閑話 友の会の友人たち
夜梟(RTA友の会)視点
「迷路走破を考えるとやっぱ敏捷振りたいじゃん?」
「クイックダッシュ入れればそんなにいらんのじゃない?どうせ壁は登っちゃうし」
「いやー結構いるっしょ。最低でもアサシンに追いつけなきゃ」
「アサシン来るかー?12月予選はゼロだけど」
「セリスさんがシードだよ」
「あー……じゃあ敏捷の仮想敵はセリスさんとして、でもあの人普段マニの祝福オフだよね?」
「あの感じは多分オフ。ただ壁は走ってくるよ」
「彼女の壁走りはショートダッシュ込だっけ?」
「SD壁走りだね。少なくとも10月は素では走ってなかった」
「三角飛びしてくるかなあ。そこあるなしで必要なジャンプ量変わるんだけど」
「するって思ったほうがよさげ。三角飛びは壁走りより簡単だし」
「これ竜人の短水晶持ってサブにスローインダガー入れたらどんくらい火力出る?」
「アクセでファストシュート入れたほうが射程もいいし使い勝手よくね?武器チェンイヤリングでどうせアクセ埋まるし」
「そっかー……」
「ヨルさんに武器チェンをしてもらうという案はどうだろうか」
「死ぬよ?」
「wwwwwww」
「通路型マップだったら地の利があるけどなー。小部屋タイプどうするよ」
「それより攻撃力こんなにいる?PvPは基本相殺だし今回はルール的にガードキャラいないでしょ」
「トラキチ」
「とーらーきーちー!」
「いやもうそこはお祈りで良くない?あたったら負けでしょ」
「トラさんは負けないからヨルが負けなかったらいつか当たるんだよ」
「百理ある」
「振り直しOKだし、やっぱツイン構成だろ。対セリス敏捷型と対トラキチ攻撃型で二枚持っとくのが丸いって」
ログインしてギルドに入ったら、談話室は非常に姦しいことになっていた。
え、なにこれ何してんの?いや何してるのかは分かるんだけど本当になにしてくれてやがんの?
「おはよ?」
「お!」
「来ました主人公!」
「ヨルさーん!俺も連れてって!」
「よくも俺を足蹴にしてくれやがったな予選通過おめでとう!」
「なあそれ祝ってる?」
「「「「祝ってる祝ってる」」」」
左様か。で、目の前のこのスキル表はなんぞ。
「嫌な予感しかしないけどこれ何?」
「本戦のスキル振りを考えてた」
「なんで?」
なんで俺のいないところで考察してたのかちゃんと教えてもらっていい?振り方の意図がわからないと死ぬスキルとかあるんだけど?おうこら目そらしてんとちゃうぞこっち見ろや。
「盛り上がっちゃって……」
「せめて俺が来てから話せよ。で、なんでこんなに敏捷振ってんの?」
「セリスちゃんに追いつくため!」
「こんなにいらんよ。それよりアンチクリティカルがいる」
「ほう?」
「セリスさんは本番、クリティカルアサシンでくる。賭けてもいい」
「なんで?」
「サザンクロスは空気が読めるから。今回の大会はEFO初心者やVRMMO未経験者にもわかりやすいことが求められてるから、わかりやすくぶつかってくるでしょ」
そこがあのギルドの美徳で、弱点だ。彼らは「求められている動き」を完全にこなしてくる。
なにかしらドッキリを仕掛けてくることはもちろんあり得るけれど、毒から麻痺に持ち替える、なんていうMMORPG初心者にわかりにくい戦法は、おそらく今回は使ってこない。しっかりクリティカルに振ろうとすると、敏捷は細剣士あたりを仮想敵にしてギリギリまで落としてくることまで考えられる。
「さすがPvPRTAの申し子」
「何だよPvPRTAって……」
「ランダムマップコロシアム最速の男」
「RMコロシアムなんてマップ構造50パターンしかないんだからみんな走りきれんだろ」
「いやーちょっと厳しいっす」
「壁の上がり方全部暗記しろ。50ならいけるいける」
「その50パターン、回転するんすけど」
「人間の初期位置が固定だから実際には自由回転じゃなくて10パターン回転くらいだよ。だからMAX500パターン。RTA勢自称するならやれ」
「くっ、痛いところを……」
「俺がやってんのはボス討伐RTAなんですぅ。マップ覚える必要はないんですぅ」
「じゃあさっさとファイター作れ」
「作ってるよちくしょうがよおおおおおおおおおおおおおお」
何かしらみんなが書き散らしているチャートやスキル案を眺める。
あー。トラキチね。うんうん、勝っていけばいつか当たるからな。
「トラキチはムリだよ」
「言うなよー!」
「俺等もちょっと思ったけど本人が言うな~!」
いや実際ムリなんだって。俺の強さは「他人が把握しきれていないマップ構造を完全に把握している」というところにある。VR過剰適応者が音でマップや俺の位置を把握してきたら勝てねえって。むちゃを言うな。
「あと武器チェンジはまじで不可能だから。人類にできないことを書くな」
「一応練習してみない?」
「してみない。」
俺のプレイスタイルは視界重視なんだから無理だよ。無理無理。
「この防具案の斬鬼シリーズを書いたのは誰?」
「俺!」
「馬鹿なの?」
防御下がる装備なんだけど?
「いやいやこれ着ると理論ステータスがこうでスキル火力がこれくらいになるから、ほらSPがこんだけ浮いてここまでスキル取れんだよ!」
「全避け前提にすんなよまだ上忍装備のがマシだろそれ!」
「実際どおー?完全無敵戦法」
「今回はクールタイムリセットがないから後半がキツめ。八割って命預けていい確率じゃないし」
「ヨルならいけるいける。いけて。」
「俺は運をトライ数でカバーしてきたプレイヤーなんだよ。一発勝負の大会じゃ無理やって」
そうこう話している間にもどんどん目の前の書き散らしが増えていく。
本当にこいつらは。
「俺より楽しみにしてんじゃねーかよ」
ボソッと言った言葉に、全員が非常にいい笑顔で親指を上げた。
リアル多忙でまたしばらく空きますが、ぽつぽつ更新する予定なのでよろしくお願いします。




