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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十三章 バレンタインのメッセージ

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13-4.女三人寄れば

「なんっっっっっっっっだよそれ!!!!!」

「お父様頭おかしいんですか!?そのタイミングで言います普通!?!?」

「それは、まあ、ちょっと思いますし結構言いました……」

「ってかリーダーのとこもさあ!なに社長秘書って!キモっ!?」

「リーダーさんもリーダーさんです!そこのフォローなしとか信じられませんっ!!!!」

「い、いえ、あの、謝罪の連絡とお詫びっぽいお菓子は頂いていて……」

「それは人としての常識です!」

「なかったことにしましょうって意図だと思いますから、あまり話題にするのも」

「それでセリスが悩んでたら意味ないでしょう!?」

「人のことなんだと思ってんだ!チャリオットで轢き殺すぞ!!!!」

「あ、あのお二人共、おちついて……」

「落ち着いてられるか!言うにことかいてギルド入るの辞めるかって!?アホか!?ねえこれPK許される!?!?」

「許されます!」

「許されないです落ち着いて下さい!」


 大爆発をしている二人をなんとか椅子に座らせる。

 ギルド内だし、ウィスパーモードだし、誰かに聞かれる心配はないとはいえ、ちょっとトーンを落としてほしい。


「――――セリスさ」

「え、っと、はい」

「紹介動画で、あたしとグライド持ち上げまくってたの、わざと?」


 うーん、それを言われると結構困ってしまう。

 ニンカさんとグライドさんのカップルを見ているのが大好きなのは事実で、言ったことに嘘は1つもない。

 ただ、わざとかと聞かれると、違うとも言いにくい。

 ニンカさんが、困ったように微笑ったまま答えない私の頬を、むにっと掴んだ。


「自滅特攻を勝手にすんな!」

「いひゃいれすにんはさん」

「セリス、SNSではすっかりグラニン強火推しの腐女子扱いですよ?」

「いてて……あーまあ、前者は事実ですし、後者は意識してそうなるようにしたので、いいんですが」

「良くないですよぉ」

「前者は事実なのかよ……」

「事実ですよ?お二人のことすごく応援してますし惚気話とか一生聞いていたいです」

「のろけてねえ!」

「えっ?」

「えっ?」

「何で二人ともそんな反応なんだよっ!!!」


 そうか。ニンカさんの中ではいつものはまだ惚気ではないのか。


「顔がうっせえ」

「それ久々に聞きました」

「いやこれは顔がにやけますねえ」

「今はあたしのことはいいんだよ!え、その状態でどうしてリーダー好きって話になんの?」

「いや、好きっていうか、その、それもよくわからないというか……」

「なんじゃそりゃ」

「うーん……いつもと違うすごく硬い表情で、結構強めにそんな事実はありません、って言われたのが、結構ショックで」

「ほう」

「後でゆっくり考えてたんですが、例えばロイドさんに同じことを言われても、そこまでショックじゃなかったかな、と気付いて」

「へえ」

「それは、こう、好意として、もしかして別枠なのかな?と……あの、人のことを恋愛的な意味で好きになったことがなくて、正直そこはよくわからないというか……」

「初恋か~」

「初々しいなあ~」


 二人がほとんど同時に感嘆の声を漏らす。

 初恋……やっぱり初恋なんだろうか……。


「え、アネシア初恋どんなだった?」

「ふつーに小学校のクラスメイトでしたねえ。スポーツのできる子でしたよ。まあクラスの女王様とくっついてましたけど。ニンカさんは?」

「あー……養護学校の、先生」

「なるほど」


 この二人、なんか打ち解けるの妙に早くないだろうか……え、普通こんな感じだったりするの?


「んー、そうですね、セリス」

「はい」

「リーダーさんが明日突然重大発表があります!って言い出して」

「ん?えと、はい」

「隠してたんだけど実は彼女いて、今度リアル結婚します!って言ったとするじゃないですか」

「……はい」

「その時に、心からおめでとうございますって言えますか?」


 言える、かな……。きっと口では言うはずだ。笑顔も、作れるとは思う。


「友達だったら言えるじゃないですか。友達に恋人ができて、結婚しますって、おめでたいですし。そうですねえ、例えばロイドさんが今度結婚することになったって言ったらどうですか?」

「それは……驚くとは思いますが、お祝いすると思います」

「まあめっちゃ驚くよね。ロイドさん恋人とか本当に興味なさそうだし」


 ニンカさんの言葉に頷いてしまう。すごく格好いい方だったから、興味があると言った瞬間に人が群がって大変そうだなと思う。


「じゃあ、うーん……グライドさんはだめだな……オルタナティブの、おるさんだったら?」

「え……お、おめでとうございます?私まで話が来るかはわかりませんが……?」

「その二人は即答できるのに、リーダーさんは即答できないんだ?」

「…………あの、不躾を承知で言うのですが」

「うん」

「お相手がロイドさんだったら、素直に祝福すると思います」

「今そういう話してないと思うんですけど?」

「セリスそういうところだよ?ってかそれ素だったの?」

「ええと、そもそも紹介動画で、嘘は1つもついてないですけど…………()()()()()()()()()()()()()()()()

「――――そっか。じゃ、そういうことだ」


 ああ、うん、本当に。そういうことだ。


「恋って、こんなに苦しいんですね」


 胸のあたりを握りつぶす。

 自覚したからって、叶うわけでもないのに。


「んー、ねえそれさあ」

「えっと、はい?」

「別にリーダーは嫌がってなくない?」

「…………はい?」

「え、だって、"セリスのお父さんに"不快な思いをさせた、"セリスに"不快な思いをさせるって言ってるだけで、別に"リーダーが"嫌とか困るとか言ってないじゃん。あの人そのへんはちゃんと言うよ?」

「………………………あれ?そうですね?セリス、リーダーさんそういうこと言ってました?」

「えっと、たぶん、いってない、と、思います?」


 いや思ってても流石にあの場では言えないんじゃないですかね……?


「おや?これは意外と脈があるのでは?」

「いえ、あの、一度それとなく言ってみたのですが」

「え!?なんて!?」

「あ、えっと、硬い表情で言われたことがショックだったとか、その、ギルド入るの辞めるかって言われたことが苦しかったとか、そういうことは、ちょっとごまかしつつですけど、一応……」

「結構ぶっこんでるwwwリーダーの反応は?」

「勘違いされるから、そういうことは言わないように、だそうです」

「勘違いじゃねええええええええええ」

「えええそれ鈍感とかそういうレベルの話です?」

「えと、なので、そういう対象として、多分見られてないかな……と……リーダーさんにしか言わないですとお伝えしたんですが、呆れられてしまって……」

「クソ鈍感色男~~~~~~!」

「過剰鈍感系はアニメの中だけで十分なんですけど~~~」


 ちょっと言い過ぎたかなと思っていたんだけど、やっぱりちょっと言い過ぎだったな。普通はアウトらしい。


「えーもうバレンタイン送りましょうよ!まだギリ当日間に合うでしょ!サザンクロスって私書箱公開されてますよね?」

「あーアネシアそれはだめー。リーダーのとこすっごい量来るから、毎年ギルメンに配ってる」

「うへえ、有名配信者め……」

「あの……あとそこまで勇気はないと言うか……」

「そこまで言ってるならもう今さらでしょ」

「実質告白じゃないですか恋愛センサー故障男が気づかなかっただけで」

「それな。セリスのOK基準がわからん」

「あの、あのときは本当に、なんか、言えてしまっただけでっ、今もう一回言ってこいって言われたらできないです……」


 恋かどうかもわからないって言いながらアレは、今にして思うと我ながらどうかしてましたので……。自覚した今もう一回言ってこいと言われたらできないです……。


「うーん、とりあえずリーダーにじりじりアタックはしていきたいよね」

「いえ、あの、しなくていいです……」

「そうですねえ。ロイドさんに通して外堀を埋めてしまうという手もありますが」

「あの、聞いていただいて」

「いやー、ロイドさんはなぁ。リーダーのリアル関連地雷だから。下手すると追い出される。あの人はやる」

「あの、言わないです、聞いて下さい」

「うーんそっか……ロイドさんは過保護な保護者的な感じですかね。どうするのがいいのかな……」

「えっと、私の話を、聞いていただくことって……」

「ん、んー、どうすっかな。とりあえずあの鈍感クソ男に意識させたいんだけど――――ああ、分かった」

「お、なにか思いつきました?」

「あの……えっと……」


「バレンタインチョコを送ろう!」


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― 新着の感想 ―
[一言] いいぞもっとやれもっとやれ!w マジで突撃かまして然るべき事案だったしねえw ロイドは対面時「いいんじゃね?」言うてるし、3人+保護者枠+野次馬勢で絶対に勝ち目無くなるよなあ
[良い点] ここだけ青春の空気が流れておるww
[良い点] 姦しいなぁ
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