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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿二章 第六回ギルドオフ会

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22-5.ギルドオフ会 閉

 ビンゴが終わればそれなりにいい時間で、帰る人が出る前に集合写真を撮るらしい。

 店員さんがテーブルを寄せてくれて、作られたスペースに皆さんで並んで写真を撮った。

 ニンカさんと並んで、ニンカさんの後ろにはグライドさんが立つ。

 撮った写真は後でサザンクロス内で公開してもらえるらしい。ちょっと楽しみだ。


「ニンカ、グライド、ちょっといいか?」

「あいあい?」

「はいっす」


 ロイドさんがニンカさんとグライドさんと話し始め、リーダーさんも無卿さんを捕まえて配信予定の話をし始めた。

 何となく行き場がなく、全体のテーブル数が減って椅子の詰められた席に腰掛ける。


「……ってことで予定空いてない?」

「いいよー。えーとね、18の週は水木が空いてるー。日曜日は夜ならへいきー」


 無卿さんの少し間延びした声がする。

 ほう、一週間配信企画。あ、これ聞いちゃってていいのかな……。


「このタイプ珍しいけど、なんかあるのー?」

「今ちょっと、金を払ってでも休みが欲しくてなー。助かるわ、よろしく」


 帰るらしい人がぱらぱらと帰り始め、会場の人が少しずつ減っていく。


「俺とにんぐらと、もうふたり?」

「びっくり箱にやってもらうから、もう1人だな」

「なーるー。その時期だとねむ蝉はダメだねえ」

「そーなんだよな……さっき一応ぽんすけに聞いたんだけどやっぱNGで」

「彼はソロはやらんだろーねー」


 なるほど、最後の一人……


「セーリス!あたしたちもう帰るねー」

「あっ、はい!」

「また遊ぼうね!」

「はい、是非!気をつけて帰ってくださいね」

「グライドが送ってくれるから大丈夫〜」

「気をつけます」

「ふふ、はい。また今度」

「うん、また今度ねー!」


 ニンカさんとグライドさんが帰っていく。

 2人が完全にいなくなってから気付いたんですけど、帰り損ねました。一緒に帰ればよかったですね。

 会場自体はかなり遅くまで使えるらしくて、まだまだ飲むらしい人がワイワイと話しながらお酒をかたむけている。

 帰る人の波は落ち着いてしまって、なんとなく座ってしまって立ちにくい。


「二人は9月中なら問題ないそうだ」


 ロイドさんがリーダーさんに声をかけて席に着く。


「あんがとー。本格的にあと一人か」


 あと一人。うーん……困ってる、んですよね……


「あ、あの」

「っと、はい?」


 リーダーさんが弾かれたようにこちらを向く。


「私、出ましょうか?」


 リーダーさんとロイドさんが、少し困った顔をしてしまわれた。


「セリスちゃんね〜、条件はぴったりだけどー」

「あの、聞いてたかもしんないんだけど、今回夜の配信企画で……時間が11時からなんだよ」

「聞いていました。あの……誕生日がピンポイントで知られるのが嫌なだけで、別に、18になった事をいつまでも非公開にしたい訳では、ないので……」

「んー……」

「4月から9月まで、5ヶ月以上ありますから。どこが誕生日かはわからないと思いますよ」

「んん~~~…………」


 リーダーさんは唸りながらグルグルと頭を回して、そしてパンっと手を合わせてこちらを拝んだ。


「しょーじき助かる!頼める?」

「はい、大丈夫です」

「細かいことは酒の入ってない時に頼むわ〜」

「すまんすまん、後で正式な企画書送るね」

「じゃー仕事の話終わり!まだ飲んでいいんでしょ〜?」

「おう、すまんな。どんどん飲んでくれー」


 無卿さんはニコニコと、グラスを傾けた。


 よし、今だ。


「すみません、私はそろそろお暇します」

「ありゃ、そうなの〜?」

「流石にもういい時間なので」


 もうすぐ20時の中頃だ。時間もいいし、話も丁度落ち着いたし。


「ありがとうございました、楽しかったです」

「送ってく」


 私が立つのに合わせて、リーダーさんも立ち上がった。


「流石に帰りは迷いませんよ?」

「もう暗いから、送らせて。ロイド、ちょっと頼んだ」

「……僕が行こうか?」

「いやいい、行ってくる」

「……そうか」


 近場にいた何人かに挨拶をして、リーダーさんと二人連れ立って会場を出た。

 9月頭の外は、すっかり夜になってもまだ蒸し暑い。

 努めて極めて穏やかな表情を崩さないように努力する。

 心配されてるだけ、心配されてるだけ、心配されてるだけ。――――よし。



「セ……紬さんは初参加だったけど、どうだった?」


 夜になっても明るい街の中を歩きながら、リーダーさんが言った。


「あ、は、はい!?」


 え、い、いまなんて?


「あーごめん、一応外でプレイヤー名はどうかと思って」

「あ、ああ……は、はい、そう、ですね……えと、あの、楽しかったです」


 ニンカさんにも会えたし、他の方も沢山話しに来てくださった。変則ビンゴも1年の話が沢山聞けて良かったし、ずっと映っていたスライドショーのスクショも面白かった。


「良かった。実はお酒の飲めない年齢の人が来るのって初めてで」

「ああ、そうなんですね」

「うん、周り酒飲みしかいないから、ちょっとどうかなと思ってた」

「ああなるほど……私はあまり気にならないですね。皆さん楽しそうで良かったなと思ってます。ニンカさんにも会えましたし」

「ニンカも会うの楽しみにしてたっぽいしな。良かった」

「それなら良かったです。私ばっかり楽しいんじゃないかと少し思っていたので」

「あはは……グライドが嫉妬するくらい楽しみにしてたみたいだよ」

「ふふ、その話は今度聞きます」


 メッセージIDも交換して、一緒に写真も撮った。ニンカさんも楽しんでくれていたなら嬉しいな。


 リーダーさんがふと空を見上げた。


「今日はなんもないんだったか」

「え……?あ、ああ、流星群ですか?」

「そう」

「えーと、そうですね。ペルセウス座流星群は先週で、おうし座流星群は再来週くらいのはずなので……。それに、これだけ明るいとあまり見えないと思いますよ」


 繁華街という程では無いけれど、街は明るい。

 流星群の日であってもここからは見えないと思う。


「それもそうか」


 リーダーさんは少し気恥しげに微笑った。

 駅までの少しの道を、私の歩調に合わせて歩いていく。


「今日の参加費、本当に良かったんでしょうか」

「ああ、いらんいらん。君だからって話じゃなくて、誰からも受け取ってない」

「えーと…」

「元々これ、サポメンへの慰労なんだよね。動画露出少ない人にはなにかするタイミングがないから、年一くらいで作るかーって。ギルドも配信も支えてもらってるからね、ちょっとだけど返していかないと」

「ああ、それでビンゴの内容が生産に寄ってたんですね」

「そうそう。ボス戦に参加してないアタッカーはいるけど、ボス戦の装備づくりに参加してないサポメンはあんまりいないからね」

「なるほどです」


 色々考えてらっしゃるんですね。大きい団体の運営って大変そうだ。


「っても、基本的には全員どっかしらでビンゴする前提で組んでるよ。参加賞のギフトカードは人数分用意してたし」

「あ、あはは……」


 1人だけ、ビンゴしませんでしたねぇ。


「12リーチなんて初めて見たわ……」

「理論最大ですよね」

「いやいうてさ、頑なに開けなかったけどボートタウンの木に遊びに行ったを開けりゃビンゴだっただろ」

「そうなんですよねえ」


 絶対開けなかったですもんね……。


 くすくすと笑いながら街を歩くと、あっという間に駅に着いてしまった。


「じゃあ、気をつけて帰って」

「はい。ありがとうございます、送って頂いて」

「この時間に女の子一人で歩かせるのはないよ。それじゃ」

「あ、えと、リ……理人さん」

「うん?」

「本当に、楽しかったです。おやすみなさい」

「――ん、よかった。おやすみ」


 リーダーさんはひらひらと手を振って、来た道を引き返して行った。


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― 新着の感想 ―
いやいや、あの木は告白された大事な場所だから「遊び」では無いんだよ。(ニヤニヤ)
一歩、いや半歩進んだか……?
182話ではメールでのみ下の名前呼びで、183話ではまだセリス呼び。 無自覚ながら少しは前進してるのか…… そしてリーダー達を見送った後はそれを肴に酒を飲む居残り組。
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