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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿八章 休暇

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28-7.通話

 今日は夕飯時間にログアウトして、そのままお開きの流れだ。

 本当は夕飯後にもやろうかと思っていたのだけれど、ちょっとログインできる時間がわからないのでシアさんは巻き込めない。

 なぜログインできる時間がわからないのかというと。


「一日二回謝罪を送らないといけないなんて……」


 深呼吸、深呼吸。ああもう、本当に……。


「すみません、沖縄に行っていらっしゃることって、もしかして秘密でしたでしょうか……」

「無卿さんとぽこぽこさんに話してしまいました……」


 送ったメッセージにすぐに既読がついた。

 そしてリーダーさんが入力中の表示になる。


『ギルド内ならべつにいいよー。聞いてきたやつ何人かには返事してるし』

『一応プライベートだからSNSで言うのはやめてもらえると助かるー』


 はあああああと息を吐いた。

 良かった。本当に良かった……。こういううっかり本当に気をつけないとだめですね。今後は特に。


「良かったです……」

『ってか雑談の流れで社外秘話しちゃってたら俺のがまずいww』


 …………言われてみれば、それもそうですね。


「それもそう、ですね?」

『うっかりしたときは平謝りしながら忘れてくださいというので、そのときは忘れてください』

「承知しました」


 よかった。本当に、よかった。こう、じわじわと「言っちゃだめだったんじゃないか?」という気持ちがせり上がってきていて、結構気が気でなかった……。

 夜に無卿さんやぽこぽこさんに連絡したりロイドさんに土下座したりする必要はなくなった。本当に良かった。

 だけどもうゲームという気持ちではなくなってしまったので、今日は夕飯を食べたら本でも読もう。


 夕飯はちゃんと味のわかる食事ができた。




『今日シュノーケリングで撮ってもらった』

「わあ!お魚近いですね!」

『丁度カメラマンさんが暇だったらしくて、お願いして撮ってもらった』


 送られてきた写真にはリーダーさんとともに、すぐ近くをカラフルな魚が泳いでいた。少し見上げる構図の写真は奥に水面がきらめいてとてもきれいだ。


「プロの写真って感じですね」

『ホントにー』

『セリスって今何してるやつ?』

「今ですか?」

「夕食食べ終わって、休憩中です」

『夜はEFOとか入る?』

「いえ、今日は休もうと思ってます。どうかしましたか?」

『特に予定なかったら通話でもどうかと思って』


 しばらく固まる。

 えっと……え、えっと…………。


「お風呂とか終わった後でも良ければ、是非」


 えっと、えっと、えっと、えっと、えっと。え?通話?なんで?どうして?

 わからない、けれど、断るような用事はないし、あの、えっと……。


『何時くらいになる?』

「えっと、21時頃かと……」

『りょーかい、俺も風呂はいってくるー』

『また後で』

「あ、はい。また後ほど」


 ……………………とりあえず、お風呂入ってこよう。






「戻りました」

『こっちも戻ったー』

『通話かけていい?』

「大丈夫です」


 rrrrr


 めったに鳴らない着信にそっと手を触れる。


「もしもし」

『もしもしー聞こえてるー?』


 耳元でリーダーさんの声がした。すぐ近くで声がするの、なんかこう、そわそわする。

 そういえば電話って、前に待ち合わせで一瞬したの以来かもしれない。


「あ、えと、はい。聞こえております」

『お、とりあえず通話はOKだな』

「えっと?何されてるんですか?」

『んー、デバイスのセットアップー』


 …………はい?


「はい?」

『いや気付いたんだけどさ』

「はい」

『石垣島普通に電気屋あるし、ガジェット買ってくればよくね?って』

「…………え?なんて、仰ってます?」

『とりあえずグラスディスプレイとヘッドセット買ってきてさ。今セットアップしてたんだよ』

「あの」

『うん』

「お仕事禁止です」

『あーあーあーちょーっと音悪いかー?』

「リーダーさん?」

『まあまあ、いやガチで仕事する気はなくてさ。ちょっとメール確認するのとか動画チェックするのにやっぱディスプレイとイヤホン系欲しくて』

「それを仕事と言うんです!」

『はっはっは、ロイには内緒な』

「絶対バレますよ」

『旅行中バレなきゃそれでいいよー。マイク認識確認に通話したかったんだけど流石にロイに通話かけるわけにいかなくてさー。助かったわ』

「何をやってるんですか、本当に……」

『強いて言うなら……悪巧み?』

「悪巧みって…」

『悪巧みっていうか、悪巧み返し?この程度で俺を止められると思うなよ!みたいな』

「前回の強制休養は旅行先から車で抜け出したって聞きましたけど」

『くっはは、あったあった!誰から聞いた?』

「無卿さんとぽこぽこさんです」

『あーはいはい。いやーあれはね、ちょっとタイミング悪くて。ロイドへのドッキリの準備中だったんだよ』

「ロイドさんにですか?」

『そー。ちょっと扱いの難しい荷物が届く直前で俺の強制旅行を向こうも企画しちゃって、俺の方はモノを入手してからドリアンに共有しようとしてたからドリアンも知らなくてさ。それでどーーーーしても朝には家に居ないといけなくて。長崎で車レンタルして、関門橋越えて即日とんぼ返りだよ』

「わぁ……」

『俺もさあ、別に休暇が嫌だったわけではないんだ……どうしようもなかったんだアレは……』

「それは、事故ですね……」

『不幸な事故だったんだよー。せっかく取ってもらった旅館全然堪能できんかった。あの時の俺はどっちかって言うと休んでいいなら普通に休みたかった』

「まあアレですね、ドリアンさんへの共有は大切ですね」

『ほんっとに。一日ズレてたら普通に休めてた』

「前科一犯で離島に飛ばされたのに、そこでも仕事しちゃったら次回もっと厳重になりませんか?」

『それはそれでどこまで厳重になっていくかちょっと楽しみじゃない?』

「……うーん…………そう、ですねえ……」


 確か本当に店も何も無い孤島ホテルとかありますよね。ニュースで見た気がします。そういうところに連行されるリーダーさんが見たいか見たくないかで言ったら少し見たいんですけども……。


「ロイドさんの心労を考えると、良くないかなぁ……とは思います」

『それ企画としてはみたいって意味じゃん』

「まあ、その、はい」


 クスクスと笑うリーダーさんの声がする。


『ギルドの方は変わったことない?』

「えっと、はい。特には」

『そりゃ良かった』


 声の向こう側から、なぜかカチカチというマウスのような音や、トントンと何かをタップするような音がする。


「……リーダーさん?」

『お、うん?』

「今、何しているんですか?」

『動画編集』

「リーダーさん?」

『まーまだ簡単に前後切ったりくっつけたりしてるだけ。このスマホだと素材とかもあんまり入ってないしね』

「そういう話をしてるんじゃないんですが」

『あ、ごめん完全に作業通話みたいな気持ちだった。忙しかったりする?通話切ったほうがよければそれで』

「仕事をしちゃだめですって話をしてるんです!」

『気にしない気にしない。セリスもなんか作業とか、してていいよ』

「えっと、電話中にそれはどうなんですか?」

『あれ、作業通話とかしたことない?』

「ないです。何をするんですか?」

『通話つなげて、たまに喋りながらお互いバラバラになんか作業してる通話のことー』

「あの、まず作業をやめましょう。作業禁止旅行です」

『いーじゃんいーじゃん。この編集は趣味みたいなもんだよ』

「リーダーさんワーホリって言われることないですか?」

『はっはっはー』


 あるんですね。


「リーダーさんってマグロか何かなんですか?」

『マグロ?ああ、泳いでないと死んじゃう的な?』

「はい」

『どーだろ。時期の問題かなぁ。作業してたほうが楽しい時期はあるよ。反動でもうずーっとだらっとゲームしてる時期もある』

「今は作業してたい時期なんですか?」

『まあ、だいたいそんな感じ』

「どうやったらお休みできますか?」

『どう……えー、難しいけどな。駄弁ってたりすると手は止まりがち?』

「…………分かりました」


 だらだらお喋りですね。分かりました、頑張ります。


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― 新着の感想 ―
とりあえずあとで報告すっね というか隠す気がないな
ロイド、これはもうセリスも巻き込むしかない、ロケと言い張って周囲1キロ圏にコンビニがあるかないか位の所にある旅館とかにセリスと一緒に放置するしかない、セリスならリーダーも無下には出来ないから大人しくし…
リーダーがちゃんと恋愛してる!? と思ったら、違うのか! セリスのドキドキを返せ! リーダーはデスゲーム連行の刑にでもなれば良いのに… ※クリア不可、ログアウト不可ぐらいで閉じ込めよう!
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