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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十一章 トップファイターの呼び出し

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11-5.VSトップペア

 トラ小屋メンバーはずいぶん結束が固いのだな、などと少々現実逃避的な事を考えてしまう。

 日曜日にはギルドシステムの紹介をグライドさんから受け、何故か動画の撮影になり、

 それから平日は来る日も来る日もログインした先で待ち受けられ、パワーレベリングに連れ回され、5日間でレベルは175まで上がった。

 私アサシンソロの時、ここまで来るのに8ヶ月かかったんだけどなぁ……。


「理想は190でしたが、間に合いませんでしたか……」

「いや、さすがにそれは無茶では……」


 ハムさんが心底悔しそうに言うけれど、いや無茶ですって。190って標準プレイで半年かかるって言われてるんですけど?


「装備は一新しましょう。トラからのものはまだ使えますが、あの人からもらったものはそろそろ使えません」


 悲報:最前線でさえなければ200レベル現役の装備達、寿命一週間。


「あの、流石に装備までいただくのは……」

「何を言っているんですか。トラの隣に立つんですから、それなりの格好をしてもらわないといけません」

「……ハイ」


 ハムさんからロイドさんと同じ香りがする。いや、どっちかっていうとブレイザーさんだろうか。



 装備は大会で見たような剣と盾になった。本当に前線向けの装備だ……。


「準備はできたか」


 遅れてログインしてきたトラキチさんが私の前に立つ。

 大柄な彼を見上げるように見れば、機嫌の読めない顔がこちらを見下ろした。


「クソ野郎を抑えろ」

「ええと、本当にやるので……?」

「今更そこか」


 いや、そこですよ?私には対戦理由ないんですって……。


「俺様が二人いれば勝てんだろ」

「いや、私にトラキチさんほどの技量は無理ですよ……?」

「クソ野郎止めてる間に相方を落とす。したらてめえは落ちて良い。あとは1on1でカタをつける」

「あの、私の話をですね……」

「質問はねえな?」

「あ、いえ、はい、なんでもないです大丈夫です」


 フレンド:トラキチ から パーティ申請 が届きました。

 申請を受理しました。パーティリーダーは トラキチ です。





「一応聞くんだけど、ほんとにやんの?」


 プライベート戦状態になったコロシアムで、リーダーさんが、おそらくさっきの私と同じ顔をして言った。


「なんだ、怖えのか?」

「セリスのメンタルを気にしてるって意味ではめっちゃ怖いが?」

「ありがとうございます、その言葉だけで今大分救われました……」


 よかった、流石にこれ普通じゃないと思ってたんだけど、ちゃんと普通じゃなかった……。


「ルール確認だ。第四回大会仕様2on2、時間制限なし、結果の如何にかかわらず一戦のみ。異存は?」

「それでいい」

「えっと、大丈夫、です」

「一応録画はするけど、流すかは内容によって後で相談する」

「てめえが負けるところを生配信でもいいんだぜ?」

「万が一巻き込まれプレイヤーが初手トチったのが生配信されたら流石に可哀想が過ぎる」

「ご配慮痛み入ります……」


 視界の左三割を埋める装備欄を撫でる。

 たん、と、たん、と、うん、多分大丈夫。だと思う。


「さて、しゃーない、いこうか」

「ああ、いつも通り」

「全力でいけ」

「……分かりました」


 トラキチさんに並び立つ。

 視界の隅にカウントダウンが映った。


 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1


「「アジリティアップ」」

魔術の前に平伏せボウダウントゥメイガス ファイヤーアロー ウォーターアロー ファイヤーバレット」


 こちらは二人共敏捷アップを使用する。

 私は右に、トラキチさんは左回りに駆け出した。

 即座にロイドさんの魔法連打が届く。狙いは、私だ。


 見えない左からの魔法の矢を、足元に見える影を頼りに転がって避ける。

 背後に回っていたバレットが背中に突き刺さって、まあまあなダメージが入った。


 リーダーさんに接敵する。

 だけど彼はほとんど私を見ないでトラキチさんを抑えに回っている。範囲の広いスキルでこちらを牽制だけしている。

 ええ、ええ、まあそうでしょうとも。私は"そのうち"ロイドさんのスキルで落ちますものね。


 じゃあ私も、落としに行きますよ。鍔迫り合いしていると使えないスキルですけれど、こちらを見てないならいいですよね。


「伸びよ、貫け、咲き誇れ」

「っ!?」


竜舌蘭(センチュリーフラワー)


 ファイターの覚醒技は、純粋な高火力スキルだ。一次職(ファイター)には上級奥義がないので、それ相当ということになる。

 鍵語が他の覚醒より少し長い。スキルの発動直前に停止時間(前すき)がある。PvPでは本来使えないスキルだ。

 突き出した拳から長い光のエフェクトが伸びて、蕾のような光がが大きく膨れる。


「マジックシールド!」


 ロイドさんのとっさの魔法障壁が発動し、リーダーさんの左腕が少し上がる。ジャストガードだ。

 次は、カウンタースラッシュ、一閃、ソニックブレードのどれか。多分どれもジャスガできる。

 蕾の開花に合わせて左手を滑らせる。たん。

 奥義系スキルはジャストガードの軽減率が低い。ジャスガもマジックシールドも完璧だけど、それなりのダメージが入ったのが視界隅に映る。

 装備がシステムにより瞬時に剣に切り替わる。

 リーダーさんの足先が少し横に開く。ちらっと映った剣先に赤紫のエフェクト。カウンタースラッシュだ。

 ジャストガードから即座に装備設定に触れる。と。

 即座に装備が拳に戻る。

 うーん、ジャスガ成功したと思うんだけど。いや成功してなかったら確実に死んでるから間違いなく成功はしたんだけど。

 すっごいダメージ食らったな……レベルも装備もスキル構成も負けてるし、仕方ないとは言え。

 ああ、でもリーダーさんもそれなりに入ってるか。よかった。


 こちらからのお返しは百裂拳(ハンドレッドフィスト)。多分これが一番、リーダーさんを釘付けられる。

 彼の方もスキルチャージが間に合ってしまったらしい、五月雨斬りが飛んでくる。

 相殺合戦は勝てない。私のHPがジリジリと削れていく。

 次はなんだろう、リーダーさんは五月雨斬りのあと烈火を選びがちだけれど。

 装備に触れる。剣に切り替わった装備でジャストガードに入る。腕の影が動く。よかった、烈火だ。


「え?」


 思ったタイミングでスキルが来なくて、私はジャストガードを振った直後に袈裟斬りにされ、世界が暗転した。

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