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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十四章 夫婦の休日

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■-2.びっくり箱の転職

「まー話は大体聞いてんやけどな」


 ゲストでワークスペースへ入室したびっくり箱が、待遇一覧をスライドさせながら言う。

 こちらも彼の職務経歴書を眺めて、これ本当に引き抜けるのか?とちょっと首を傾げてしまう。


「芸能人のマネージャーはやった事あらへんで」

「ひとまずはドリアンの補佐――メールやメッセージのより分け業務になる。とにかく最近急激に数が増えて手が足りてない。それから企画の詳細確認や裏とり。あとは運転手だな。俺とロイドが別行動で外仕事の可能性が上がってて、運転出来る人がもう1人欲しい。それ以上の本格的なマネージャー業務についてはおいおい覚えてくれればいいよ。って言っても、だいたいできるんじゃないのか?()()()()殿」

「どうやろな……まあその辺はOJTでなんとかするわ。ドリアンのその辺の塩梅は信用しとる。リーダーは運転できるんよな?ロイドは?」

「免許は持ってるけど、目が日光に弱くて昼間は運転出来ない。あと、外仕事だと付き合いで酒飲む事が多いから、俺の移動にも結局運転手必須なんだよね」

「酒はなぁ、断りにくいんよなあ」


 びっくり箱が実感の籠ったため息を吐く。そうなんだよ、酒は断れない事も多くてなぁ。

 ロイドの免許は社会人向け夜間講習という裏技的なアレで取得したけど、あいつは昼間サングラスが必須なので日中は法律的な意味で運転させられない。混血も進んでるし、そこはさっさと法律直して欲しいんだけどな……。


 さて、本命見せるか。


「これが、AI判定をパス()()()()()メールの抜粋、らしい」

「見てええんか?」

「もちろん。個人情報は消してあるって。悪いけど俺は見てないから内容は分からない。当座のメイン業務はこれを弾いていく作業になる」


 中身は開かずにテキストを共有する。

 彼は上からじっくりと読んで行き……そしてくつくつと笑いだした。


「暇人か」

「あー、うん、多分そう……」

「リーダーはこれ系あかんか」

「あかんね、本当に苦手」

「なるほどなぁ……ちな、これ返信はいるんか?」

「いらない。もしもの時の法的措置用に取ってはおくけど、それだけ」

「なら余裕やわ」

「まじかよ」


 ええ、マジ……?

 ホントに同じ人類か……?


「これメインなら業務は平気やな。数は多いんやろうけど、まぁなんとかなるやろ。ああ、待遇面の確認なんやけどな」

「ん、何でもどうぞ」

「給料、最高やのうて最低が知りたいんやけど、初年はなんぼや?」

「え?」

「ん?」


 びっくり箱に送ったメールから添付ファイルを開く。

 あれ?給料上限とか書いてないよな?


「えーと……ああ、あってるあってる。それが初年年俸だよ。うちは1月12月で区切るから、4月入社だと月割で3ヶ月分減るけど」

「よろしくボス」

「即決かよ。え、お前今のとこのがさすがにこれより給料いいよな?大丈夫?」

「リーダーなら、これ系のメールに全部返信しろ言われたら年収なんぼでうける?」

「10桁もらってもやらねえ」

「そういうことや」

「……なるほど」


 業務内容は知らないけど、しんどそうだ。俺なら絶対にやってられない。秒速で病む。


「いや……返事しといてあれなんやけど、これ大丈夫なんか?40万規模のチャンネルが出す額やないで」

「合同会社サザンクロスのメイン収入は不動産だよ。まあでかい出費ではあるけど、大丈夫」

「は?」

「色々使って俺が個人で持ってた不動産のうち、収益率がいいやつを会社に売却してる。赤にしないように初期の頃に小細工した」

「マジか」

「まじまじ。その辺は正式に入ったら詳しく説明するわ」


 配信業については最悪収入がゼロでもなんとかなるように会社を作る時に色々組んだ。

 ロイドにはやりすぎだとちょい怒られたんだけどな。名前と金は使ってなんぼだろ。

 今は配信業も順調なので、経営についてはこれといって問題は無い。


「そこは誰が管理しとるんや?」

「窓口は俺と編集のハタさん。実際の運営は外に投げてる」

「俺にそこは期待されとるか?」

「してない。畑違いにも程がある」

「そか。それにしても、――従業員(おれ)が言うことやないけど、業務内容に対して高すぎるで。後から上げるほうが現実的ちゃうか?」

「カネの大半は口止め料だよ。ケチって良いところと悪いところは分かってるつもり」

「OK。あんじょうよろしゅう、ボス」

「いつも通り、リーダーでいいよ。リアルで一度会おう。正式な書類はその時に」


 差し出された手を握り返す。人柄については既に2年一緒にやっているから大丈夫だろう。特に口の硬さについてはギルド内の誰よりも信頼している。


「あいよ、ん、んん――――改めまして、これからどうぞよろしくお願いします、リーダー」

「ぶっ」


 いや急にそれはズルくね!?え、お前標準語喋れるの!?


「どうしました?」

「いや、ごめん、ふっ、あの、ダメだ笑っちゃうわ」

「なんやねん」

「うん、それでいいよ。客先だけ猫かぶってくれ」

「失礼なやっちゃなあ。ああ、俺今住んどんのは関東やけど、西に引っ越したほうがええか?運転手いるんなら近いほうがええやろ」

「あ、あー……実はな」

「おう」



「来年には、関東に引っ越すつもりなんだ」




ロイド「……"小"細工?」

ドリアン「なるほど、リーダーの中ではこのお金の動きは小さいんですね?」

中身を見たびっくり箱「えらいパワープレイかましとんな……繊細さの欠片もあらへん」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでて面白いです [一言] 追いついた記念書き込み
[一言] お調子者なのに唐突に改まられても笑っちゃいますよねw 色々と社会で揉まれてきて実力もあるならかっこいいよなあ それとスカポンタンは散々嫌がってるけど、経営者として辣腕を振るえてるのが凄いよ…
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