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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
六章 トップファイターと今はなきギルド

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幕間 VRニュース 時間加速VRの実現と課題

※時間少し戻りまして、2周年記念発表直後~になります。

 10月28日、XXX大学OOOOヴァーチャルリアリティ研究チームが、VR環境下における主観時間加速についての研究を発表した。


 この研究ではフルダイヴVR環境下で主観時間を加速し、1時間のダイヴに対して1.5時間の行動を可能にしたという。


 研究チームは取材に対し「サイエンスフィクション的な自由な時間加速にはまだまだ課題が多く、実用化に向けて一つずつ問題を解決していかなければならない」と答えた。


 SFの代名詞「フルダイヴVR」が実現して10年。

 さらなる科学の進歩として「時間加速VR」の実装が現実味を帯びてきた。

 世界は一歩ずつサイエンスフィクションに近づいている。


 さて、技術的な時間加速が可能になった場合、その加速時間はどのように扱われるのか。

 VRニュース顧問社労士の秋山先生に話を聞いた。



「VR環境で主観時間の加速が実現した場合、仕事の時間というのはどうなるのでしょうか?」


「現状の法律ですと、雇用の契約に大きく左右されます。

 例えば労働時間に裁量のある個人事業主、あるいは成果報酬型の時間非固定雇用の場合は、勤務時間が大幅に減ることになるでしょう。VR環境下で1.5倍圧縮の時間労働をすれば、実勤務時間5時間で7.5時間分相当の仕事ができますから。

 一方で、時間固定型の労働契約の場合、現状の法律は実時間24時間の中での時間拘束ですから、主観的な勤務時間は延びることになります。8時間の勤務時間の場合は、主観的には12時間の連続勤務ということになります」


「一昔前のブラック企業のような勤務時間ですね……」


「その勤務時間が、倫理を無視すれば完全に法定範囲内のホワイト企業で実現できてしまいますね。

 ただ、やはり労働者の気持ちというのは無視できない問題で、その様な状況になればおそらく離職者が多数出ることになるでしょう。

 法令整備よりも先に大企業などでは勤務時間の短縮が図られるのではないでしょうか。

 もちろん、法令の方でも主観時間での勤務時間上限設定などの整備がなされるでしょう」


「他にはどの様な問題が懸念されますか?」



  次のページ>どうなるリアルアミューズメントパーク


 ① ② ③ >


 =====



 プライベートワークスペースの扉が開く音がして振り返る。

 ワークスペースの鍵を持っている公私両面での大親友が入ってきた。


「よっ」

「ああ、何をしているところだ?」

「VRニュース見てた」

「面白い記事でもあったか?」

「あったよー。とうとう実現、VR思考加速!」

「ほう?」


 読んでいたネットニュースのいくつかを共有すると、ロイがざっと記事を流し見る。

 読んでるのか?って速度なんだけど、これで読んでるんだよなー。不思議。


「主観時間1.5倍に成功だってさー。ロマンだよねー」

「ダイヴVR発表のときも思ったが、ここまで来ると完全にSF小説の世界だな」

「ワクワクするよねー。サイエンスの最先端!ロイは加速世界ゲームきたら移住したい?」

「モノと世間の状況によるな。ワークスペースの主観時間加速は欲しいところだが、ゲームとなるとちょっとな」

「何で?いっぱいゲームできるようになったら嬉しくない?」

「リアルタイム配信ができなくなるかもしれないだろう」

「…………あー」


 あー、なるほど。その発想はなかった。

 動画配信者がいるゲームの時間経過と、リスナーがいる時間の流れが同じじゃないとリアルタイム配信ができないのか。

 リスナーも加速VRに入ってもらうしかないけど、そうするとながら観みたいなことはできなくなる。


 うーん?意外と難しい問題だぞ?


「異世界型MMOが時間加速世界になると、また花嫁問題が出そうな気がするしな…ストーリー型MMOで時間加速サーバーが実装、とかなら裏でやってる素材集めとかが早くなってありがたいが」



 花嫁問題。

 ダイヴVR発表よりも以前の、PCゲームとしてのMMORPGで、NPCに高度AIを積んだ異世界型ゲームが流行った。

 その中でも特に話題だったのがアウタースカイオンライン。住民全てが高度AIを積んでいて、文字通り内部で生活しているというのがウリのゲームだった。

 プレイヤーはゲーム内で一緒に人々と生活し、世界を発展させていく。


 当然のようにどっちに住んでるんだかってくらい超が付く廃人プレイヤーが出たし、ゲーム内のキャラクターと結婚して幸せな家庭を築くプレイヤーも出た。


 そして3年後。


 一部のNPCが発狂した(・・・・)


 結婚までしたプレイヤーが別のゲームに移住し、帰ってこない夫をひたすら待っていたNPCが、夫の友人プレイヤーから「他の土地で別の嫁と暮らしている」と聞いてしまったのだ。


 連鎖的に他の既婚NPCが恐慌状態に陥り、中にはゲーム進行上重要な役割を持っているNPCもいたため、ゲームは緊急メンテナンスで2ヶ月閉鎖され、そのまま再開されることなくサービス終了となった。


 現在の異世界型MMOはNPCと結婚できないものばかりで、結婚できるものもびっくりするほど長い誓約書にサインが必要になるらしい。


 しかしそこまででなくても、小説みたいな4倍加速なんて実現した日には、平日5日間ゲームにログインしなかっただけでNPC的には「仲の良い友達が一ヶ月弱音信不通」みたいになるわけで……



「……"プレイヤー"というものの設定を練らないと、またNPCが発狂しそう……」

「だろ?」


 うぬぬ、意外と難しいぞ。ロマンたっぷりだったのに……。


「うーん、とりあえず考えるのやめ!どうせすぐ実装されるわけじゃないし!」

「まあ、そうだな」

「で、忘れてたけどロイは何しにワークスペース(ここ)に?」

「ああ、例の2周年記念企画のアンケート、集計終わったぞ」

「お、ほんとー?まじ助かるありがと!」


 共有されたファイルを開き、アンケート集計のトップを見て……


「あの、ロイ……」

「何だ?」

「なんか、怒ってたりする……?」

「?なぜ?」

「いやだって、いつもならこういうの(・・・・・)弾いて集計してくれるだろ……?」

「お前が問題ない範囲でなら何でもする(・・・・・)なんて言うからこうなったんだが?」

「いやいっ………たけど」

「今回はつぶやいたーのオープンアンケだから集計の誤魔化しもきかんぞ」

「うえぇぇぇ」

「あと向こうへの打診はお前がやっておけよ」

「うえ”え”え”え”え”」



 やっぱロイ、なんか怒ってない!?!?



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