田んぼに戻っていく。


 ショートカットからHPポーションを使用する。


 即死しなくてよかった。


 そして雨が上がり、雨雲の引き上げと同時に稲妻鳥が天高く登ってどこかへ消えていった。


「おっつ。場所変えよっか」


 ばちゃばちゃと田んぼから上がってきたリーダーさんといっしょに、果樹園まで戻った。



「で、またここなんですね」

「果樹園基本的に安地だからねー。木の上なら周りの戦闘の邪魔にもならないし?」


 さて、これでただの稲(ランク2木属性素材)だったらそれはそれで笑い話だけど、判定は。



<雷光の御子> ランク5 木雷

 雷を宿した稲穂。

 雷の子にして神饌。



「これは……」

「ほー、稲はランク2ですよね?ランク3つ上がりましたね!複合属性はこのランクだと珍し……リーダーさん?」


 リーダーさんが鑑定画面を見たまま固まってしまった。


「……………………セリス、君の名前でこれを公開する気はある?」

「え?えーと、私情報発信はしてないので、サザンクロスにお任せします?私一人じゃ採れないものですし」

「OK。対価は後で相談しよう。じゃあ、即死するかもしれない初見情報を見る気は?」

「単にゲーム的に死ぬだけですよね?」

「もちろん」

「じゃあ、見たいです」

「OK。あ、これあげる」


 フレンド:リーダーからプレゼントが届きました。

 フェニックスの風切羽


 もらえませんが?


「ほんとに即死する可能性があるから、死んだら使って。じゃあ行こう」



 リーダーさんはそう言って、返事も聞かずに歩き出した。


ブックマーク500件!応援ありがとうございます!


※リーダーは色々起こりすぎてちょっとテンパっています。

2周年記念パックにフェニックスの風切羽が同梱されているので、セリス的には本当に貰う理由がないです。

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