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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十八章 リーダーの誕生日

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18-1.無意識の歌

「ニンカさんちょっと待ってください」

「うん?」

「私、ニンカさんの前で歌ったことないですよね?」

「え?」

「え?」


 いや、なんですかその反応……歌ったことないですよ?リアルでお会いしたことがそもそもありません。


「…………セリス」

「はい」

「錬金中とか、倉庫整理してるときとか、歌ってるよ?」

「…………はい?」

「割とよく歌ってるよね」

「へ?」

「ご機嫌に歌ってるなーって思ってた」

「ちょ、ちょっとまっていただいていいですか?」


 は?え?いつ?


「え……い、いつですか?」

「いや割といつもだから、分かんない。この間は英語曲歌ってたよ」


 ニンカさんが鼻歌を歌う。ああ、先日の英語の授業でやった曲ですね。

 ……え?


「え……いつから……?」

「いつからだろ?そういや最初の頃は歌ってなかったね」

「バレンタインの後くらいじゃないか?俺もいつもいるわけじゃないから知らないけど」

「……………なんで、教えてくれなかったんですか……」

「いや、止めるものでもないし……」

「作業用BGMの類だった」


 何で、誰も、教えてくれなかったんですか……………。


「時々錬金レシピで替え歌してるよね?」

「ち、ちが、違うんです、違うんです!脳内で歌ってるつもりで!声に出してるつもりがなくて!」

「VRあるあるだね~」

「リアルよりその辺の閾値が低いんだよな」

「唇をちょっと動かす癖があるんじゃない?それで発音判定になるって聞いたよ」

「知りませんでした…………」


 もう錬金室入れません……いや、え、嘘ですよね?毎回声に出てたとか嘘ですよね?


「ところでニンカ」

「あいあい?」

「世の中には言い出しっぺの法則というのがあるのはご存知?」

「グライドと一緒だったらいいよ」

「OK、悪い俺ログアウトするわ」

「おつかれ~」

「おつかれ、さまです……」


 リーダーさんはさっとログアウトされた。

 本当に立ち直れない。どうして……。



 □■□■□■□■□■□


 ワークスペースにはロイドとびっくり箱。ドリアンは外仕事中で夜に来るとのことだ。

 ロイドのミッションは無事に終わったらしい。


「一応聞くんだが、本気で言っているのか?」

「これはもうなんていうかさ」

「ああ」

「楽しそうって思っちゃったらダメなんだよ」

「……そうか」

「さようか……」

「おう」

「とりあえず無卿は確定だな。グライドは、まあニンカが良いなら断らないだろう」

「うん」

「一曲僕と歌って、あとは有志で合唱の体が良いと思う。残りを君のソロにすれば、ソロ4~5曲くらいで、全8曲くらい。MC込1時間半というところか」

「良い時間だな」

「ほんまにやるんかー」

「準備もリハも地獄だぞ」

「しゃーない!」


 俺の宣言に、ロイドが仕方なさそうにため息を吐いた。

 びっくり箱は天を仰いでいる。


「あー、とりあえず無卿の有響チャンネルにオファーやな。あとは琥珀の窓」

「頼む」

「で、ギルド内に有志募る告知か」

「曲を指定しちゃってこの曲配信で一緒に歌える人、の方がいいかな?」

「そうだな、あとは場所だが」

「EFOってTAMSoundアドオンいける?」

「確かいける、と思う」

「じゃあ大規模配信部屋だな」

「閉鎖して飾りつけもか」

「あそこはディスプレイ3つあるから、固定イラスト2枚つけて、誕生日ファンアートから表示するか」

「壁は"それっぽく"でええか?」

「それっぽくでいい」

「あいよ、最低限はやっとく。細かいとこは動き決まってからやな」


 ぽんぽんぽんと話が決まる。

 いや俺の内容確定待ちだっただけで、やるってなったらロイドなんかはその辺もう慣れてんだよな。特に俺の無茶振りに。


「合唱、セリスは出そうか?」

「あの場には居たんだけど、どうも錬金で歌ってんの無意識だったらしくて」

「は?そんなことあるんか?」

「いやほんとに……」

「めっちゃめちゃ歌っとったやん。まあまあ上手いし聞かせとんのかと思っとったわ」

「うん……超ショック受けてて抜け殻だったから分かんない。なんで?」

「セリスが出るなら合唱は混声ができるものにしないといけない。出ないなら男声のみになる。彼女の声で男声を歌うのは辛いんじゃないか?」

「あーなるほど」

「女声パート1人、ニンカとニャオ姉入れても3人やしな……ニャオ姉は数にいれんほうがいいやろうし、いっそセリスもデュエットで歌ってもらうか?それで合唱は男声のみ」

「セリスがリーダーと二人で歌えるならそれでもいい。ただ、やれるか?」

「聞いてみないとなんとも」

「聞けるか?」

「いや聞くなら聞くよ、なんで?」

「あー……」


 ロイが微妙な顔でこちらを見る。


「最近、セリスに避けられているだろう」


 どうしてこいつはこうも、よく見ているのか。


 避けられていることは分かっているし、理由もわかっている。


「まあ、別に、一緒に遊んでるし、普通に喋るよ。さっきも喋ってたわけだし」

「そうか」

「さて、事前に考えてたセットリストが使えそうな疑惑が出てきた。なるはやで無卿とニンカグライド抑えて色々確定させて練習時間取ろう。あとセリスにも確認」

「了解」

「っし、準備に入りますか!」


 俺の声に、小学校から一緒にいる親友は仕方のなさそうに肩をすくめた。

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