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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十四章 夫婦の休日

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14-4.毒アサシンと進路相談

「ねむ蝉さんって」

「おう」

「たまにとても格好良いですよね」

「たまに!?」

「たまにだにゃ」


 ニャオ姉さんを守るためなら受けられるんですか。そうですか。

 ええ、何この人かっこいい。


「いつもお調子者のくせに、たまにすごくかっこよくてずるいにゃ」

「え、今のもう一回言って!録画する!」

「いつもお調子者のくせに。」

「そこじゃな〜い!!!」


 クスクスと笑いがこぼれる。

 御夫婦で同じゲームするの、いいなあ。


「ニャオ姉さんは、今日はお時間大丈夫なんですか?」

「ん?ああ、うん、やっと落ち着いたからしばらくは少し暇な予定にゃ〜」

「それはよかったです。あの、もしよかったらなんですが、実はセージを作ったので、少し立ち回りを教えていただきたくて。ニャオ姉さんが上手だと聞いたので」

「わたしのやつバッファー賢者だから、アタック賢者の回しは分からないよ?」

「そのバッファーが知りたいんです。アタッカーとしては格下狩りにしか使わない予定なので」


 格下のモブを沢山狩って素材集めをする場合、一番楽に稼げるのはやはり射程の優秀な魔法職になる。

 サポートチームに懇願されてメイジを作って、喧々諤々の議論の末セージに転職した。

 パーティセージの動きとしてある程度バッファーの動きも知りたいなと思ったら、ロイドさんがギルドではニャオ姉さんが一番詳しいと言っていた。

 厳密にはロイドさんの知っている限りEFO内で一番上手なのはけっとCさんで、二番目はねころさんらしい。いえギルド外の方のお手を煩わせるほどではないんです。本当に。本当ですので。けっとCさん呼ぼうとしないでください。ねころさんの方が面識があっていいか?じゃないんです。違いますそうじゃないです。


「そういうことなら喜んで教えるにゃ〜!お着替えしてこよっか!」




「利き手側で持って、首の右下あたりにこう、そう。スキルを使うときは前に出して、そのあとまたそこに戻す」


 真っ先に杖の持ち方にダメ出しもらうとは思いませんでしたね?


「そうそう。そこが今のところ全部の杖で視界を一番塞がないにゃ。移動のときもその位置にすぐに戻せるように意識するにゃ。セージのバフスキルは大半が目視ロックオン式で、実はロックオン位置は頭じゃなくてお腹なの。ターゲットと杖が半分以上被ってるとスキルが不発するにゃ」


 ねむ蝉さんに的になってもらう。普通に顔が見えるように前に構えた状態だと、スキルチャージ後にエフェクトが霧散した。へえ、知らなかった。


「EFOのバフスキルは一部の例外を除いて、効果が強いほど時間が短いにゃ。初期スキルの長時間低ランクバフはMPに余裕のあるPvEだったら事前に打ってしまうのがおすすめにゃ。重めの高位バフが溜まったらサクッと上書きしちゃえばいいから」


 女神よ英雄を歌え(いちぶのれいがい)ですね、分かります。


「注意としては、敏捷が上がるバフは事前にかけていいか、どのタイミングでかけるか相談しておくべきね。突然移動速度が変わると結構転ぶのよ。セージにはないけど、ビショップの複合バフだとついでに敏捷が入ってることがあるから注意にゃ」


 ああ、それはリーダーさんが大会解説で言っていたな。覚えておかないと。


「セージの他にビショップが一緒にいる場合は、基本ビショップのバフの方が強いから、初期バフを入れたあとはバフは控えて攻撃に回ったほうが良いかもしれないにゃ。その辺は戦闘前に必ず相談してね。あとビショップがヒールを打ったらリジェネを打つようにしたほうがいいにゃ。回復ヘイトが分散してタンクが楽になるから」


 回復ヘイト、まりもさんのあれか。あれ、しんどかったからな……。どれだけ殴っても全然こっち向いてくれなくて、結局アルマジロ先生が全力奥義で持っていったから……。最大ヘイトがビショップなの本当に心臓に悪かった。

 後からグライドさんに聞いたら、ここまでヘイトが固定されるのはおかしいから、多分フィツィロが覚醒技にヘイトをめちゃめちゃ向けるギミックを持ってるって言ってましたね。気付いてたらこちらも覚醒技の空打ちとかしたのになあ……。


 基本の立ち回りから丁寧に教えてくれる。

 その後もいくつかお話を聞いて、セージのことはふんわりと分かった。上級ボスくらいならついていける……といいな。


「セリスちゃんがバッファーやってくれるなら安心にゃ~」

「ニャオ姉さんがいれば要らないとは思いますけどね」

「層が厚いのに越したことはないのにゃ。また急に忙しくなるかもしれないし」

「そっか……。大人って大変そうです」


 8月には法律上成人になるっていうのに、大人になるとかはさっぱり分からない。

 何がやりたいとかもよく分からないままぼんやりと学校に行っている。


「まー、わたしも高校生の頃はそんなもんだったにゃ。たった4年後の将来なのに、何もわからないし考えられなかったよ~」

「高2とか遊んでた記憶しかねー……」

「ねー君は遊び過ぎだったから受験があんなに大変だったのにゃ……」

「その節は大変お世話になりましたっ!」

「あの……お二人は大学の学部とかってどうやって決めましたか?」

「俺はロボコンやりたかったから工学部一択。実家から通える距離だと大学も一択だったんだよなあ」


 素頭より上の大学で受験超大変だった、とねむ蝉さんが頭を掻く。

 ロボコンかあ。やりたいことがあると、やっぱり迷いはなくていいなぁ。


「英語の歌が好きって理由でG大の国際文化学部に行ったにゃ」

「英語の歌が好きってだけで入れる大学じゃないですけど……」

「おねーさんこれでも頭良かったのでね~。セリスちゃんは大学どこいきたいの?」

「あー、大学は、エスカレーターの学校なので……ただ、学部を決めかねてて。一応学内順位的にはどこでも選べるんですが、どこに行こうかな、と」

「おおう、セリスちゃんも頭いいやつ。いや知ってたけど」

点数を上げる作業(べんきょう)自体は苦じゃないんですけど、その先がわからないんですよね……」


 学校の順位自体はそれなりだ。得意教科では1位もキープしている。

 ただ勉強をしても、のめり込むほどの熱量を持ったことがなくて、将来やりたいこととかはよくわからない。


「まずは医者になりたいかどうかかにゃ。それ以外は全然違う学部に行っても最悪大学院で取り返しが効くよ。学位が必要ないならサークルって手もあるし。一般的には理転より文転の方がしやすいから、本当にわからないなら理系学部がおすすめね」

「なるほど……」


 医者……そっか、6年ですものね。


「セリスちゃんはさ」


 ねむ蝉さんが言う。


「自分で配信業はやらないの?」




「…………………はいしんぎょう」

「丁度超人気出てるし。個人でチャンネル立ち上げたらすぐ収益化するんじゃね?」

「まー、するだろうにゃあ」

「今サザンクロスのお手伝い枠だからピンとこないかもしれないけど、一般的には5万人くらい登録あれば専業で食ってけるよ?トラキチが確かそんくらいだろ?」

「え……あ、え、すみません、全く考えたこともなかったです」


 ぽかんとしてしまう。

 いや、いやいや、無理です。無理。うん、無理。


「まあ、知らない職業って案外多いし、職業図鑑とか求人とか読んでみるのもありなんじゃね?ここ5年くらいでVR関連事業なんかは超増えてるし」

「そう……ですね。あの、急に色々聞いてしまってすみません、ありがとうございます」

「無駄に年だけ重ねてるおっさんだけど、聞くだけならいつでもどうぞ~」


 ねむ蝉さんは全然おっさんって感じじゃないんですけど、ギルドの皆さんも、何故か自分のことをおっさんって言うんですよね。


「ま、内部進学ならしばらくは余裕あるんだろうし、ゆっくり悩むにゃ。悩む時間も遠回りも、若い子の特権にゃ」

「はい、あの、ありがとうございます」


 ニャオ姉さんが頭をふわりと撫でてくる。

 その後はギルドの方のおもしろ話を伺って、程々の時間で解散となった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最初この章読み始めたとき、ねむ蝉さんの大会の凡ミスの原因かなって思ってたんですよ、そしたらこんな惚気を聞かされちゃってぇ。まあ、このふたりはまだ惚気って自覚してそうな分まだいいですね(そっと…
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