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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十三章 バレンタインのメッセージ

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閑話 ねころの女難

ep.106 閑話 結婚指輪の一騒動 の直後の話

「で、お見合いって?」


 渡されたウィスキーを舐める。相変わらずおるの酒は趣味が良い。


「いや……いい歳で彼女の一人もいないのか、いい人紹介しようかっていう、まあよくある田舎のおせっかいっすよ」

「あー、27は平均初婚年齢にかすってもいねーんだけどな。未だにそういうのはあるよな」


 まああの初婚年齢は、27歳程度と35歳以上で2極化しているらしいので、実は結婚適齢期ではある。絶対に言わないけど。


「俺、家には配信のこと言ってないんで、年収もちょい心配されてんスよね」

「相変わらず黙ってんのか、いや納税さえしてれば後は好きにしろつったのは俺だけど」


 仕事はフリーのプログラマーで、「友人の配信の手伝いも、小遣い稼ぎ程度にしている」と伝えている。

 小遣い(七桁後半円、もはや主収入)であることは言っておらず、プログラマーの仕事としては平均年収に全く届いていないことが、両親や親戚の心配に拍車をかけている。

 かといってあの絶妙にミーハーな母に知られるのはごめんだ。何が起こるか分かったものではない。

 一昔前のように動画配信者なんてと言われることはないけれど、芸能人のように扱われたくもないのである。

 おるの動画でも、一度も顔は出していない。


「配信のこと言ってないんで、見合い受けてもそういうのに理解のあるお嬢さんが来るわけじゃないから……どうしたもんかなと」

「彼女作れば?」

「これだから配信でリアル顔が出せるイケメン様はよおおおおおおおおおお」


 フツメン(強弁)に死ぬほど高いハードル出しやがってころすぞ。次のボスでわざと回復ミスってやろうか。


「いっそ配信でねころが彼女募集中~って言ってみる?」

「ぜってえあんた狙いの女が群がるじゃん。ふざけんなよ俺を踏み台にするな」

「お前のその自己肯定感の低さは何なのよ……別に顔悪いってほどじゃないじゃん、喋りも面白いし。空気も読めるし」

「…………告白ゲーム」

「お?」

「告白されて舞い上がってたら友達狙いで、無事二ヶ月後に踏み台にされてフラレる」

「えーと?」

「告白して断られて、裏でブサメンに告られたないわーって女子間でめちゃめちゃ共有されてた」

「あの、ねころ?」

「付き合っていた子には別の男がいて、こっちは完全に財布扱い」

「もういい、もういいから!聞いた俺が悪かった!」

「金の無心をされることが増えたと思ったらホストに貢いでた」

「ちょっとまてその言い方は最近だろ!?いつだよ!?」

「…………一昨年」

「おまっそういうのは言えよ!?」

「やだよ……」


 空になったグラスにおるが酒を継ぎ足す。

 なんだってそんな惨めな話を親友とも言える相方に言わねばならないのか。

 自己肯定感?はー?何の話っすかねぇ。


「めっちゃめちゃ女運ねえのなお前……」

「そういうもんじゃないんスか?」

「いやーここまではちょっと聞かないね。張り合えるのは別の意味でだけど、リーダーくらいじゃねえか?」

「彼のもなかなかだよね」


 リーダーは一度だけ、恋愛シミュレーションを配信したことがある。

 攻略キャラクターにご令嬢キャラがいて、その子との会話パートになったらリーダーが段々と感情が抜け落ちた真顔になっていき、会話パート終了後に暗い暗い声音で金のある家に生まれて、家を継がない予定の女が何をしてきたのか(・・・・・・)という話を滔々と語り始め――ロイドの判断で配信が即時終了し、アーカイブは非公開となった。

 後日ロイドに聞いたところによると「もう3件は似た話をしかねなかった」と言っていたので、なかなか壮絶な少年時代を過ごしているなとちょっと引いた記憶がある。


「ちなみにお前の好みってどんなよ」

「普通の子」

「いやそうじゃなくて。背は低いほうがいいんだろ?」

「低いほうが好きだけど、まあそこまで拘りはないかな。付き合ったら気にならない気がする」

「ああそうなんだ」

「小さい女性があんまり多くないことくらいは分かってるよ」


 女性の方が男よりも偏差が小さいのであまり身長にばらつきがない、ということは知識としても実感としても知っている。

 俺の身長が166で男の中では低いので、小さいほうがコンプレックスが刺激されないっていうだけだ。大半の女性は俺より背が低いし、多分それほど気にならなくなるとは思う。

 ヒールは履かないでほしいとは、ちょっとだけ思っている。


「家庭的な子だと嬉しいけど、別に俺も一通り家事はできるし、必須ではないかな。趣味の金は俺も結構使うけど、あんまり金遣いが荒いのはちょっと嫌、そのへんの金銭感覚が近いと嬉しい。あとは……彼氏に黙ってホストに行かないでほしい」

「最後のは普通は言わなくてもそうなんだよ」

「そう……なのかな……」


 よくわからない。付き合ってた(と俺が思っていた)女の子たち、みんな俺じゃない男のこと見てたし。

 思い出して、またグラスを煽った。


「お前、俺のおすすめだったら会うか?」

「おすすめって言い方どうなのよ」

「仕事ばっかで出会いがねーけど、結婚はしたいなーって言ってる女友達ならちょいちょい心当たりがいる。口悪かったりするけど、基本的には普通」


 しばらく逡巡する。


「いや……いい」

「いいの?」

「……もしもがあった時、おるの事が信頼出来なくなるのが嫌」

「そんときゃ俺の見る目もなかったって事で一緒に酒飲めばいいんじゃねえの?」

「嫌だよ、そんな不味そうな酒」

「……それもそうか」


 我ながら少しばかり重症だなぁとは思う。

 3杯目のウィスキーを飲み干す。ああほら、酒が不味くなる。


「そういうおるはどーなのさ、彼女とか」

「んー……気になる子はいんだけど、ちょっと接点が作りにくい」

「え、何それ誰?」

「……セブンスのぽいみんさん」


 ぽいみんさんは気遣い上手でおしゃれが好きな女性だ。アバターガチャでよく爆死している、少しおちゃめなところがある可愛らしい人だと思う。

 去年社会人になったと言っていたから、23歳とかそのへんだったはず。

 しかして俺は少々遠い目になった。


「…………おる、言いにくいんだけど」

「ん、なに?」

「あの人は、ロックンの彼女」


 おるはしばらくフリーズした後、グラスに並々と酒を注いだ。

おるくん:おるのげーむちゃんねる(登録者数100万人)配信主。大きめの配信者事務所所属。

普段は青紫の髪のヴァーチャルアバターで配信を行っており、メンバー限定配信でのみ顔を出している。

元々個人勢時代に使用していたトラッカーの精度が悪く、顔の前に大きめの物体(酒缶)があるとアバター挙動が悪くなるため、酒飲み配信をするためにメンバー限定で顔出し酒飲み雑談配信をしていた。事務所所属の際に機器が一新されトラッキング精度も良くなったので顔出しの必要はなくなったのだけど、リアル顔酒飲み配信はそれはそれで人気があるので続けている。


ねころ:おるくんの大学同期

eスポーツクラブ所属だったが「ホントは勝ち負け拘るよりも実況とかのが好きなんすよね。動画編集とかはちょっと興味あります」と言ってしまったため、当時チャンネル立ち上げ直後だったおるくんに連れ去られた。

歌ってみた企画からは逃げ続けている。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで酷いのもそう聞かないレベルで壮絶な_(:3」∠)_オチはオチでありがちだけどw ただ良縁に巻き込まれて人気を勝ち得てるってだけでも十分凄いのになあw
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