9-23.決着
同時に発動したバレットが互いにぶつかる。
火力は俺のほうが高いけど、そこにリーダーの剣が突き刺さってバレットが落ちる。
「ファイヤーバレット」
「五月雨斬り」
「メテオアロー」
俺のバレットがリーダーの五月雨斬りに当たって、ロイドのメテオアローが俺の胴を貫く。
「メテオアロー」
「烈火」
「ウォーターバレット」
打ったメテオアローをリーダーが烈火で切り落とす。ロイドのバレットを避けられず、
世界の色が、消えた。
『勝者!リーダー&ロイドペア!』
『ぐっどげえええええええむ!』
『グッドゲーム!ウェルプレエエエエイド!!!』
「いやぁ、負けちゃった」
「…………」
フィールドに復活し、先生が少しだけ悔しさをにじませた笑顔で言う。
「ごめんな、レイ」
「先生の、せいじゃないです」
「いやいや、作戦立案私だからね」
「それでいいって言ったのは俺なので」
「じゃ、二人共だな」
「……はい」
背中に大剣を携えた先生が、俺の背中を押して一緒に前に出る。
「グッドゲーム」
リーダーが爽やかな顔で先生と握手する。
「GG。やられたよ。火力で負けるとは思わなかった。剣、もしかして奥義特化?」
「そ。先生なら絶対に最後は奥義を打ってくるって決め打ちした」
「とんでもないね」
「打ってくれて嬉しかった。ブレイダーの覚醒奥義やっぱ格好いい」
何言ってんだリーダーは。
「先生はいつでも格好いい」
「はは、そうだな」
苦笑を浮かべた彼から差し出された手を握る。
「最後のメテオバレットは、ちょっとだけ焦った」
「……準決勝で見せたのは、やっぱ失敗だった」
「そしたら君は4位だったよ」
やっぱ、この人ちょっと嫌いだ。
「次は、そんなやり方じゃ負けないからな」
「おう、再戦楽しみにしてる」
「次は何の武器作ろうねぇ」
「基本的にはその構成、最強に近いんだけどな」
「君たちを倒す武器じゃなかった。多分トラくんに当たっても負けてたかな。どの道優勝はできなかったと思う」
トラならノックバック特化で勝てたような気もする。
でもソレよりも、先生が"次"の武器の話をしてくれた。
それが嬉しくて、少し顔がにやける。
「やっぱ俺、もっとチャージ短くする構成にします」
「私のワンミスで即死する構成は止めてくれないかな」
「先生はミスらないですよ」
「いや結構ミスるから。本当にその盲信はやめて」
いやだって、先生が大一番でミスしたところなんて見たことがないし。
というか先生のミスで負けたならそれでいいんだけど。
……今度ビショップ作ろうかな。俺も爆発しよう。
うちのビショップに怒られるかな。でも先生の隣は譲れないし。
「GG、あの数の魔法をさばくのは本当に流石です」
「ロイドくんにそう言ってもらえるとちょっと報われるかな」
「吹き飛ばしが効いていたら、負けていたかもしれませんね」
「どうかな。というか最後のシールド三連打がなければ流石に相殺勝てたと思うんだけど」
「流石にそこは通させませんよ。――俺の存在意義なので」
ロイドは俺にちょっと近い。俺もシールド系練習しようかな……。
バレット使えることもバレちゃったし。
「――2年、ずっと隠していたのか?」
「バレットのこと?そうだよ」
「恐れ入る」
「あんたが俺の立場だったら、同じことするでしょ」
「…………なんとも、手厳しい言葉だ」
ロイドは否定も肯定もしない答えで、薄く微笑った。
「――さて、時間かな」
先生がそう言うと、フィールドにトラキチ、ボンレスハム、セリスさん、アネシアさんの4人が転送されてくる。
『第四回公式PvP大会!第四位!』
『セリス・アネシアペア!』
セリスさんとアネシアさんがお辞儀をし、控えめに手を振る。
『第三位!』
『トラキチ・ボンレスハムペア!』
ボンレスハムだけがにこやかに手を振り、トラキチはムスッとした顔で頭をかいた。
『第二位!』
『アルマジロ先生・ブレイザー先輩ペア!』
先生が剣を取り出して一度大きく振った。
俺も杖を掲げる。
『そして映えある第一位は!』
『リーダー・ロイドペア!』
リーダーとロイドが拳を大きく突き上げた。
『代表しまして、リーダー選手より、コメントをお願いします!』
「2日間に渡る大会お疲れ様でした!
どのプレイヤーも素晴らしい戦いを見せてくれました。
たくさんの思いも寄らない戦術があり、たくさんの番狂わせがありました。
何かが一歩違えば、ここに立っているのは俺たちではなかったかもしれません。
本当に、全ての試合が楽しかったです!
参加したプレイヤーのみんな、運営の皆さん、楽しい試合をありがとうございます!
そして観客のみんなも、画面の向こうのみんなも、最後まで見てくれて本当にありがとうございました!」
『どうぞ全ての選手たちに!今一度大きな拍手をお願いいたします!!!』
観客席からシャンパンやフラワーシャワー、クラッカーのエフェクトが乱れ飛んだ。
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「セリス」
「はい、何でしょう?」
隣に立つパートナーに声をかけると、彼女はいつものふわりとした笑顔でこちらを見る。
「実は今度、妹と身内ギルドを立てるんです」
「え?そうなんですか?」
「ちょっと有名になりすぎちゃったので、ギルド未所属だと色々面倒で……ギルドリーダーにはギルド招待を送れないので、それで一旦様子見します」
「ああ、なるほど」
「それでなんですが」
彼女を見る。返事は知っているけれど、でも一応聞きたかった。
「私たちのギルドに入りませんか?」
彼女はぽかんとした顔をして、それからすっと目をあちらに向けて。
「ごめんなさい、私、入りたいギルドがあって」
「うん、知ってました」
「あの!シアさんこそ!一緒に向こう入りませんか?」
「私にあそこは無理ですねぇ、今回大会のために結構無理してゲーム時間確保したので、これからはイン時間も減りますし」
「あ……その、ごめんなさい」
「いえいえ!大会はすっごく楽しかったです!自分だけじゃ絶対参加しなかったし!」
「私も、シアさんと一緒に出れて良かったです。誘ってよかった」
「えへへ、ありがとう!まあでも当面ガチ戦闘はご遠慮したいと言うか……完全燃焼しちゃったというか……」
「あーうん、ちょっと分かります」
「――ギルド分かれても、また遊んでくれますか?」
「もちろんです!今度は妹さん紹介してくださいね!」
「ふふ、ちょっと賑やかな子なので、覚悟してくださいね!」
えへへと笑って、それから彼女の体をぐるりと向こうに向けて、背中を押した。
「さ、いってらっしゃいな」
「わっとと、はいっ!行ってきます!」
彼女が藍色の髪を揺らして駆け出して。
「うーん、やっぱちょっと残念」
その後姿を、少しさみしく見送った。
長かった……本当に長かった……いや9章もうちょっと続くんですけども




