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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿八章 休暇

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【受賞記念】28-7.通話 side:L

『謎のアンケート』ご協力ありがとうございました!


『戻りました』


 そわそわと待っていたところに届いた一行のメッセージ。


「こっちも戻ったー」

「通話かけていい?」


 本当に今しがた戻ったかのようにさり気なく。20分前から待機していたなんておくびにも出さないようにメッセージを返す。


『大丈夫です』


 返信に合わせて、通話ボタンを押した。


『もしもし』

「もしもしー聞こえてるー?」

『あ、えと、はい。聞こえております』


 間近から彼女の声がする。

 新しいヘッドセットの機能は、とりあえず問題ないようだ。

 デバイスのセットアップをしていたと伝えたら、向こう側から非常に困惑の強い『はい?』が返ってきた。


「いや気付いたんだけどさ」

『はい』

「石垣島普通に電気屋あるし、ガジェット買ってくればよくね?って」

『…………え?なんて、仰ってます?』

「とりあえずグラスディスプレイとヘッドセット買ってきてさ。今セットアップしてたんだよ」

『あの』

「うん」

『お仕事禁止です』

「あーあーあーちょーっと音悪いかー?」


 非常にクリアな音質に対してそう言えば、彼女の少しばかり怒ったような言葉が聞こえる。

 いやー、まあ、ね。この程度で俺を止められると思ってもらってはね、困るからね。

 あっはは、前回の話聞いたのか。無卿とぽこぽこね、はいはいなるほど。それで俺の場所の話もしたのか。

 本当にごくごく数人にしか教えていないけれど……まあ、あの二人ならきっともう察しているんだろう。というかこの電話口の本人以外には完全にバレているという自覚がある。ってかほんとに俺いつからあんな生ぬるい目で見られてたんだろうな……。


『前科一犯で離島に飛ばされたのに、そこでも仕事しちゃったら次回もっと厳重になりませんか?』

「それはそれでどこまで厳重になっていくかちょっと楽しみじゃない?」

『……うーん…………そう、ですねえ……』

『ロイドさんの心労を考えると、良くないかなぁ……とは思います』

「それ企画としてはみたいって意味じゃん」

『まあ、その、はい』


 やっぱ楽しみだよな、分かる。次回は無人島だったりするんだろうか。

 話しながらグラスディスプレイも起動して、動画を簡単に整えていく。あーやっぱディスプレイあると作業断然楽だわ。


『……リーダーさん?』

「お、うん?」

『今、何しているんですか?』

「動画編集」

『リーダーさん?』


 いやほら、ね、旅行終わったらロイドにこの動画を叩きつけねばならんもんでね。

 ちょっと会話がそぞろだったのは良くないか。ごめん切っても……切らないのか?


『どうやったらお休みできますか?』

「どう……えー、難しいけどな。駄弁ってたりすると手は止まりがち?」


 ずっとだべってたりするとどうしても手は止まるよね。


『…………分かりました』

「おう?」

『えーと……んー…………』


 あ、これなんか会話捻り出そうとしてるやつだな。

 セリスあんまり喋りが上手な方ではないと思うんだけど、無理してないかな……。


『んっと、リーダーさんは』

「うん」

『あ、その、旅行って普段行かれるんですか?』

「あー旅行ねー、まあそれなりに行くかな。最近ちょっと忙しくて行ってなかったけど、国内より海外が多いかも」

『海外旅行ですか』

「うん、オーストラリアとかこう、気候ががらっと変わると非日常感あって好き」

『ああなるほど、南半球だと季節逆ですものね』

「そうそう、そういう意味では真冬の沖縄は手軽でいいね」

『今回の旅行はロイドさんのチョイスなんですか?』

「まあ……俺完全ノータッチだから、ロイか、コンシェルジュの担当さんあたりだと思う」

『コンシェルジュ……』

「クレカに付いてるからね。ホテルとか新幹線の予約とか任せられるから便利だよ」

『ふわあ……すごいですねえ』


 まあセリスの年齢だと使わないか。彼女のお父さんならなんなら似たような業務やってんじゃないかな。ホテル業務にもそういうのあるよね多分。


『あの、コーヒーお好きなのは知ってるんですが、普段ブラックで飲むんですか?』

「コーヒー?えっと、うん、そうだねブラックかな。たまにミルク入れたりはするけど」

『苦くないです?』

「それがいいと思ってるけど、セリスは苦いの苦手?」

『うーん……そうですね、コーヒーレベルになるとちょっと苦手です。香りは好きなんですが』

「ロイと同じ感じか。あいつは砂糖超入れるよ」

『コーヒーって砂糖入れてもずっとこう、苦いですよね』

「そうかー?」

『そうですよ』

「まあじゃあそういうことでいいけども。セリスはミルクティー好きって言ってたっけ?家でも紅茶入れるの?」

『あー……家では、お湯を飲んでます』

「白湯?」

『あ、はい、そうです』

「ほー」

『お湯が出るタイプのウォーターサーバーがあるので、それでお湯だけ飲んでいる事が多いです。家族といるときはお茶をいれますけど』

「ああなるほどねぇ」

『……』

「……」

『えっと、あの、』

「うん」

『学生時代に得意だった科目って、ありますか?』

「……くっふ」

『ふえ!?』


 だめだ笑ってしまった。これ100の質問かなんかのリスト見てんな。


「ごめんなんでもない。あー……そうね、あんま勉強に重点置いてなかったからアレなんだけど、地理は得意よりかな」

『それは、もしかして現地に行くからですか?』

「そうそう、あの辺りは通年あったかくてーとか、あの辺はじめっとしてたなーとか、そういう体感の下地があって、そこに地理の用語を乗っける感じだった」

『すごいですね……私どっちかって言うと地理苦手なんですよね……』

「あれ、そうなんだ」

『用語の暗記系がちょっと……歴史とか地理とかの用語を完璧に覚えるのに意味を感じられなくて』

「あ~なるほどね~。俺はそれで点数取れんならやっとけやっとけーって感じだったな」

『点数自体はそれなりに取れているので』

「そういや、期末全教科満点って噂はマジ?」

『満点は嘘ですよ……総合一位だっただけです』

「いや十分すぎるほどすげえわ」


 学年何人かしらんけど、名門校で総合1位って相当だろ。


 * * *



 うーん。


『リーダーさん、は、サークルとか部活って、やってましたか?』


 まんまと長時間通話になってしまって、作業は進んでいない。

 いや、まあ、楽しいんだけど。


「サークルねー、専門学校にも一応あったはあったんだけど、任意だからやってなかったなー」

『ああ、専門でも、そういうのあぅんですね』


 それはそれとしてセリスが超眠そうだ。さっきからところどころ呂律が怪しい。

 時刻は日付を少し超えてしまっている。昨日もこれくらいで寝落ちてたから、いつもこれくらいに寝てるんだろうな。


「サークルに時間取られるくらいなら配信してーって思ってたんだけど、今にして思うとなんかやっときゃ良かったなって思うよ。今更だけどそういう部活動みたいなのの憧れちょっとある」

『ああー……なるほど』

「セリスは?なんかやってるっけ?」

『いえ、やってないです。うちも部活、必須ではないので』

「そうなのか」

『やってみたら、楽しかった、ですかねぇ…』

「大学上がってからやってみたら良いんじゃない?」

『配信をすると、ちょっと難しいかも、って』

「それくらいはサポートさせてよ。大学生活だって楽しんだほうが絶対いい」

『そう……ですかね…』

「もう大分眠そうだな、寝る?」

『ん、リーダーさんは、もう寝ますか?』

「あーうーん、まだ起きてるかも」

『じゃあ、だめれす』


 やばいめっちゃめちゃ可愛いな。


『えっと、ん、リーダーさん、方言だとおもってなくて通じなかった言葉とか、ありますか?』

「方言かぁ…俺あんまりないな。祖父が酔っ払うと話す言葉がわからん時は結構あるけど」


 あ、これまだ続くのね。

 そして方言なぁ。九州のお祖父様が酔うとマジ何言ってんのか分かんないんだよな。


 * * *


「セリス?あー、寝ちゃった?」

『ねっ、て、ない、です』

「いや、もう、寝ていいから、寝な」

『や、れす』

「呂律回ってないじゃん、寝なって」


 もう何度目かになるこのやり取りに、彼女は駄々っ子のように「や」と言う。可愛くて愛おしくて、だけど寝て欲しい。


『ん……リーダーさん』

「はいはい」

『このみのたいぷって、どんなひとですか?』

「…………」

『……あえ?』

「あ、いや、うん、えっと」


 君だよ。

 とも言えず流石に少しばかり眠くなっていた頭をフル回転する。

 えー…………えーと…………


「あ、アクションVRが一緒に出来る人?」

『あぁ、なるほろ……がいけんだったら、なにかありますか?』

「うぇ……えー……なんだろうな……こう……髪のきれいな人、とか」

『ああ、くふ、そっか、ふふふ』


 セリスが何故か楽しそうに笑う。

 あー……えっと、やばい言っちゃった、これ明日覚えてんのかな……えっと……いやナシでって言うのも違うというか、えーと……


『リーダーさんは』

「え、あ、うん」

『ほんとに、ろいどさんがすきですねぇ』







「…………はい?」

『くす、ふふ』

「……………………セリス、ほんとに今日はもう寝な」

『ふぇ』

「俺も流石にもう寝るから」

『ほんとにねますか?』

「寝る寝る。もう1時近いしね」

『なら、よかった、れす。あの、おやすみなさい』

「うん、おやすみ。ちゃんとベッドで寝なね」

『ぁ……はい、だいじょうぶです、おやすみ、なさぃ』


 もう一度小さくおやすみと言って、通話を切った。




 …………

 ……………………



「………………どうしてそうなる?」


 呟いた言葉には、残念ながら返事はなかった。


第6回HJ小説大賞を受賞いたしまして、この度書籍化が決定いたしました!

ここまで続けてこれたのも皆様の応援の賜物です。本当にありがとうございます!

WEB版の連載も続けてまいりますので、これからもよろしくお願いいたします!

一応活動報告的なやつも書いております

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1736227/blogkey/3535711/

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― 新着の感想 ―
アクションVRが一緒にできて、髪のきれいな人=ロイド 確かに!って納得しました。 幼馴染いいなー。って思ってそうw 私も大量に暗記させられるの苦手でした。 大河ドラマとか、地方の番組とか見てその知識…
書籍化おめでとうございます!! 書籍もwebも応援してます!! ボートタウンの例の木がついに見れるのかなと楽しみです♪
書籍化ということは絵がつくということですね。 とても楽しみ。
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