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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十一章 トップファイターの呼び出し

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11-7.感想戦をしよう

「セリスちゃーん!大丈夫だったにゃ!?」


 ギルドに戻ると、試合には来ないでいただいた面々が談話室で待ち構えていた。ニャオニャオさん、ねむねむ蝉さん、ぽんすけさん、ボタニカさん、まっしろおもちさん、えーと、奥の方たちの名前が読めない。そして相変わらず名前全然覚えられない……。

 ニャオニャオさんが飛びつく勢いで駆け寄ってきて、テキパキと髪や手をチェックしてくる。

 いや、あの、ここゲームなので、そういうところに異常は出ないです……。


「嫌なことされてない?ちゃんとすぐ開放してもらえた?ほんとに大丈夫?」

「あ、あの、本当に大丈夫ですよ?」

「ニャオ姉、困ってるから流石に離れな」


 緑の髪の細身の男性――ねむねむ蝉さんがニャオニャオさんを引き離してくれた。


「結果はどうっした?」

「まあ、流石に?」

「え、ええと、はい……負けちゃいました」

「いやリー君に勝てたらEFO最強だから。普通に無理だにゃ」


 談話室全体から仕方ないという朗らかな雰囲気の笑いがこぼれる。

 いやうん、それはそうなんですけどもね。


「あと5秒時間を稼げば、役割は遂行できたんですけどねえ」

「どういう作戦だったの?」

「えーとまず私がリーダーさんを抑えて」

「ほうほう」

「その間にトラキチさんがロイドさんを落として」

「ふんふん」

「その後はリーダーさんとトラキチさんが1on1で勝負する、という予定でした」

「――――へえ」


 異常に低い、底冷えするような声が耳を突いた。


「トラくんを呼びなさい」

「え、ええと、もうログアウトしちゃいました……」

「ハムさんは何してたの!?」

「横でずっと見てた。超いい笑顔だった」

「あーいーつーらーはー!!!リー君と戦いたいだけなら、素直にタイマンやれーーー!!!!!」


 ニャオニャオさんがガルガルと怒り出して、周囲を水蒸気のエフェクトが走る。

 いや、あの、そんなに、怒らなくても……。


「いやほんっとゴメンな。前にPvPやれって言われた時に、ペアなら受けるって言っちゃったんだよね…」


 リーダーさんが申し訳無さそうに言った。


「それで新人連れて行くって何考えてんの!?ハムさん連れて行きなさいよ!!!!」

「いやほんとに、ハムさんとペア戦だったら楽しそうだし良いと思って言ったんだよ」

「す、すみません」

「ああごめん、セリスとやるのも楽しかった!大会じゃやれなかったしね。相変わらずのびっくり戦だったけど」

「今回のは単にリーダーさんの舐めプだと思います」

「返す言葉もないけど竜舌蘭打つとは思わないじゃん」

「リーダーが舐めプしたの?見たーい!」

「あー、録画流しても良い?」

「あ、はい。私も解説が欲しいです。あ、私の一人称もありますよ」

「いいね、二窓、あーロイドもある?じゃあ三窓しようか。会議室だな」



 談話室の人が全員見たいというので、ぞろぞろと連れ立って会議室に移動する。



「すげえ、ほんとに武器チェンファイターだ」

「え、今のアローはどうやって避けたの?」

「あ、ここ、えーと、スロー再生すると、見えますか?足元に矢の影が見えてて」

「ほえー」

「後ろのバレットは全然分からなくて、結構食らってます。ファイターって固くていいですね、アサシンだったら多分死んでました」

「うっわー竜舌蘭マジじゃん、PvPで打つう!?」

「リーダーさんが全然こちらを相手にしないので、じゃあやろうかと……」

「うん、これはリー君の舐めプだにゃ」

「トラ見ながらこれだけ反応できてりゃそれほど舐めてねーでしょ!?」

「ここのジャスガはどうやって分かってるの?」

「手の位置的にカウンタースラッシュ、一閃、ソニックブレードのどれかが来ると思ったので、構えてました。ここにチラッと映ったエフェクトがカウンターだったので、それでガード振ってます」


 色々な人からの質問に答えつつ、リーダーさんの視点も見る。

 すごいな、私の方相手しつつ、視界にたまにトラキチさんの足が映ってる。これ位置確認ずっとしてるってことだよね?


「あ、ここ一歩下がったの、もしかしてトラキチさんを射程に入れるためですか?」

「そう、ランナップソードの最大火力が入る位置を取ろうとしてる」

「うーん、さすが」


 プレイングで完全に負けてますね。烈火も完璧にフェイントにかかっちゃってますし。


「ファイター初心者にこのフェイントはえげつないっすよリーダー」

「そーだそーだ!手心を加えろ!」

「ここで落とさねえとロイドが落ちるんだよ!しかたねーだろ!?」

「あと5秒は持たなかったと思うからな…正直助かった」

「やっぱりあと5秒でしたよね。烈火だってことは分かったんですけどねぇ」

「それだけ分かってりゃ十分にゃ~。すごいすごい」


 というかロイドさんもやっぱとんでもないな。トラキチさんの拳にあの距離で常にアローを当てて魔法でダメージ相殺し続けてるの、結構正気じゃない……。いやそもそもいくつ並行でチャージしてるのこれ……。


「宇宙人だなぁ」

「ぶっwwwwwww」

「ぶふっ、あっはははははwwwちょ、急に言わないでwwwwwww」

「生まれも育ちも地球なんだが……」

「ろwwwwいwwwwwどwwwww」

「ノらないでwwwwお腹痛いwwwwww」



 しばらくしてようやく笑いが収まった頃、会議室の扉が開いた。


「おったおった、何見とったん?」

「びっくり箱~すごいよセリスちゃん、マジ武器チェンファイターできてる」

「お、そか今日試合やったんな、どうやった?」

「見て見て、試合時間は2分くらいだから」


 びっくり箱さん、生産のトップの方だ。

 ぺこりと会釈してテーブルの端に座り、また動画が再生される。


「んー、なるほどな。ちなセリス、自分これモンスター相手にどれくらいやれるん?」

「正直あまり研究できていなくて、そこまでですね。モンスターごとの挙動研究が必要なので、PvEでは使えないかもしれないです」

「設定画面消して、剣士タンクに徹したら?」

「それならまあ、この一週間練習させられたので、それなりでしょうか。一次職ですからあまり固くないですけど」

「ずーっとトラ小屋チームに引っ張られてて可哀そうだったにゃ……」

「いやもうほんと、あそこまで引っ張られるとは思っていなかったですね……」


 この一週間を思い出してちょっと遠い目になってしまう。

 まあ、ジャストガードはずっと練習させられたので、ずいぶん上達はした。フェイントをかけて来ないような低知能AIだったら、見えていればジャスガ出来ると思う。

 びっくり箱さんはなるほどなぁ、なるほどなぁとつぶやいて、ロイドさんを見た。


「で、セリスは生産チームでもろてええんやな?」


「へ?」

「ちょっと待て」

「ダメだって話をしてたんだけど!?聞いてた!?」

「いやや!欲しい!ちょーだい!」

「欲しいじゃない!というかあの狂気の連戦を新人にやらせんな!」

「へ?え?は?どういう?」

「このレベルのタンカーで継戦2時間(・・・・・)とか!サポートのために居るようなもんやんか!?」

「無茶苦茶言うな!阿呆!」

「びっくり箱、一旦こっちに来い」


 険しい表情のロイドさんが、騒ぎ立てるびっくり箱さんを引きずって会議室の外に出ていった。


「…………」

「………………」

「…………え、私の所属サポートチームですか?」

「前も言ったけど、サポートも手伝ってもらうけど、所属は非固定になると思う」

「あ、はい」

「あの、リー君、セリスちゃん、聞きたいんだけど」

「はい?」

「け、継戦2時間って…ガチ?」

「え、あ、まあ?休憩なしだと、普通それくらいが限界じゃないですか?」




 何故か全員が、一斉に首を横に振った。


リーダー「ペアならいつでも受ける」:5-8.ギルドリーダーとトップタンク


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