17-2.負け方のわからない相手
「あの、EFOって音とか、空気の流れもありますし。結構近くに居たらわかりますよね。音が聞こえないほど遠くの敵からの攻撃って基本的に届かないのでそんなに気にする必要もないですし。あとマップレーダーって平面なので極論あんまり使えないじゃないですか、イヌワシの位置とか結構分かりにくかったですし……動画の人もそうですけど、ずっとマップ見ててあんまり周り見てないというか、あんなに外してるプレゼントなんて見たことありませんよ。会話ログ流れないせいで味方と連携取れてないですし……いやそっちは取る気がないのかもしれないですけど。それに装備大分甘いですよね。ブラマジにプレゼント3発も当てたのに倒せないって、そもそもスキルレベル足りてるんですか?それにスキルチャージとか、PvP真面目にやってれば別にリスト見なくても分かるというか、目の前にいるのになんのスキル使ってるのか見たくて相手から視線外してるってナメてるんですかね?あとこれ馬鹿なのかなって思ってるんですけど、命中100のせいで遊び人系のもう一回!発動してないですよね。MP足りないのそのせいじゃないですか。確かレンジャーにもMISS引いた後次弾の火力上がるスキルがあったと思うんですけど、それも発動しないですよね。トラキチさんの時に思ったんですけど、命中100って別にあんまり強くないというか……ええと、ええと……あの、皆さん……?」
全員の視線がだんだんと下がっていって、最後にはリーダーさんなんて完全に突っ伏してしまわれた。
グライドさんがふるふると肩を震わせている。
「っく」
ロイドさんが耐えきれないとばかりに小さく声を漏らした。
「ぶっ、あっはははははは」
「へっ!?」
釣られた様にリーダーさんが吹き出す。
「くははは、あっははは、ちょ、ちょっとまってお腹痛い!ひ〜!」
「あっはっは!なるほど!なるほどね!これがVRネイティブか〜!」
「いや、もう、やべえわ、俺等何悩んでたんだっけ?!」
「PCMMOでどうやって勝つか、みたいなこと考えてたっす」
「ほんっとそれな、あっははは、いやその通り!その通りだね!」
ど、どうしようなんでみなさんがこんなに笑っているのかもわからない……。
「別に、オレらはマップデータマスクでも行けるわな!」
「そりゃそうだよな、スキルチャージなんて普通バレてるもんだしな!」
「ブラマジのスキルチャージなんて、発動のかなり前から見分けられるのが当たり前だな」
「そりゃそうだ!」
「そうだよな!俺達は!マップなんて見なくたってお互いの場所がだいたい分かるし!位置バレてても相手の場所だって分かるし!スキルチャージなんて全部バレてて当たり前だし!命中100なんてむしろ弱体化だわな!」
「いや〜〜〜なんかさ、PCゲーだと結構絶望なんすよ、マップデータ裸って」
「え、えと、そうなんですか?」
首をひねる私に、グライドさんが続けた。
「そうだなー……人が移動しても音が鳴らないか、鳴っても全体反響して音源がわかりにくい、空気の流れもわからないって条件だったら、どうすか?」
「あ、あー、確かにきついかもです?」
確かに、そのレベルの情報で一方的にマップデータが見られていたら、一方的に的にされるかもしれない。
「PCゲーってそうなんだよ。オレ達みんなPC版のMMORPG出身だからさー、なんとなくチートってやつの印象がそういうのに引っ張られるんだよね」
「ああ、そうなんですね」
「いや、VRMMOでは別にぜんっぜん関係なかったわ、言ってる通りだわ」
「強い人がチート使ったら流石に手がつけらんねーかもだけどな」
「真面目にやってる人はチートなんて使わないにゃ。生体認証でBANされたらアカウントの作り直しもできないんだから」
「EFOでBANされたら別ゲーで遊べばいい、一方的に楽しく荒らそうって連中だ。こっちも楽しく、一狩り行こうか」
リーダーさんが笑いすぎて目尻に涙を浮かべながら言う。
「ええと、でも勝負付く前にBANされちゃうんじゃないですか?」
「まー人力だからリアルタイムBANが来るかは微妙なラインなのと、ちょっとねー、佐々木さんに直接チーターとやり合いたいっすって連絡してみたんだけど」
「したんだ……」
「したんですか、そんな連絡……」
「正規ルートで連絡しちゃうと向こうも困ると思うから、佐々木さん個人に入れた」
「そういう話をしてるわけじゃないにゃ」
「でまあ返事来たんだけど」
「来たんだ……」
「不正ツールの使用についてご迷惑をおかけしております。故意に不正ツールを使用したプレイヤーは発見次第アカウントを強制停止しておりますが、現在すべてのプレイヤーの発見には至っておりません。発見に時間を要し、プレイヤーの皆様の対戦中にはアカウントの強制停止が実施できない場合もございます。プレイヤーの皆様には誠にご不便ご迷惑をおかけしております。早期解決に向け開発運営一同全力で取り組んでおりますため、解決まで今しばらくお待ち下さい。――だそうだ」
「…………うん」
「好きにしろってことですね」
「これは多分楽しみにしてますって意味だにゃ」
「佐々木さんって、ちょっとそういうとこあるよな」
「ということで、何故か俺達と当たったチーターは即時BANされないだろうから」
「ニャオ姉さんは、いいんですか?」
「いいにゃ、というかこれが解決しないとおちおちお昼寝もできないにゃ」
「そりゃ大変だ。ニャオ姉の平和なお昼寝のためにもさくっと倒さなきゃな」
全員が顔を見合わせて、同時に頷いた。
「じゃあ、行こう。リグムツリーヴィレッジ、女神の森へ」
※佐々木さん
エリシオンファンタジー広報(9-1.予選 Aグループ)




