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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
■廿四章 三周年の告知

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24-2.高校最後の

「――――ちさん、川内さん」

「え、あ、すみません、呼びましたか?」


 昼休みの教室の隅で読んでいたSF小説から顔を上げれば、クラスメイトの女の子の嫌に愉しげな瞳がこちらを覗いていた。


「呼んでる呼んでる」


 彼女が本当に愉しそうに指さす先は教室の後ろの入口。見知らぬ男子生徒が立っていた。…………またか。

 少しばかりげんなりした気持ちで扉を見やる。ピンのカラーは同学年だけど、誰だろう。


 ……まぁ、はい。行けということですよね。


「呼んでいると伺いましたが」

「あ、うん、あの」


 背の高い人だ。グライドさんくらいありそう。

 すごく短い髪に、広い肩幅。スポーツをやっていそうかな。あと本当に名前がわからない。名乗ってほしい。


「か、川内さんは、文化祭誰と回る予定ですか?」

「回りません」

「良かったら俺と…………え?なんて?」

「回りません。三年生は出席自体が任意ですので不参加です」


 十月後半の文化祭は出席日数にカウントされるのだけど、高等部三年だけは免除だ。そもそも学校に来る予定がない。


「え……、川内さんって外部受験?」

「内部進学予定ですが、特に文化祭で見たいものもないので」

「あの、それなら!俺と一緒に回ってください!」

「そもそも……あの、すみません、どなたですか?」



 動かなくなってしまったお相手さんを置いて席に戻ると、さっきのクラスメイトが私の机に突っ伏して肩を震わせていた。


「やば、え、マジで名前分かんないの?」

「わかりません、どなたですか?お名前言ってもらえなかったんですけど」

「バスケ部の、寺内」


 寺内、寺内……


「ああ、一年の時に同じクラスでしたね」

「分かってやれよぉぉおおお」

「お名前を言ってもらえれば分かりますけど、顔と名前が一致しない人の方が多いので顔だけだと分かりません」

「ちな私の名前は?」

「高橋さん」


 流石に今同じクラスの女子は分かりますよ。去年のクラスだと既にかなり怪しいですけど。

 名前だけだったら高校三年分なら言えるんですけどねえ。顔が分からないんですよね。


「イエス正解!よかった!いやーにしても、寺内振るのヤバ。ウケる」

「そうですか」

「えー、文化祭も来ないの?」

「……どうせ来てもやることないですし、来なくていいなら休もうかと」


 毎年クラス展示の入口で受付に座っているだけだ。三年生はクラス展示もないし、私は部活もやっていないので本当にやることも行く場所もない。


 高橋さんは何か言いたげに「え〜」と言いながら、ちょうど教室に入ってきた先生に促されて自分の席に戻って行った。



 □■□■□■□■□■□



「ねーねー副会長、聞きました?」


 噂好きの生徒会庶務、一年生の中井ちゃんが、生徒会室に入ってくるなり私の隣に座って言った。


「んー、何?」

「バスケ部の、寺内先輩の話ですよぅ」

「いや知らんけど」


 誰よ……。二年に寺内という名前に聞き覚えはないから、ってことは三年生?


「玉砕したらしいですよー、ほら例の、氷の妖精様に」

「ああ……あれ、この間もその話してなかった?先週も聞いた気がする」

「それは加納先輩ですよぅ」

「よぅ覚えてるねえ」

「そりゃもう!なんか文化祭一緒にまわろうって誘って断られたらしーですよー」

「へー」


 寺内寺内……三年の寺内先輩……ああ、バスケ部の前の部長かな。背の高いイケメンだった記憶がうっすらとある。

 他人の色恋によくそこまで盛り上がれるねー。友達の恋愛は楽しいけど、知りもしない上級生の恋愛をそんなに一生懸命情報集めてるのはそこまでいくと良くわからん。


「加納先輩も寺内先輩も、あたしならOKなのになー。あの人どんな人が好みなんですかね?」

「さあねえ。そもそも恋愛に興味のある人ばっかりじゃないし」

「えー。恋なんて全人類したくないです?」

「そーでもないでしょ……」


 花の高校生活ですよ!高校最後の文化祭ですよ!と鼻息荒く主張するけれど、いや本当に恋愛って興味ない人いるのよ。あの妖精さん恋愛どころか人類に興味なさそうじゃん……。


 成績は学年トップ陣、確か五位くらいだったと思う。大学先行授業を三年で二〇科目も受けて全科目修了認定を受けている才女(バケモノ)だ。

 先行授業を受講している生徒は時々いるけれど、最後まで受講して修了認定まで貰える人は本当に少ない。修了認定で課外活動単位を全て賄っているのは私の知る限り彼女だけだ。

 課外活動単位が必須のこの学校で、彼女だけが部活をやっていない。誰かと話しているところも見たことがない。普通に勉強が好きなタイプなんじゃないかねえ?いるよね、そういう人。


 だいたい告白とか言ってもさ、中高一貫で六年も一緒だったはずなのに高三まで文化祭にすら誘ってなかった時点でお察しなんだって。

 中井ちゃん高校編入組だからちょっと高校生活というか、文化祭に夢見すぎなんだよな。


 十月に入り文化祭まで残り三週間を切った。各部やクラスから上がってきた出展内容の最終決定を眺めつついくつかの提出書類を弾く。


 「中井ちゃん、これ将棋部と裁縫部に戻して来て。顧問印がない」

 「顧問にちゃんと見せろって言ったのに〜〜」

 「まぁしょうがない」


 特に文化部は幽霊顧問だったりするからね、部活内で決定してそのまま持ってきちゃったんでしょ。飲食を伴わないなら書くことも少ないし。

 でも一応大人の許可がちゃんとあるていが必要だからサイン貰ってきて。


 「はーい、じゃあ行ってきますね、小暮先輩」


 中井ちゃんは書類をヒラヒラ持って出て行って――――戻ってきたら、また別の噂話を仕入れてきていた。何やってんの。





(特に深い意味はないのですが、人物紹介はep.280、21章の終わりにあります)

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― 新着の感想 ―
リーダーがモタモタするから、また1人、犠牲者が生まれてしまった……
話す機会さえあれば声で気づく、か? いやでもいつかの会話で「え!?同じ学校だったんですか!?」って驚いてる光景が目に浮かぶなぁw
あまりにも狭い世間だぁ…果たしてお互い認識することがあるのか…!
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