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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
四章 ふたりの遊び人

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4-5.遊び人と昔話

「早かったですねぇ」

「早かったね~」


 レベル上げ、速攻で終わりました。現在145レベル。

 ローム古神殿の適正レベル155くらいまで上げようかと話していたけれど、転職可能レベルになったのと経験値ブースターが切れたので、あと電撃玉の残りが心もとなくなったので、まあちょうどいいしここまで、ということになった。

 電撃玉の残りはすったもんだの末ニンカさんに押し付けた。もらえません。もらえませんって。サザンクロスの倉庫に入れておいてくださいっ!


 今は精霊虫の森で転職の前提スキルのレベル上げをしている。なんだかんだでここは徘徊ボスの関係で人が少なく、やりやすい。

 ……さっきから初期職ノービスを3人助けてるけど。みんなマップ見ようね。



幻獣召喚(イリュージョン)っと。ってかあんたは普通に転職にいっても良かったんよ?あとあたしのスキル上げだけだし」

「私は別に育成急いでいないので、全然」


 私は前提スキルの刺突撃のレベルがマックスになったので、転職可能になった。だけどまだニンカさんとパーティのまま一緒にいる。

 木の上でスキルを使って、時間が来たらまたスキルを使う。木の下では召喚されたライオンや虎が近くのイモムシをかじりに走る。それだけの時間なので、


「せっかくなのでニンカさんに聞きたいことがあって」

「ほう?」

「相方さんってどんな方ですか?」

「ナンッ」


 いや是非に聞きたいんですよ。


「なんなんっおまっばっかじゃねーの!?」

「え、気になりますよ!美少女アタッカーとペア組してるタンクの神様!ラノベのヒーローみたいですよね!」

「知るかっ!?」

「まーそれを抜きにしても、最近なんだかんだサザンクロスメンバーと組むことが多いので、知っておこうかなと」

「グライドよりトラキチとかのが組みそうじゃん」

「それはそれということで」

「おーまーえー、楽しんでるだろ!?」

「はい!楽しいです!」


 恋バナって楽しい!みんなこんな気持だったんだね!!


 ニンカさんの表情がコロコロ変わるのが見ていてかわいいし、どうも進展してないっぽくてドギマギしてるのが最高ですね!!漫画の世界みたいです!


「ロームで初めて組んだって言ってましたよね。ロームって1周年開放エリアでしたっけ?」

「あーそう。当時の最前線。あのときはレベルキャップも175だったし」

「ほうほう、当時からタンクだったんですか?」

「タンクではあるけど、あの時はパラディンだった。あいつメインはパラディンなんよ、ロイヤルガードはサブ」

「え、知りませんでした」

「元ソロ勢だから。ロイヤルガードはまじで攻撃何もできないからアサシンよりソロ不向き」


 確かに、野良募集に単騎で入っていくということは原則ソロということだ。

 パラディンは防御主体だが剣が使えるので、ソロでもそこそこいる。

 ロイヤルガードは本当に防御特化だと聞いたので、ソロでは難しいだろう。


「じゃあニンカさんと組むようになってロイヤルガードに?」

「……そだね。ロイヤルガードの転職はあたしが手伝ったし」

「へー!へー!え、ペアはどっちから言い出したんですか?」

「いやっ……どっちからも言ってない。あたし基本毎日広場で旗立ててたから、そしたらなんか、あいつが毎日来て…」



 □■□■□■□■□■□



 またやってしまった(・・・・・・・・・)


 その言葉が重りのように腹の底に沈んでいく。

 目の前にはDEADの文字と、何秒後にフェニックスの羽を消費しますという文言。

 風切羽は持っていない。


 グライドさん(・・・・・・)は善戦したが、最前線にパラディン一人では立ち向かえない。

 彼が倒れると、パーティ全滅の表示とともに街へ転送された。



「おまえすっげー火力だな!!!」


 似たような転送組でごった返す古都アーレインで、彼が満面の笑みで言った。


「いやすまんかった、こんなに火力高いやつがいると思わなくて…ヘイトそっち行っちゃったよな、悪い」

「い……いえ、こっちこそ、避けられなくて…」

「ヘイト抜かれたタンクが悪いんだよ。タンカーってそういうモンだろ。なあもう一回行かね?今度はもうちょいうまくいくって!」


 ヘイトを抜かれたことが悪いだなんてつゆ程も思っていない。何度も抜かれるならまだしも、彼の管理は完璧と言ってよかった。ヘイトが抜かれた瞬間に声も上げてくれた。そこまでされれば普通は(・・・)避けられる。普通の上級組なら。私ができないだけだ。


「もう一度行こう」と手を差し出されたことは久しくなかった。

 差し出された手は大きくて、温かかった。




「ダメかぁ」

「………………すみません」


 2時間後、5度目の全滅を経て、古都の隅で座り込んだ。

 全滅理由は全てあたしの過剰火力によるヘイト貫通からの死亡だ。


「今のは行けたと思ったんだけどなー!」

「っ……あの、すみま……」


 千切れるような声を紡いだあたしの頭を、グライドさんがぽんと撫でた。


「アタッカーに火力控えろってのも違うだろ。うーんでも、今日はここまでかな。すまんな!」


 時刻はもうそろそろ深夜と言える時間で、確かに解散には程よい時間だった。


「そうですね。あの、今日はありがとうございました」


 グライドさん(このひと)ともきっとこれが最後だ。


 ユーリンさん、あんこ大好きさん、ブレンナさん、神速のカス振りさん、ゆめおいびとさん、なつめのはなさん、マルカスさん。

 解散際まで一貫して優しく接してくれた人の名前はすべて言う事ができる。

 今日はそこに一人、名前が追加された。


 グライドさん。


 きっとこの後そっとブロックしてくるだろう、優しい人。


 楽しかった。さようなら。

※なまじ最前線にいるのと、ジャンプブーストを一切使用していない(他者視点ではそう見える)ので、かなり暴言を吐かれています。

もっと低レベル帯ではエンジョイ勢だらけなのでそれほど殺伐としていません。


※アコライト(いわゆる神官職)

 ├ビショップ(正統進化、回復バフデバフなどが優秀)

 ├パラディン(殴りアコの二次職)

 └ロイヤルガード(守ることに特化した二次職)

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