表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿八章 休暇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

366/375

28-10.西生寺の朝

 夫が朝からずっとスマホを片手に電話をかけ続けている。

 本当に、こんな日に何をしているのか。今日はこの後ずっと忙しいと言うのに。


「なにをしていらっしゃるの?」

「理人と連絡がつかない」


 夫――智人さんはイライラとしてそう言った。


「企画で旅行に行っていると、伝えたはずですけれど」

「今日には帰って来ると言っていただろう!」

「ええ。今日の昼の便で帰ってくるそうですから、夕方には戻るのではないですか?」


 智人さんはぎしりと音が鳴るほどスマートフォンを握りしめた。

 先ほど二階に上がった時に着信音が聞こえたので、そもそも家族用のスマートフォンを持っていかなかったのでしょう。


「あなた」

「なんだ」


 ロイ君からこの日程を提案された時に、あえて訂正をしなかった。

 おそらくロイ君は本当に知らなかったんでしょうね。彼は西生寺グループの株を持っていないから。

 そして理人自身も、旅行の早めの切り上げを選択しなかった。一日早く帰るだけなら、そして事情を伝えたなら、ロイ君も流石に頷いたはずだ。そうしないと決めたのは他の誰でもない、理人本人だ。


 これでいい、と言い聞かせる。

 理人はずっと、こういう日を疎かにしてこなかった。義務だと思っていたのか、あるいは惰性だったのかもしれないけれど、記憶の限り中学の頃から一度も欠席していない。


 ――――だから、この人が諦めきれないのでしょうね。


「理人には本来出席の義務はないのよ、わたくし達と違って」

「そんなことは!」


 そんなことは、何だと言うのかしら。「わかっている」かしら。それとも「ない」かしら。

 だけどそれが全てでしょう。

 座る席だって、こちら側に一番近い席を用意しているけれど、明確に線引きされた場所だ。

 今日という日に、そこが初めて空席になる。


「今日はあれの将来に関わるんだぞ!」

「もう理人に期待するのはおやめなさい」

「知ったような口をきくな」


 あなたよりは、よほど知っているつもりですけれど。

 理人にはこの家は合わなかった、それだけなのよ。

 そもそも理人とあなたが反対したところで、その程度の票数では覆らないわ。理人は反対もしないでしょうしね。

 あなたの子はこの家を選ばなかった。義弟の子はこの家を選んだ。それが全てなのよ。

 それこそ必要なら彼と養子縁組してこちらの家に入れたっていい。彼なら、必要であればそれを受け入れるでしょう。


 きちんと縁者が後に続きたいと言っているのに、これ以上の何が必要と言うのかしら。本当に、そこだけは理解できない。


「あなたが遅刻したら話が進みませんよ。先程も申し上げましたけど、わたくしたちは出席の義務があるのですからね」


 用意していた鞄を持ち上げれば、智人さんは忌々しそうに、しばらく立ちすくんでいた。





2063年1月19日

西生寺グループホールディングス 臨時株主総会


療養に伴う取締役の解任

・涌井 充

    ‥‥‥‥‥‥可決


新規取締役の任命

・西生寺 明成

    ‥‥‥‥‥‥可決

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なぜそこまでリーダーに固執するかね? 感想陰謀論だけど普通に偶然だと思うけどね 1.ロイドは株を持ってない  当然株主じゃないので株主総会の連絡なんてない 2.臨時開催で定時じゃない  開催時期じゃ…
これロイドに吹き込んだ人がいますね。じゃあないと余りにもタイミングが良すぎる。
西生寺の夜明けぜよ!? それにしても自分都合の鬼電ってだいぶ子供っぽいという印象が⋯⋯
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ