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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十四章 夫婦の休日

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14-3.毒アサシンとタンクの適性

「このゆびとまれ スローインダガー!」


 ボスのバンドユールの瘴気が、ねむ蝉さんの挑発を受けて彼を追い回す。

 影のような腕が爪の形になり引き裂こうとして――彼は軽やかな動きで爪から逃げ回る。


 うーん、回避はできている。回避はできているけど、アレはだめだ。

 なるほど避けアサを見てほしいってそういうことか……。

 ニャオ姉さんと並んで状況を見て、うーん、と首をひねる。

 ねむ蝉さんほどの人が分かっていないとは思えない。ということは現実的な解決案がほしいってことだろう。けど、これはなあ……。


 ひとまず状況は分かった。一旦ボスは終わらせてしまおう。


「行きます」

「ん、ブレッシング」


 ニャオ姉さんが即座に上級バフを発動する。

 剣を握ってボスに突っ込む。


「このゆびとまれ 一閃 烈火」


 ヘイトが移る。

 敵は中の大サイズ不定形、腕が長くてリーチが結構ある。

 ムチのようにしなる腕をジャストガードで弾いて、背後にねむ蝉さんのクリティカルが刺さった。






「まあ、見てもらった通りなんだけど」


 ボスを撃破して、ねむ蝉さんが緑の髪をくしゃりと掻いた。


「そうですねえ、ソロ戦なら良いんですが、パーティタンクとしてはダメですね」

「そーだよねー……」


 タンクが逃げ回ってしまうと敵が移動してしまうので、アタッカーが背後を取れない。

 ラフェルのような中央固定の大型ボスならなんとかなることもあるけれど、移動するタイプのボスや取り巻きをたくさん召喚するタイプのボスではだめだ。足の遅めのブレイダーなんかはそもそも追いつけなくなってしまったり、あるいはスキルをスカしてしまったりする。

 ギリギリで真横に避けたりして、敵を移動させないのが大切になる。これが結構難しい。


「あの、申し上げて良いのか……」

「言って言って」

「多分、ねむ蝉さんは根本的にタンク適性がないです」

「ぐふっ」

「グッサリいったにゃwwww」

「まあ、その、タンクってできるできないがはっきり分かれるらしいので……」

「それにゃあ」


 がっくり項垂れたねむ蝉さんをなんとかフォローしようと声をかける。

 ニャオ姉さんはケタケタと笑いながらその頭をワシャワシャと撫でた。


「オレさー」

「はい」

「CCOのVR移植第一陣で、もう6年VRアクションやってんのよ」

「第一陣って、世界に1万人って噂のアレですか?」

「うん、そう。EFOに移ってからは純粋に()()()()()()プレイできてたからさ」

「……はい」

「そろそろいけるかなーって、思ったんだけどねえ」

「うーん……でも、怖い(・・)のは、どうしようもないものですから」



 VRアクションゲームで一番の不人気ポジションは何かと言えば、それはもうぶっちぎりでタンクになる。

 純粋に、怖いのだ。

 目の前に迫る爪が。牙が。剣が。矢が。拳が。

 爪に引き裂かれようが、牙が突き刺さろうが死なない。何なら設定によっては痛みもない。味方がシールドを張ってくれるならシステム的なダメージだってない。

 それがなんだ(・・・・・・)。怖いものは怖い。拳が目の前に迫ったら、寸止めされると知っていても体が強張ったり目を閉じてしまったりする。

 タンク適性というのは、それでも目を閉じないでいられる、固まらずに適切な動きができるということだ。

 ある程度は訓練でなんとかなる、というのはグライドさんの言葉だ。ゲームだと思い込むといいとか、あるいは何かしら格闘技を経験するといいとか、一般にはそう言われている。

 それでも、()()()()()()()人が一定数いる。完全没入VRゲームでの受け職(タンク)というのは、そういうジョブだ。


「グライドさん曰く、大人になればなるほど矯正しにくいそうなので……」

「それはオレも言われた……」

「ちなみにセリスちゃんはスポーツとか何かやってたのかにゃ?」

「いえ、私は特には……最初は怖くて逃げ回っていて、そのうち回避特化装備に変えて、爪があたってもミス表示だけで痛みが無いのを何回か経験して、それでやっていたら何となく慣れた感じでしょうか」

「これが若さか~」

「染み付いた恐怖心は素人だけじゃどうにもならないってグライドもずっと言ってるにゃ」

「それでもやりたかったんだもん……」


 ねむ蝉さんがしおしおと小さくなる。


「対人戦とか、それか魔法くらい現実味がなければ怖くないんだけどなあ…爪とか牙とかどーもだめっぽいんだよね……」

「ねむ蝉さんは敵が動いた瞬間に反応していて避け過ぎてしまっているので、避けタンクやるのは、かなり訓練しないと厳しいと思います」

「はあああああああやっぱそーかあ~~~」

「お役に立てなくてすみません」

「いや、言ってもらって良かった。やっぱ諦めるわ」

「アサシンはどうしますか?アタッカーとしての動きはとても良かったので、そのまま使ってもいいと思いますが」

「んー、そうね。丁度今持ってなかったから、普通にクリアサにしとくわ。双短剣ツリー取り直す」

「ねー君はソードマンも双剣ツリーだから、二刀流2枚持ちにゃ」

「はっはっは」


 うーん、このわざとらしい笑いよ。

 私、先日ソードマンのレベリングお手伝いしましたね……。


「ソードマンは追加2枚作ったから、二刀流4枚持ちです」

「ちょっとそこに座りなさい」

「必要だったの!ノーマルとアタック特化と敏捷特化が必要なの!」

「必要ないにゃ!絶対そんなに必要ないにゃ!」

「いるもん!」


 やいのやいのと話し始めた二人を見て、ふと思う。


「そういえば」

「うん?」

「ブレイダーは、できるんですね?」


 ニャオ姉さんとのペア用ということは、攻撃型タンクのはずだ。

 ブレイダーはタンク系の中ではガード可能距離が長いので、多少マシなんだろうか。


「そりゃね?」

「そう、なんですか?」



「ニャオ姉が後ろにいるならできるよ。当たり前じゃん」



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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のセリフがサラッと言えるからお似合いなんだろうな……_(:3」∠)_
[一言] ねむ蝉さん、最高ーーーー!!! 最後の一言、きゃーーーーーー!!! って声出ました。 最高ーーーーー!!!! おやすみ期間の時、お待ちしていますねとコメントしようと思っていたら、すでに再開…
[一言] 当たり前なんだ
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