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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
■廿四章 三周年の告知

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24-6.非公式大会を終えて

セリス→ぽんすけ

 

「おつかれさーん」

「戻った」

「こんばんは」


 配信を終了して、ギルドの談話室に移動した。

 談話室にはぱらぱらと人がいて、数人が配信アーカイブを開いている。


 そろそろ夕食を食べないといけない時間ではあるのだけど、まあ皆さんに挨拶はしておきたい。皆さんの感想も聞いておきたいし。


「セリスちゃんロイドお疲れ様~」

「俺は!?」

「リーダーは疲れてねえだろw」

「解説だって結構疲れんだよーなんなら戦闘してるより疲れるときもあるんだかんな!」

「セルフ大会の解説なんて楽しいだけじゃんw」

「……否定はできんのだけども」


 少し挨拶をすると、ロイドさんとびっくり箱さんは作業があるらしく早々にログアウトされた。

 …………大会やって、感想配信までして、これから追加作業なんですか?ロイドさんお忙しいんですね……。


「まー全員セリスちゃんにならんくて良かったなw」

「それなー。全員の可能性あったよね…」

「一応、Fブロックは全員リーダーのコアファンで固めていましたよ」


 ドリアンさんが苦笑する。


「あ、そうなの」

「流石に全員がセリスになるのはまずいかと思いまして」

「うん…流石にまずいよね」

「セリスちゃん人気だったよねぇ」

「私が参加するの珍しいですから、そういうことだと思いますよ」

「それはそうな。セリスと直接喋る機会ほぼないし」


 私が人気というよりは、注文を決めていても期間限定商品があったらそっちをつい買ってしまうみたいな、そういうことだと思います。


「誰かやってみて面白かった人いたー?」

「そうですね…三番目のアカシアキキさんでしょうか。本当に一瞬見失ってしまったんですよね」

「あれかー。ランダムマップの使い方上手かったよね」

「そうですね。低い場所から索敵する方法を確立出来たら、かなり強いと思います」


 小柄で隠れるのがすごく上手な方だった。マップが高めの壁があるタイプの生成だったのも相まって本当に瞬きの間に見失ってしまったんですよね。背後からいいのを一発もらってしまいました。連続攻撃系のスキルが間に合っていたら少し危なかったかもしれない。

 それはそれとして相手も私を見失ったらしく、実用にはもっと研究が必要そうだ。


「来週は公式配信かー」

「リーダーは同時視聴とかすんの?」


 三周年記念アップデートがそろそろ来るということで、来週の土曜日に公式配信が決定している。

 いつもは運営レターで発表した後に公式チャンネルで詳細解説や実際の使用風景の動画投稿や配信が行われるのだけど、今回は記念生配信の予定だけが発表されていて、発表内容は何一つ公開されていない。


「ギルド内でみんなと見るのはやりたいけど、配信はなしかな。俺はどっちかってと公式情報ちゃんと読んでから配信したい派閥なんだよね」

「そうなんだ」

「そうねー。元々そうだけど今は切り抜きがちょっと怖いのもある。CCO時代ならともかく、今EFOで俺が適当言ったら間違ってても信じちゃう人出るだろ」

「それは出るねえ」


 なるほど、それは確かにありそうだ。公式配信ではなくサザンクロスチャンネルだけを見ている方も多分いますしね。配信で話すとなるとそういうのも気にしないといけないのか。


「リーダーは内容なんか聞いてる?」

「聞いてないし、聞いてたとしても言えねえよw」


 ぽこぽこさんの質問に、リーダーさんが苦笑しながら肩を竦めた。

 この会話前も聞いた記憶がありますね。もしかしてお約束的な流れなんでしょうか。


「あ、そうだセリスちゃん、受験完了おめっとー」

「え、あ、はい、ありがとうございます。といっても、ギルドではお伝えしていた通りなんですけども」


 ギルド内では内部進学ですということは随分前から言っているので、本当に今更だ。


「推薦ってか、内部だもんねw」

「はい、学内成績で優先的に決定したので、受験も何も無いんですよ…けどコメントでいつまでも心配されるのも困ってしまうので」

「大学受験はねー、みんな心配するよ」

「ニンカのときはどうだったっけ?」

「ニンカは8月9月にあからさまに出現頻度が落ちたから、そんなに心配されてなかったよ」

「そうだったっけ?」

「あー、そんな気もする」

「やべ、記憶が飛んでる」


 なるほど、そのあたりは私がお会いする前ですね。


「受験ないのいいねぇ~。学祭とかは?もう終わった?」

「え、あ、いえ、来週です」


 何人かがおやと首をかしげた。


「ありゃ」

「公式配信と被っちゃったか」

「え、ああ、日程的には、まあ」

「高校最後の文化祭~」

「セリスちゃんは文化祭なんかやるの?」

「いえ、私は部活も参加していないので、特には…」

「そっか、じゃあ回るだけかー」


 …………え?


「ぇ、ぁ」

「誰かと回るの?」

「え?いえ……特に、あの」

「えー、誰か誘ってきたりしないの?」


 誘い、誘い、まあ、あの


「誘われは、しましたけど…」

「ほー」

「友達?」

「いや、えっと、違うクラスの方で…」

「お?」

「え、男?」

「え?あ、ああ、はい、そう、ですね?」


 周囲からどよめきが上がる。誰かわからないけど口笛のような音も聞こえる。

 え?あの、断ってて、というか文化祭行く予定なくて……


「せいしゅーんって感じー」

「高校の学祭って誰かと回った?」

「友達と裏でゲームしてたw」

「俺ずっとバンドでキーボード弾いてたわ」

「無卿はそりゃそうだよなww」

「僕PC研でゲームしてた記憶しかないなあ」

「なかーま」


 ぁ……ぁ……な、なんか、勘違いされている、気が……え、話題移っちゃった、あ、、あ……これどうすれば……


 え………あ、今!?あ、あ~でも流石にもう無視できないか……


「あ、あのすみません、ペアレントコール来たので、落ちますね」

「あ、ああ。もう時間だもんね。今日来てくれてありがと」

「いえ、こちらこそ呼んでいただいてありがとうございました」


 方方に挨拶をして、リーダーさんにもお声をかけて、ログアウトを選択した。


 …………まあ、次聞かれたら訂正すればいいか。



 □■□■□■□■□■□



 セリスちゃんがぺこぺこと挨拶をしてログアウトした。


 何人かが愉しそうな顔をしてリーダーを見る。


「男の子に誘われたって」

「まーね、告白の百や二百されてんじゃない?」

「流石に桁がおかしいだろw」

「俺セリスちゃんと同年だったとて告白はできねえ気がすんなー」

「そもそも話しかけられないかも」

「それで一生遠巻きにされてるとかはありそうよねぇ」


 今は色々と初対面の人との接し方も揉まれてきたけれど、高校生(ガキ)の時分に彼女に声をかけられたかと聞かれたら、まあ無理だろうな。


 リーダーは何か言いたいような、言いたくないような顔で少し目を泳がせている。


 ……ほー。


「リーダーは学祭とかって経験ある?」

「んー?まあ、専門学校ではあったよ。でも俺のとこはお祭りってよりは就活だったからねー、みんなガチよ。就職関係ない俺は壁に徹してた」

「あー……」


 文化祭ってよりは成果発表会だったのか。僕は普通校からの一般大学だったからその辺の感覚はわからないな。


「ロイドのとこの学祭は高校と大学で三回くらい行ってるかな。あとゲーム研の企画で呼ばれたのも一回あるね」

「なるほどねー。セリスちゃんとこはどういう系なんかね」

「ああ、文化祭って名前の学校説明会みたいなとこもあるよね」

「あるある、ウチの高校そうだった。クソつまんねーのに出席カウントで超ダルかった」

「……ま、プライベートを無理に聞き出すのはやめろよ、分かってるとは思うけど」

「はーい」


 リーダーがパン、と手を叩いて、その話は終わりになった。

 人がバラけたタイミングで、彼の頭をコツンと叩く。

 パーティ申請とウィスパーモードを入れると、リーダーは少し気まずそうにこちらを見た。


「なに?」

「宿題の答えは出た?」

「…………俺そんなに分かりやすい?」

「まあ。」

「……出たけどさ」

「そ、なら頑張れ」

「いや頑張れって……答え出たからってどうにもならんだろこれ」

「悩め悩め。若者の特権でしょ」

最年長(ぽんすけ)に言われると微妙に言い返せねえ」


 僕とリーダーじゃ一回り以上違うからねえ。


「ぽんすけは、反対とかしねーの?」

「お互い真摯に向き合うならいいんじゃない?女なら誰でもいいってやつはうちのギルドにはいないでしょ」


 恋愛関係でギスギスするのって優先するべきじゃない時に相手を優先しちゃったり、あとは単に三角関係の問題だから。

 固定ペアで、お互いにゲームではゲームを楽しむって割り切れてればそんなに揉めないよ。

 サザンクロスはツートップだから、リーダーに何かあってもロイドがフォローできるしね。


「宿題の答えが出たんならそれでいいよ、ああいうの連発は勘弁してな」

「そこは大丈夫、ほんとごめん」

「うん。あとはまあ――なるべく後悔しないようにね」


 なんか小難しいこと考えてた顔してるけど、考えすぎもよくないよ。


「……何やっても後悔しそうな気がする」

「そういう時は、十年後に笑い話にできそうな方を選ぶといいよ。」


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― 新着の感想 ―
最後の言葉にキュンときました
最後の言葉とてもいい言葉ですね
10年後に笑い話にできるのは玉砕か成功だけだからもうやることは決まったな!
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