21-4.禁書の防衛 下
「1ウェーブ1分、7の倍数でボスだな」
「とりあえず21ウェーブで上級か。これ28ウェーブで超上級来んのかね?」
第7ウェーブは初級ボス、第14ウェーブは中級ボス、第21ウェーブは上級ボスだった。
一回目のチャレンジは14ウェーブ目のボスが取り巻きを大量召喚して手数が足りなくなり終了、二回目のチャレンジでは20ウェーブ目で雑魚が飽和して終了、先程の三回目は23ウェーブのところで高速特攻してきた敵がテントを破壊してしまい終了となった。
取得ポイントは1,2,3回で倍では効かないほど上がったので、ボスを超えたところで急激に上がる仕様だと思われる。
「超上級基本的に神様系だから、上級で数が増えてくとかが現実的じゃね?」
「一定ラインまではそうじゃないかねぇ。試すには36人フル必須だけど」
「ちゃんと時間合わせて企画しなきゃ駄目だな」
「あとは出現ボスが順番固定なのか、ランダムなのかだな」
「7ウェーブと14ウェーブがランダムボスでしたから……」
「ランダムだろうな」
「でーすーよーねー」
かなり当たり外れのある、ガチャ要素の強い戦闘ラッシュだ。
構成が上手く嵌まればかなり続きそうだけど、ガチ編成でも特化型ボスが連続したら低いウェーブで終わりかねない。
「さて……大体話は分かったんで、リーダー達の到着前に1回くらい真面目にやりますか」
既に遊び始めてから一時間以上経っている。
リーダーさん達は一通り生産や納品系を触り終えたら合流すると言っていたので、確かにそろそろ来てもおかしくない。
「パーティを6:6から4:4:3に分ける。基本は2パーティ表・1パーティ休憩の状態を作る。上級ボスのときだけフルメンバーで行こう。スイッチタイミングは様子を見つつだけど、とりあえず5ウェーブごとかな」
「ぽんすけはヘルパー?」
「うん、僕ヘルパー。基本奥にいるんで見ながら入るわ」
「私、休憩なくても大丈夫ですが…」
「だめ」
ノータイム即決で却下された。
だめ、なのか。
「あー、えっとね。休憩は他のメンバーが取りやすい形を作んないとだめ。セリスちゃんが連戦してるとこで大人しく休憩できる図太いメンバーだけならそれでもいいんだけど、そういうやつらばっかりじゃないのよ」
「あ……すみません」
「団体戦は全員で最高を目指すから、個人のポテンシャルよりも場合によっては集団の心理負担を優先することもある。わかりやすいとこでいうと、アネシアさんの爆発をロイドが止めたみたいなやつね。覚えといて」
「はい、わかりました」
再編されたAパーティに入る。
最初の5ウェーブを入って、次の5ウェーブで休憩、そのあと10ウェーブ連戦して、21ウェーブで上級ボス。うん、多分大丈夫。
最初の方の敵は、数もレベルも大したことがない。サクサクと5分戦って、ぽんすけさんの「スイッチ」の声に合わせて後ろに下がる。
テントのそばで座る。ソロのときからずっと連戦でやってきたので、休憩の時にどうすれば良いのかって実はよくわからない。
初級ボス、今回はビッグフロストバット。ゲーム中だと最初の氷系ダンジョンのボスですね。
ダンジョン自体が耐寒装備をしないとスロウデバフがかかるという、対策装備必須系ダンジョンだった気がする。
さくっとスキルを決めて決着。流石に初級は早いですね。
さあ、初級ボスを倒すと敵が明らかに強くなる。ウェーブで追加される敵の数もぐっと増えた。
8ウェーブ、9ウェーブ。もうすぐか。
10ウェーブが終わって、Bパーティとスイッチする。湧き出てくるモンスターに、飛び込んだ。
いち…………に…………さん。
ウェーブを3つ通り過ぎて、現れた中級ボスはノールトリス。……え?ノールトリス出るんですか?宝物を溜め込む性質を持つ、中盤の金策ボスですけど。
毎週の挑める回数に制限のあるタイプの敵だ。3回でしたっけ?ええ……このウェーブバトル敵のドロップ出ないんですけど。
「せめてドロップをよこせ~」
「なんでここでトリスなんだよ何もドロップしねえくせによお!?」
ノールトリスの特徴は、とにかく硬い。攻撃力自体はさほど高くないけれど、かといって放置もできない。本当に……鬱陶しい。せめてなにかドロップしてください。
ギリギリ時間内に倒しきって、15ウェーブ。また敵がぐっと強く、多くなる。
そろそろ毒アサシンだと一撃が厳しい。……次はファイターで来よう……。
17ウェーブをしのぎきったところで、ぽんすけさんの「Aパーティスイッチ!」の声が聞こえた。
え?誰か落ちましたか?
指示に従うようにとは言われているので急いで下がる。あと10秒くらいで次のウェーブだ。
「お、出るの?」
「みんなが僕に何もさせてくんねーから体があったまらん。ちょっと3ウェーブもらうね」
「おー、やる気じゃん」
「まー、もう分かったし。ドドンガ、トチったらフォローよろ」
「あいよー、いてらー」
ぽんすけさんが、Aパーティが下がった場所へ一人入っていく。
「……え?」
「あれ、セリスちゃんもしかしてぽんすけの戦闘見たことない?」
「え、あ、えーと、リーダーさんとPvPしているのは、何度か」
あとは過去ボルナデラとなななコピー戦もご一緒しているけど、どちらかと言うとサポート寄りの戦闘をする方だと思っている……の、ですけども。
「なるほどねえ。そういや機会もなかったか」
「最近はぽんすけ向きのイベント少なかったからねぇ」
いや、あの、4人で抑えていた場所に、一人で入って行っちゃったんですけど?
「よく見ときな、セリスちゃん」
ぽんすけさんが槍を構え、なにもない場所に向けてスキルを発動する。
「あれがサザンクロスの、鬼神だよ」
はじめからそこにいたかのように着弾地点に敵が現れて、即時蒸発した。




