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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿六章 Tranquility

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26-2.社長モード OFF

ロイド視点

 

「はああああああ、ごめんちょっと気抜かせて……」


 社長モードの終わった親友(りひと)がそう言ってずべりとすべってソファに倒れ込んだ。


「まじめに話すのキツイ……」

「ほんま社長してる時はちゃんと社長やねんな」

「本当に別人ですよね」

「ねえそれ実は貶してるでしょ……」


 理人はジト目で2人を見やった。

 まあ実際、ゲームで無茶苦茶をしている時のリーダーと、商談をしている時の西生寺理人は全くの別人に見える。はっきりと目つきが違う。

 配信のリーダーに依頼するつもりで気楽に連絡してきたクライアントが、社長の理人の雰囲気に飲まれて後から怖かったと言ってきたことは一度や二度ではない。

 社長の西生寺理人はそれはそれで女性人気があるんだけどな。言っても困るだけだろうけれど。


「……まあよかった。とりあえず一期生の目処は立ったな」

「そうだな」


 形式として、あとは教育として持ち帰って貰ったけれど、どの弁護士に見せても特に問題なく通ると思っている。


「で?」


 ソファで溶けたリーダーの頭を、びっくり箱が小突いた。


「でってなに……ああ、ドリアン、人数分のコンプラ講習とボイスレッスン、一旦2月に空きがあるか確認しといて」

「承知しました」

「セリスとグライド、一応カフェもかな。ウォーキングレッスンも空きがあるか確認頼む。予定自体おさえられそうならおさえちゃって」

「ああ…そうですね、やっておきます」

「FlagRoomの社員アカウント発行して……ロイ、ルーム増やしといてもらっていい?細かい会議室と作業エリアがいくつか欲しい。3月からニンカ用に介助アドオンも入れる。見積もり取って」

「承知した、やっておく」

「初期イラストとグッズを一旦くぐりママに発注する。びっくり箱、日程調整お願い。メールじゃなくてルームの方ですり合わせしたい」

「猫下くぐり先生やな。了解」

「ねころに頼んだ新規ウェブサイトの雛形ってどうなってる?」

「プロトタイプが昨日上がりました、この後確認してください」

「あいよ」


 疲れた休憩と言いながらぽんぽんとやるべきことが出てくるのだから、本当によくよく彼は社長だ。


「で、聞きたいのはそんなとこやねーんやけど?」


 びっくり箱は再度ぐりぐりとリーダーの頭に拳を埋め込んだ。


「痛い、痛いってそれ……いや、え?他になんかある?」

「――――いつ告白するんや?」

「……」

「「「…………」」」


 まっすぐストレートに突っ込んだびっくり箱に、リーダーはぐるりと目を泳がせた。


「………………………あ、あのね」

「おう」

「現実が早すぎて全然ついていけないんだけど……これどうすればいいの……?」


 おるさんがいたらまたテーブルをばんばん叩きそうだな、と、リーダーの頭をひっぱたくびっくり箱を見ながらぼんやり思った。




「待って待って待って、いやマジでさ!話が早すぎてどうすりゃいいのか全然わかんねえよ!こっちの心の準備が全然できてないのになんかすごい勢いで話だけ進んでんだよ!痛いって!いひゃいびっひゅりはほ!」

「さっさと告ってこい言うとんのやドアホが~!なんのためにこないええ面しとんのや!?ああ!?」

「生まれつきの顔に理由もクソもねえだろが!!!」


 ……まあ、とりあえずじゃれ始めたのでこちらはこちらで仕事をしよう。

 えーと、VRルームの拡張とアドオンの見積もりだな。アカウント発行は……すぐにできそうか。じゃあ契約終結をしてからの方がいいな。


 やいのやいのと言い合いをしている二人からドリアンも離れてきた。


「びっくり箱は、随分気にかけているんだな」

「あー……先輩、最近彼女にフラれたところなので、あれは八つ当たりです」

「…………そうか」


 かなり優良物件だと思っているのだけど、振られたのか。

 休みはきちんと入れているが、引っ越してきてもらったからな……。そのあたりが問題だったら少々申し訳ない。


「ど~り~あ~ん~?」

「やばっ」


 聞こえていたらしいびっくり箱が今度はドリアンの頭を掴んだ。


「なんや?今日も付き合ってくれるんか?あ゙あ゙?」

「この間散々飲んだじゃないですか~!」

「この後部屋行くから覚悟しとけよ!?」

「勘弁してくださいよ私明日打ち合わせなんですよ!ぽこぽこでも誘ってください!きっと話が合いますよ!!」

「おうおう、じゃーぽこも呼んだろやないか。三人やな?店取るか?あ゙?」


 …………うん、仲が良さそうで何よりだ。


「ろーいー……」

「何だ?」

「まじでどうすりゃいいのこれ……」

「デートにでも誘ってみたらいいんじゃないか?」

「ムリ……普通に忙しすぎて全然空かない……そもそも空いててもどうやって誘うのなんて言えばいいのこれ助けて……」

「あー……」


 しばらく土日は全てEFOの公式配信に吸われるからな。そう思いつつ共有カレンダーを開く。……ああ、なるほど。全休の日が本当に一日もない。この日は休みだったはずと思った場所に何故か打ち合わせ予定が入っている。

 ……休みは意図的に入れろと言っているのに。


「別に、EFOでどこかに誘ってもいいんじゃないか?」

「ゲームの中でそういうの、なんか、ちがくない……?」

「あまり詳しくはないが……同じゲームで遊ぼうと誘われてから告白される事は多いし、そういうものなんじゃないのか?」

「それはロイドがゲーム以外の誘いを受けないからですよー」


 びっくり箱から逃げ回っているドリアンが、少し遠くから突っ込んだ。なるほど、言われてみれば食事や外出の誘いは基本的に受けないな。面倒だから……。


「やばい、誰もあてにならない……」

「しれっと私を抜いたことにはなにか悪意があったりしますか?」

「ドリアンは夢小説みたいなことばっか言うだろ!?」

「言いますよ!リーダーに夢小説みたいなことやってほしいですけど!?」

「それ絶対引かれるだけだろ!?」

「やってみなきゃわかんないじゃないですか!」

「やらんって!無理だって!」

「なんなら私が台本書きましょうか!?」

「絶対読まねえ!ボイスドラマ撮ろうつってBL台本持ってきたこと俺は忘れてねえからな!!!」


 ……あったな、そんなこと。

 結局なにも決まらないまま、理人は逃げるようにログアウトして行き――――しばらくしてからサイトサンプルをチェックするんだったと言いながら戻ってきた。


※猫下くぐり

リーダー・ロイドのVアバターを作成したイラストレーター。

V配信の界隈ではアバター絵師を「ママ」と呼ぶ文化がある。


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― 新着の感想 ―
>現実が早すぎて オメーがおせーんだよ!!w
ログアウト? ミーティングルームに痛み判定あるんだと驚いた。
ドリアンに深く同意、私もリーダーには今までのことを盛り返すがごとく、色々夢小説なことセリスちゃんと繰り広げて欲しい そして私は壁になって見ていたい。
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