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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十二章 トップレンジャーとストーリー

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12-5.トップレンジャーとフィツィロ

「配信待機、5分。準備してー」


 リーダーがいつも通りの配信者口調になってカメラアドオンを起動する。自動カメラが起動して周囲を飛んだ。


「配信開始、待機画面入った」

「つぶやいたー入れたよ~」

「コメントビューアはどうする?」

「戦闘開始前までオンで、戦闘中は流石に切る」

「了解。平日こんな時間だが同接結構来たな」

「暇人ばっかか?まあいいや、画面OK?っし、みんないい?」

「大丈夫です」

「いけるよ」

「いけます」

「OKっすー」

「よし、カメラ出して。――――画面出てるー?声入ってるー?OK?じゃあやっていこっか!おはようございますカッコキョウベン、サザンクロスのリーダーです!」

「サザンクロスのロイドだ。こんにちは」

「さて、話題のフィツィロ、倒しに行こっか!あっはは、コメント超荒れてるwごめん俺も本当に出現するかはわからんのよ。出なかったら笑って許してw」

「編成だが、今回は諸事情あって特殊編成になる。ソードマンリーダー、ブラックマジシャンロイド、レンジャーねむねむ蝉、毒アサシンセリス、そして」

「どうもこんにちは、ですぺなるてぃのギルドリーダー、アルマジロ先生です!」

「こんにちは、ですぺなるてぃヒーラーの、まりもです」

「はい!ですぺなるてぃからお二人にお越し頂いてます~!」

「メインタンクは避けタンクセリス、先生にはヘイト管理兼ヒーラー護衛のサブタンクをやってもらう」

「ちょっとうちのヒーラーが今時間不在なんで、まりもさんにも来てもらいました!」

「さて、長々話すのもなんだしな。行こう」


「鬼が出るか、蛇が出るか」

「まあ間違いなく蛇は出るんですけどね」

「そうだけどさwww――じゃ、スタート。ごめん戦闘中はコメント見れない、後で拾うからね~」


 ボスエリアに進んでいく。

 木々の動きが水を打ったように静かになっていき、周囲の霧が晴れて、広場の中央に蛇の尻尾を持つうさぎが現れた。

 表示名はソマニのままだ。


「行きます」


 セリスが駆け出す。

 うさぎは動かない。このボスは基本的に蛇の尻尾が攻撃してくる。


 波打つように叩きつけられた尻尾を、彼女が掴み取って。




 ――――うさぎの体から、蛇の本体が引き抜かれた。





 世界が割れるような揺れ。

 空が暗く暗く沈んでいく。

 蛇を引き抜かれたうさぎは数度周囲を見渡して、どこかへ逃げていった。


 引き抜かれた蛇がのたうつ。

 セリスがバックダッシュで戻ってきて、こちらに合流した。


「正解でした」

「さっすが」

「チャージが止まった、演出中は攻撃不可のようだ」

「あのまま蛇八つ裂きにするのが一番早いんだけどな~!」

「変身中は攻撃しないってお約束でしょ!」


 蛇がみるみる膨れ上がっていく。

 腹が大きく膨れて、足が生え、でかいトカゲのようになっていく。


「足生えちゃったよ」

「これぞまさしく蛇足」


『またも邪魔をしおって‥‥』


 くぐもった声が聞こえる。


『大人しく死んでおけばよかったものを‥‥』


 ボスの目がぎょろりとこちらを睨んだ。


『あの方の手を煩わせることはない‥‥いま一度、滅びをくれてやろう』


 ずんぐりとした巨大トカゲのような何かが大きく咆哮を上げ――――頭上に、「月兎を喰らう フィツィロ」の文字と共に、HPバーが表示された。


「イカサマダイス 敵意の塊。行ってきます!」


 サイコロを2つ頭に乗せたセリスが反時計回りに走り出す。敵意の塊に反応してトカゲ――フィツィロの首がセリスを追いかける。

 オレはそれをやや追いかけるように正面やや斜めくらいを位置どる。

 リーダー達メイン攻撃組は時計回りに。ですぺな二人はその場で一歩だけ下がった。


 それじゃあまずはご挨拶!


「ホーミングショット」


 目玉をぶち抜け!



 ノックバックや挙動停止がない。流石に目玉が違うなら頭弱点ではなさそう。

 さーて、弱点探しの旅が始まるぜ。弱点看破は本来レンジャーの専売っすからね!


「雨弓 ジャンプブースト」


 ぎりりと引き絞った弓弦から甲高い音を立てて矢が離れる。矢が空の高い位置で分裂し、火力は高くないけど、広い範囲に文字通り雨のように矢が降り注ぐ。

 その矢の雨の中を逆流するように飛び上がる。上空からボスの体に当たったダメージを広く捉えていく。


 4 6 1 6 5 6 2 4 8 1 

 8 2 8 5 4 6 5 8 3 

 4 3 3 4 17 14 7 4 6 2

 8 1 5 4 4 6 8 1 6


 みつけた


「背中の斑点、小さいやつ!」

「ナイス!」


 即座にリーダーが反応して尻尾から背中に飛び乗った。

 あの動きはまじでどうなってんの?あれ絶対足場判定ないだろ?


「ジャンプブースト ショット ブラスターアロー」


 もう一度飛び上がり、初期技の矢を落とす。可能な限り正確に撃った矢がさっき見つけた部位に突き刺さる。

 目印完了。いつの間にかついたアタックアップⅢバフを横目に確認。吹っ飛べ、ブラスターアロー!


 リーダーが背中でスキルを発動する。ぴったりのタイミングで攻撃バフアイコンがきらめく。

 ロイドのバレットが12発、どうやって見ているのかぴたりとフィツィロの背中に降っていった。


 フィツィロが体を大きく振った。

 長い尻尾がロイドの体にぶち当たる。


「マジックシールド」

「ハイプロテクション!」

「ディフレクション」


 シールドとプロテクションに阻まれてロイドのダメージはゼロ。

 余波の砂塵を先生が攻撃を逸らすスキルで払いのける。さっきからセリス宛の攻撃の余波でダメージ判定のある風圧が地味にHPを削ってくるんだけど、まりもさんのHPは満タンだ。全部ガードしてるらしい。すげえ。

 真後ろは危険そうだと判断したらしいロイドが少し移動を始めた。


「このゆびとまれ スローインダガー」


 セリスの一般挑発スキル(このゆびとまれ)からの挑発攻撃タウントが入る。


「ホーミングショット スウィフトシュート」


 こちらはこちらで間断なくスキルを打ち続ける。

 ちらりと彼女を見れば、両前足の爪を器用に避け続けている。

 多分フィツィロ自身をあまり移動させないために、結構ギリギリの位置で避けている。とんでもねえ。マジかよ。


 チリリと耳の裏あたりが痛んだ。

 直感スキルのシステムアシストだ。


「なんか来る!」


 リーダーが即座に背中から飛び降りた。

 ほとんど同時にフィツィロの背中が隆起していびつなコウモリの羽の、骨のようなものが生え始める。

 ごふり、ごふりと嫌な息が聞こえる。

 そしてフィツィロはにたりと嗤って、大きく息を吸い込んだ。


 暗闇があいつの口に吸い込まれるように蠢いている。

 強化演出?闇を食うのか?


「まりも」

「はい」


 背後から二人の会話が聞こえる。


「月明かりは持ってきていたかな?」

「――――暗闇を導け 月明かり(ルーメン)


 疑問を一切挟まずに即座に発動したアコライトの便利スキル、月明かりが、這い寄ってくる暗闇の中に輝いた。


 効果は覿面だった。

 フィツィロが耳をつんざく強烈な悲鳴を上げる。音が衝撃波になってオレの体が吹き飛んだ。

 翼にメキメキと薄い岩のような被膜が張られていく。


『おのれ』


 くぐもった声が響く。


『おのれおのれおのれおのれおのれ』


 足の地団駄(スタンプ)に合わせ、衝撃波が地面を走る。

 それを1つ1つジャンプで避けていく。

 先生が大剣の一薙ぎで衝撃相殺してんの地味にかっこいい。オレもやりたい。


 フィツィロの顔がぐいと上を向き、炎のブレスが周囲を焼き払う。


 ――――あ、これ第二形態完全に飛ばしたわ。


 そんなことを思いながら一応ガード姿勢。これは死んだかも。


「マジックシールド」

「ホーリーヴェール」


 ロイドのシールドとまりもさんの全体ガードが発動して、ギリ耐えた!


女神の息吹(プネウマ)


 ビショップの覚醒、パーティ完全回復が発動する。


 ――――助っ人に覚醒(DP)使わせちった。あとで謝っとかないと。


 ぎょろりとフィツィロの目がまりもさんを捉える。

 全体回復によるヘイト貫通だ。


「このゆびとまれ ソニックダガー」


 セリスが挑発スキルを使うけど、ぜんっぜん反応しねえ。女神の息吹ヘイト稼ぎ過ぎでは!?

 こりゃヘイト一旦分散させるしかねえな。


「このゆびとまれ ブラスターアロー ジョイントショット ジャンプブースト 撃ち落とし!」


 おいこらちょっとくらいこっち向け!


「まりも」

「はい」

「私が死んだら、ロイドの方へ。あっちのほうが安全だ」

「分かりました」


 完璧に全て受けきっていた先生が、構えを変える。


「虚ろの夢から醒めよ グルートスエッジ」


 えっ、武器覚醒(それ)はさすがにやりすぎっ!?


我が前に敵はなし(ブレードロード)


 ちょい!DP!それ全消費のやつ!?!?


「奥義 羅刹大旋風」


 ド派手なエフェクトを纏った大剣が振り下ろされ、旋風がフィツィロを切り裂く。

 武器覚醒の反動で、大剣にヒビが入った。


 経過時間は、今多分6分。武器覚醒後は5分で武器が大破するから……ボスはだいたい10分一区切りだから、使うなら確かに今か。第4形態があるなら流石にこの後インターバルが入るから武器入れ替えできる。いける。いけ。


「眼を啓け 蒼天の飛弓」

「目醒めよ オートクレール」

「夢に終わりを ガーブスの杖」


 こういう時、全員が同時に同じことを考えてると、ちょっと笑っちゃうんだよな。

 口角が上がるのが抑えられない。こういうの、大好きだ。


「秘弓」「秘剣」「秘術」


 敵の最大ヘイトは先生。チャージ急げ、まじで急げ、先生が落ちちゃう。


天を穿つ一矢(あめのははや)」「光雷一閃」「深淵の氷河に沈め(アビス・ゼロ)


 3つの奥義(ULT)が飛ぶ。

 目がちらつくほどの派手なエフェクトと爆発。そしてフィツィロの咆哮が響く。


 ――――HP、残った?マジ?これで落ちねえの?


「秘刀」


 ここのところ聞くようになった、よく通る声が響く。


「桜花狂乱」



 花吹雪のエフェクトが舞って、フィツィロの頭上にあったHPバーが、吹き飛んだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] ねむねむさんもちゃんとサザンクロスの一員なんだなぁーとニコニコしました。 目がいい! 数字がいくつも出てきた時は、目がぎゅっとなりました。 あれを即座に判断して、当たった場所を特定する???…
[一言] これはかっこいいwそしてねむ蝉さん本当にゲーム楽しんでるなw それに唐突に配信始まった新ボス初見挑戦でこんな見せプ決められたら、視聴者とですぺな勢( ゜д゜)ってなってそうw
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