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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
二十章 Happy Birthday

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20-4.Happy Birthday 上

 誕生日プレゼントは結局何も思いつかず、素直に思いつかないと言ったところ父が少し遠くの本屋に行こうと言った。


 連れて行かれた先は名前の知らない本屋で――――大学で使うような専門書がたくさん売られていた。


 多分誕生日プレゼントを選ぶ時では過去一テンションが上がっていたと思う。

 好きなだけ選びなさいと言われて本当に好きなだけ選んでしまい、会計で6桁の金額を聞いた瞬間に正気に戻った。

 父はそんな私に「もっと早く連れてくればよかったね」と言って笑った。


「大学の学部は、フルダイヴ関連のところにするのかい?」

「え?なんで?」

「なんでって…今日選んだ本、半分くらいそれ系だったじゃないか」


 思念誘導基礎理論、基礎解析学、脳波解析基礎、リアルタイム解析理論、人体工学基礎、ゲームデザインの基礎に、神話関連の本もいくつか。マーケティング事例の本も気になって手に取ってしまった。

 …………でも、本当だ。


「紬の好きなところを選べばいいけど、夏休み明けには希望調査は出さないといけないだろう?」

「そう、なんだよね」

「これだけ気になっているなら、そこを基準に決めていいんじゃないかな。やりたいことと違ったならあとから転科もできるはずだから、今の興味だけで入っても問題はないはずだよ」

「そっか」

「うん」


 ――――そっか、私、VRの技術そのものも気になってるんだな。


 そう思ったら思いがけずすとんと言葉がお腹の中に落ちてきた。


「学部は好きに選べばいいし、大学院だって、行きたいなら行かせてあげられるよ。職業もこれはやめなさいというものも特にはない。たくさん悩んで、気に入ったものを選ぶといい」

「パパはこれでも稼いでるから、今のうちに好きなだけスネかじっときなさい」

これでも(・・・・)って言い方はちょっとひどくないかい?」

ちょっと(・・・・)なら大丈夫ね?」

「紬、ママがいじめる…」

「え、私家のパパしか知らないからなんとも言えない」

「紬もひどい……」


 さめざめと泣き真似をする父を横目に、母とふたり吹き出して笑った。

 いや、仕事でちゃんと働いてるのは知ってるよ。でもどうしてもこう、家のリビングで私の動画を見ようとするようなちょっとデリカシーのないところとか、見てるからね。


 母の作ったオレンジケーキはすっかりお腹の中に入りきって――――カロリーの計算は明日の私に任せることにした。



 ・・・



「おつかれさまで…………あれ?」


 概ね予定通りの9時少し前にログインすると、談話室は無人だった。

 この時間に無人なのはめずらしい。特に今日は複数人からログインしてねと呼ばれているので、てっきり皆さん待ち受けているのかと思っていた。

 えーと……あ、メッセージ来てますね。


「ログイン後”パーティ会場”へお越しください……?」


 パーティ会場ってどこ?――――ああ、ギルドのどこかの部屋の名前を変えてるのかな。えーとギルドマップ……パーティ会場パーティ会場…あったあった。クイックムーブで扉前に移動して。


 さて。

 これ絶対に初手クラッカーですよね。


 ……よし。大丈夫。


 大きな音が鳴る覚悟を決めてそっと扉を開けると、人の気配はあるものの予想に反して中は薄暗かった。


 電子ピアノの音で、『Good morning to you』の伴奏が流れ出す。


 ハッピバースデートゥーユー

 ハッピバースデートゥーユー

 ハッピバースデーディアセリス〜〜

 ハッピバースデートゥーユ〜


 私の周囲がパッと明るくなり、派手なクラッカーの音が鳴り響いた。


「セリス〜お誕生日おめでとう〜!」


 ニンカさんの声に引き続いてたくさんのおめでとうの言葉と、クラッカーのリボンと、





 たくさんのもふもふが襲いかかってきた。





「わっははははは、だーいせーいこ〜う!」

「セリスー生きてるー?」

「えっあ、わっえっと、いきて、ます!けど!これどうなって、あの、え?わっぷ、黒耀くんちょっとまって、にゃろちゃん、にゃろちゃんだよねこれ、まって、あの、すなくんちょっと、ちょっとおもい、クリスすてい、ステイ、あの、わっぷ、ちょ、ちょっとまっシロくんまっいまむりっ」


 たくさんのペットたちに押しつぶされる。え、これどうなってる?ふわふわ、あの、かわい、あの、ちょ、え、まって、かわいいけど、すごい、うれしい、え、いやそうじゃなくて。そうじゃなくて。


「この状態でペットの見分けついてんのすげえな」

「ほんとにゃ。まあでもいい加減解除するにゃ〜」


 ニャオ姉さんの言葉に合わせて、みんなが体の上からどいて部屋中に分散した。助かったような、残念なような……あ、いえ助かりました、本当に。本当です。


「え、今のどうやったんですか?」


 ペットって行動指定とかできなかったですよね?


「ペットの活動範囲指定を、扉の周囲2mに限定したのにゃ。活動範囲外にいたペットが一気に指定範囲に移動するから、一斉に飛びついたように見えるのにゃ〜」

「あ、ああ、なるほど…」


 そんな技が。ペットの活動範囲指定の権限ってギルドの上位権限でしょうか?いえ、大した意味はないのですけれど。ぜんっぜん、大した意味はないのですけれど。


「さって、改めて、誕生日おめでとうセリス!」

「あ…はい――――ありがとうございます!」


 ペットルーム改めパーティ会場全体が明るく照らされる。

 色とりどりの花の奥、壁にはHappy Birthdayの飾り文字が輝いていた。


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― 新着の感想 ―
『Good morning to you』そうか誕生日の歌の元ネタはこれだったのか。 そして選ぶ本に経営学やそっち系がないのでそれはリーダーに任せつつ研究開発に専念するという未来もありそう。
誕生日に専門書…さ、流石セリスちゃん… ハッピーバースデー( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
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