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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿八章 休暇

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28-5.メッセージ

「ゆっくり休んでくださいね」

『(柴犬のヒマスタンプ)』


 メッセージが届いていたのは五時間前。時間的には多分夕飯食べていた頃だ。

 あー、スマホ見ないでゲームに潜ったから……。時間的にもしかしたらもう寝ているかもしれないけど、一応お返事しておこう。


「こんばんは。お暇なんですか?」

『そりゃー、なーんも持たせてもらえなかったからねえ』


 返信が早い……何か別のことでスマホを見てたのかな。この期に及んでお仕事とかしてないといいんだけど。


「なんも、とは…?」

『仕事用のPCとかスマホ拡張するディスプレイとか…』

「お仕事休めって言われてるのになに仕事PC持ち込もうとしてるんですか?」

『いや、休めはロイドの主張であって、俺の主張ではなくてですね?』

「ロイドさんの前でもう一回それ言えますか?」

『いえ、まあ、その』

「だいたい、ロイドさんが強硬手段に出るって、どれだけお仕事されてたんですか?最後に全休取ったのっていつですか?」

『ん、んー……』

『黙秘権を行使します』

「少なくとも配信や動画投稿のない日、週に1日くらいしかないですよね?その日はちゃんと休んでたんですか?」

『あーあーきこえなーい』

「リーダーさん?」


 メッセージが入力状態で固まってしまった。

 ちょっとうるさく言い過ぎたかな。でもちゃんと休んではもらいたいし……。

 メッセージ画面を見ながら何か言うべきか悩んでいたら、花の写真が送られてきた。

 これは、色が濃いけれど、桜かな?


『桜咲いてた。すごいね沖縄』

「沖縄にいらっしゃるんですか?じゃあこれ寒緋桜ですか?」

『石垣島に飛ばされました。そうそうカンヒザクラ。先週咲き始めたってガイドさんが言ってた』

「本当に1月に咲くんですねぇ」

『ふつーに外気温20度とかあるし、桜も咲くかー。セリスは沖縄行ったことある?』

「いえ、ないです。西は福岡までしか行ったことがないですね」

『今度行く?』


 えっと……え、これはどういう意味……え?


『ロケとか、旅行企画とか』

「ああ、なるほど。機会があったら行ってみたいです」


 あ、ああ、配信の話ですか。びっくりした。一瞬で心臓がバクバクする。

 心臓に悪いですよリーダーさん……。


『すぐは無理だけど、乗り気ならそのうちなんか企画しよっか』

「ありがとうございます。でも今はお仕事禁止です」

『(猫が口笛を吹くスタンプ)』

「(鳥が猫をつつくスタンプ)」


 また画像が送られてきた。これは……月?夜空?


『星空撮ってた。見えるかな?』

「見えます。きれいですね」

『冬にだけちらっと南十字座が見えるはずと思ったんだけど、1月は撮れるの明け方らしくて諦めたw』

「へえ、沖縄って南天側の星座見えるんですね」

『南の海上にちらっと程度だけど、天気良ければ見れるって。撮影カメラ没収されたから、スマホだとやっぱちょい撮りにくい。星を撮るには今日は月が明るすぎたね』


 ……月が綺麗ですねと入力しようとして手を止める。なんかこう、だめな気がする。月が綺麗であるということを伝えたいのですけれども……。


「昨日満月でしたもんね。でも月も綺麗に撮れていていいと思います」

「撮影カメラ持ち込もうとしたんですか……?」

『ハンディカムだけね、取り上げられたけど。ドッキリ旅行の様子を撮影しない選択肢はなくない?』

「それだけは一理ある気がしてきました」

『セリスもすっかりこっちの思考になったなw』

「まあ、多少は……」

『ww』

「今お外なんですか?」


 ベッドにごろりと寝転んでメッセージ画面を眺める。

 それなりに長時間レベリングしていたので結構眠い。でもお話しできるならしていたい。


『星空観賞のアクティビティ行ってきて、さっき戻ってきたところ』

「なるほどです。ホテルいかがですか?」

『わりといいとこ取ってくれたみたいで快適だよー。オフシーズンで人も少ないし』

「ならよかったです。休暇楽しんでくださいね」

『友達いない旅行ってなにすりゃいいのか全然分からん』

「あー……」

「なに、するんでしょうね?私も旅行は修学旅行か、家族としか行ったことがないので……」

『まぁ高校生なら普通そうよね』

「でもリーダーさんに必要なのは『何もしない』をすることだと思いますよ」

『ドリアンと同じこと言うのやめてwww』

「皆さん思っているので仕方ないです」


 入力途中でふつりと一瞬意識が抜けた。あ、だめだ、寝そう……。寝ちゃいそうだって、ことだけ、つたえな、ぃ、と…………







 □■□■□■□■□■□


『皆さん思っているので仕方ないです』

「え、そんなにみんなに思われてる?」



 セリスからの返信が切れた。

 時刻は零時を少し超えてしまったし、これは多分寝落ちたな。

 おやすみのスタンプを送ろうとして、今スマホが鳴ったら起こしてしまうだろうかと逡巡する。

 少し時間を置いて、俺が寝る直前に送るか。


 そう思って一度起き上がって部屋を眺める。

 着替えとか使ったタオルとかを見えないように隠し、ベッドを整えて。


 そしてスマホのカメラを回した。

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― 新着の感想 ―
>そしてスマホのカメラを回した。 寝ろw
月が綺麗ですねは(戦前くらいの)日本人はシャイだから月が綺麗な夜空の下でI love youなんて言わないよ、なんとか会話できないかテンパった挙句出てくるのが月が綺麗ですねってスカポンタンって当時の世…
お互い間違いなく知識的にも心情的にも「月が綺麗ですね」を成立させれるからこその停止www
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