28-6.返事が来るのは
やらかしました…………。
現在朝7時半。
メッセージ画面にはサザンクロス公式スタンプのおやすみが送られてきていた。
最後にリーダーさんがメッセージを送ってからお休みのスタンプが来るまでに一時間間がある。これ、もし返事を待たせていたとしたらどうしよう……。
一度スマホを伏せて深呼吸。何も送らないという選択肢はない。誠意謝ろう……。
メッセージを送って、数分既読がつかないことを確認して、それから朝食を摂りに部屋を出た。
リーダーさん、しっかり寝れてるといいな。あと1時間は寝ていて欲しい。
と思っていたのだけど、朝ご飯から戻ってきたら返事が来ていた。
『(おやすみのスタンプ)』
「おはようございます。昨日は寝落ちました、申し訳ありません。」
『おはよう。遅い時間だったし仕方ないよ』
「本当に、すみません……寝そうだって送ろうと思って途中まで入力していたのに送れませんでした……」
『そういう時って半端に送られちゃう時ない?』
「私は普段思念操作入力を使ってないので、そういうのはないですねぇ」
『あ、使ってないんだ?』
「なんか、普段から考え事があっちに行ったりこっちに行ったりして、文字入力が安定しないんですよね。EFOでも仮想キーボードを使っています」
『あー……そう言えばキーボード出してるとこ見たことあるな』
「ロイドさんとか文字入力綺麗ですごいなーと思ってます」
『ロイは文字の入力をする時は他のウィンドウ全部非表示にしてるって聞いたことあるな』
「なるほど……。あ、すみませんそろそろ学校行きます」
『今日登校日だっけ?行ってらっしゃい』
「そうなんです、行ってきます」
「リーダーさんも、二日目、三日目ですか?楽しんでください」
『おうさー、今日はシュノーケリング、いってきまーす』
なんだかんだ、楽しんでいらっしゃるみたいだ。良かった。
・・・
登校日という名前の授業の復習プリントを解く日を終えてEFOにログインする。
シアさんは普通に授業のため少し時間が空く。今のうちに消耗品の準備を終わらせて数が減ってるやつは補充して、ついでに武器の修繕をしようと鍛冶部屋に入ったら、無卿さんとぽこぽこさんが作業をされていた。
「おじゃまします」
「おーセリスちゃんだ」
「修繕?やっとこっか?」
「いえ、今丁度暇なので自分でやります。そちらはなにかされてましたか?」
「いや作業は丁度終わって、だべってたとこ」
「リーダーどこ行ってんのかねー?って話してた」
なるほどです。修繕素材を取り出しつつ会話に混ざる。
「沖縄らしいですよ」
「お、セリスちゃん聞いてるんだ?」
「リアルのメッセージでお返事いただきまして、石垣島に飛ばされたっておっしゃってました」
「……へえ」
「へえ?」
無卿さんとぽこぽこさんが二人揃って少し不思議な声を上げる。……あ、あれ?
「えっあ、すみません、こういうのって言っちゃだめなんですかね!?」
「あーいや、まあ多分ギルド内なら大丈夫よ。離島に飛ばされたのはだいぶ厳重だなと思ってただけ〜」
「あ、ああ、そ、そうなんですね」
「リーダーなら地続きの場所だったらワンチャン車で突破してくるっしょ」
「それな。飛行機だとクレカの動きでわかるから、空港で鹵獲できるね」
「鹵獲……」
「鹵獲鹵獲。リーダー強制休養を車で強行突破して仕事に繰り出すの前科一犯のはず」
「え、ええ……」
そもそも強制休養企画が初めてじゃないんですねってことに驚きだし、前回の強制休養で抜け出して仕事してるってことにも驚きだし、これはどこから突っ込めばいいんですか……?
あ、えーと、修繕修繕。武器耐久を確認して……よし、大丈夫かな。
「飛行機乗りついだらそれだけで六時間は見ないとだし、空の旅は全然時間通りにいかないからね。離島に飛ばされたら他の予定は立てらんないっしょ」
「羽田まで直行便ってないんだっけ?」
「前に調べた時は早朝ならあったけど、どーなんだろ?」
「あー、リーダー早朝はむりだかんな」
「ってか直行便で帰ってきたらそれこそ羽田?関空?で出待ちされて長時間説教コースっしょ」
「それはそう」
お二人がけらけらと笑う。
うん、出待ちされて空港内でも構わず説教とかになりそうです。
「石垣島は行ったことねーなー」
「お、無卿はないんだ。今度行く?」
「行ってもいいねえ。ジュリ連れて」
「死ね」
「なんでだよ……」
ジュリさんというのは無卿さんの奥さんですかね?このお二人割といつも一緒にいらっしゃるけれど、EFO前から一緒なんでしょうか。
「……セリスちゃんどった?わかんないとことかある?」
「え!?あ、いえ、修繕は終わりました。仲がいいな、と思っておりました」
「今どこに仲いい要素あった?」
「え?仲良かったですよ?お二人はどこで知り合ったんですか?」
「大学」
「あ、大学一緒だったんですね」
「いや、大学は別で。えーと、俺が入ってた軽音部の先輩と、ぽこが付き合ってた」
「音楽なーんもわからんけど飲み会のときはいつも迎えに行ってたから、そこで知り合った〜」
「へえ……」
「一回先輩が完全に潰れて迎え役のぽこと連絡つかなくなっちゃて、それで一応男同士でも連絡先持っとこうってことでID交換したら、アイコンがふたりとも同じゲームのキャラだったんよ」
「流れでゲームIDも交換して、彼女とは別れたけど無卿とは未だに遊んでる…………なんでこうなったんだろう…………」
「なんでも何も、お前がさっさと結婚しないからだろ」
「新卒すぐは無理だって何回もいってんだろおおおおおおおお!!!!」
「しときゃよかったじゃん。向こうも仕事辞める気ないなら帰る家が一緒になるだけだって」
「俺は!そこまで!!割り切れないの!!!!」
「割り切れなかったのはお前なんだからいい加減俺に突っかかるのをやめろ〜」
「それはそれ!」
……うん、仲がよくて何よりです。
っと、シアさんから連絡来ましたね。
「すみません、待ち合わせなので行ってきます」
「お、アネシアさんかな?いてらー」
「行ってきます」
部屋を抜けてタウンに転移する。さて、あと3レベル。頑張って上げなくちゃ。
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セリスが鍛冶部屋から出ていくのを見送って、ぽこと二人顔を見合わせる。
「俺んとこ、返信きてない」
「奇遇だね、俺のところも来てない」
OKOK。俺だけ無視されたってわけではなさそう。
「あの二人って付き合ってる?」
「付き合ってたらセリスはリーダーの位置情報言わないと思う」
「あ~……」
自分が特別扱いされてると思ってないから、「自分に来た返信はみんなもらってる」って思ってたんでしょ。
「さっさとくっつけクソ砂糖どもがよ」
ぽこがべしゃりと作業台に突っ伏した。
「グライドたちの時も言ってたなそれ」
「言うだろ。なんなんリーダー。自覚はしてんだろさっさとくっつけよ」
「くっついたらくっついたで爆弾投げるくせに」
「それはそれ」
ぽこはそう言って、ふてくされた顔をした。




