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転性剣士商売  作者: 明之 想
第二章
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第四十一話  突破




 まずは、実験。

 魔法陣を破壊できるか。

 それによって、透明の壁を取り除けるか。


 用意しておいた高威力の水弾を魔法陣に向けて射出。


「・・・」


 弾かれた。

 効果なし・・・。


 まあ、そうだよな。


 そうなると、当然・・・。


 魔法陣が発光を始め。

 もう聞き慣れた雄叫びとともにミノタウロス登場。


 ここで待つ必要はない。

 魔法陣の発光に包まれているミノタウロスに先制攻撃を。

 水弾を心臓に向け発射。


 よし!

 寸分違わず心臓に命中?


 いや。

 霧散した!?

 命中と思われた瞬間に、水弾が弾けて消失・・・。


 そう上手くはいかないか。

 でも、まだ攻撃は続いている。


 大剣を片手に、倍速の効いた身体でミノタウロスに向かって疾走。

 ミノタウロスは咆哮をあげるだけで、まだ動き出さない。

 速度を緩めることなく跳躍、そのまま心臓に一突き。


 キン!


 弾かれた。

 ミノタウロスの身体に届く前に弾かれた感じがする。


 魔法だけでなく、これも無理なのか。

 登場時が狙い目だと思ったんだけど。

 甘くないな。


 おそらく、身体を覆うあの光も障壁のようなモノなんだろう。


 仕方ない。

 通常攻撃に移ろう。



「エルマさん、では作戦通りで」


「分かってるわ」


 俺が剣と水弾で心臓か頸部を狙う。

 エルマさんは、できる範囲で陽動と足止めを。



 発光が止む。

 先頭にいる俺に向かって突進してくるミノタウロス。

 ここまでは、いつもと同じ動きだ。

 問題ない。


 こちらも、大剣を構え突進。

 エルマさんも俺に続く。

 振り回してくる手をすり抜けざま、脇腹を撫でるように軽く一撃。

 そのまま背後にまわる。


 ミノタウロスも・・・立ち止まったな。

 振り向かず、エルマさんに正対している。


 予定通りだ。


 では、今度は。


 ミノタウロスの背に向かって跳躍。

 首に一突き。


 ドス!


 貫通はしないまでも、確かな手応えがあった。


 素早く剣を引き抜き、背中を足蹴にして離脱。

 体勢を整える。


「グゥオォォォ!」


 咆哮をあげながら、振り向くミノタウロス。

 もちろん、こちらも手を緩めるつもりなどない。

 この距離なら外さないだろう。

 首に向けて水弾を放つ。

 それと同時に、エルマさんが足に斬りかかる。


 やった!

 水弾が頸部を貫通。


「!?」


 倒れない。

 首に穴が空いているのに・・・。



「エルマさん、一度下がってください」


 と、その時。

 声にならない咆哮とともに、ミノタウロスの口から紅蓮の炎が。

 俺とエルマさんに向かって放たれる。

 近い!


「あぶない!」


 至近距離からの火炎攻撃。


「!?」


 目の前が真っ赤に染まる!

 横跳びに避けるが・・・。


 やられた。

 油断した。


 痺れるような痛みが左胸、左肩に走る。

 エルマさんの事が気になったせいもあるけど、この至近距離。

 完全に避けることはできなかった。

 火を吐くことは分かっていたのに。


 でも、そんなことより。


「エルマさん!」


 エルマさんは大丈夫か?

 と思った時には遅かった。


 炎によって奪われた視界が戻ると。

 ミノタウロスの拳による強烈な一撃が俺の目前に!

 倍速をもっても避けきれない。


 気で身体を覆い後ろに跳躍。

 少しは衝撃も緩和できるはず。


 ゴン!!


「くっ!」


 痛む胸と肩をかばいながら、なんとか着地する。


 自分の跳躍に加えてミノタウロスの一撃。

 随分と後方に飛ばされた。


 火炎攻撃からの打撃とは。

 完全にやられたな。


 けど、飛ばされたのは幸いだ。

 体勢を整えることができる。



「エルマさん」


 どこにいる?


 俺に向かってくるミノタウロス。

 その向こうに、エルマさん。

 立ち尽くしているぞ。

 けど、大きな負傷は・・・無さそうだ。


 なら、問題ない。


 ミノタウロスの攻撃を避け、エルマさんのもとへ。

 エルマさんを片手で抱え通路へ遁走。




「ふぅ~」


 とりあえず、安全な場所に避難完了。


「大丈夫ですね?」


 やはり、大きな負傷は無いようだ。

 手と足に軽い火傷がある程度か。


「・・・えっ!?」


「では、ここで待っていて下さい。あいつが消える前に仕留めてきます」


「えっ? ちょっと・・・」


 完全に治療してから再戦してもいいけど、あいつも首に穴が空いている状態だ。

 今なら倒すことができるはず。

 消える前に倒したい。


 しかし、俺の左上半身・・・。

 かなりの負傷だな。

 火炎に続いて、打撃ももらったからな。



 とりあえず、軽く治療して部屋の中へ。


 よし。

 まだ、ミノタウロスは消えていない。

 首の穴もそのままだ。


 再び倍速を使い接近。

 ミノタウロスも俺に気付いたが、気にせず突進。

 右手には虎徹。


 さっきの攻撃で、ミノタウロスの防御力はだいたい解った。

 虎徹ならやれるはず。


 ミノタウロスの攻撃を横に避け、真横から太腿に水弾を放つ。

 続けて、腹にも水弾。


「グゥゥ!」


 もちろん、倒れない。

 でも、確実に効いている。

 動きも鈍くなってるよな。


 もういいだろ。


 と思ったら。

 さっき見たような・・・。


 火を吐くつもりか。

 数歩後退して、火炎攻撃に備える。


 予想通りの火炎攻撃。

 離れて見たらよく分かるが、かなりの広範囲攻撃だ。

 近距離で避けるのは難しい。


 それでも、今度は余裕をもって回避。


 おっ!


 目に見えて動きが遅くなっているぞ。

 今の攻撃で、かなりの力を使ったのか。


 それならば。


 真正面からミノタウロスに接近。

 振り下ろされるミノタウロスの腕をかいくぐり、まっすぐに飛び込む。

 穴の空いた頸部に向けて。

 虎徹を一閃。

 渾身の一撃。


 切断!


 やったか。


「・・・えっ?」


 頭が無くなっているのに・・・。

 倒れない。

 腕を左右に振って暴れている。


 不死身かよ。


 さすがに、俺を確認することはできないようで、やたらと暴れまわっているだけだが。


 でも、倒さないと魔法陣の壁は消えないよな。


 素早く魔法陣を確認。

 やっぱり・・・。

 壁は消えていない。



 どうやって倒す?

 心臓か。

 これで倒せなかったら・・・?


 その時は、その時だ。


 ゆっくりと近づき、心臓を一突き。


「・・・」


 ドスン。


 倒れた。






 通路に戻ると、エルマさん・・・。

 顔色が悪い。


「まだ治療していないのですか。さあ、早く火傷の治療を」


「・・・それより、ハヤトの治療が先よ」


 確かに、俺の方が重傷だ。

 でも、命に別条はないだろう。

 なら、レディーファーストで。



 エルマさんの治療を終え。

 俺の治療は・・・エルマさんの治癒魔法のお世話になりました。

 今の戦闘でかなりの魔力を消費したから、正直助かる。



「では、行きましょうか」


「少し休憩した方が良くない? まだ、魔力も回復してないでしょ」


 それは、そうなんだけど。

 できれば、早く魔法陣の上を通過したい。


 ミノタウロスを倒した後、壁の有無を確認したんだけど、消失していたからね。

 それでも、魔法陣はそのまま残っている。


「今は障壁も消えているようですが、時間が経てば再び現れるかもしれません。ですから、急ぎましょう」


「・・・分かったわ」



 ということで、部屋に入ると。


「!?」


 ミノタウロスが消えていた・・・。

 転移?

 魔法陣の力なのか。


「どういうことでしょう?」


「生きていても死んでいても消えるんじゃないの」


 考えてみれば、そうおかしくもないのか。

 普通に現れたり消えたりするんだから、死体が消えても不思議じゃない。


 でも、そうすると。


 まさか!

 壁も復活してるんじゃないだろうな。



 恐る恐る魔法陣の上に歩を進める。


「・・・」


 よかったぁ。

 壁は無くなったままだ。

 問題なく進めるぞ。


「通れたわね」


「ミノタウロスが消えていたので焦りましたよ」



 では、魔法陣の奥の通路へ。

 うん?

 この部屋に入るための通路と同じくらいの大きさなんだけど。

 なんと言うか・・・冥い。

 普通と違う。


「ちょっと待ってください」


 感知結界で確認。

 やはり、通路の先は感知できない。


 仕方ないな。


 松明に火をつけ。

 そのまま、通路の中へ足を踏み入れる。


 えっ?

 明かりがほとんど拡散しない。

 光が闇に吸い取られるような。

 なんだ、これ・・・。

 背中がぞくぞくする。


「変な感じね・・・」


 エルマさんの声もかすれている。


「そうですね」


 不気味だけど。

 立ち止まっている場合でもない。

 進もう。


「行きますよ」


 数歩進み・・・。


「!?」


 奇妙な感覚に見舞われる。

 浮遊感?

 違うな。

 何かに引っ張られるような・・・。

 押し出されるような・・・。

 とにかく奇妙な感覚だ。


 といっても、ほんの僅かの間だけ。

 次の瞬間には、目の前に薄暗い明かりが。


 いきなりとは・・・。

 やっぱり気味が悪い。


 でも・・・。

 新しい空間、部屋だ。

 安堵感が広がる。


 思わず急ぎ足に。


「えっ?」


 これは・・・。


 ミノタウロスと闘った部屋にそっくりだった。


 目の前には魔法陣。

 通路から部屋に入ったこの地点を中心に半円状に描かれている。

 奥には、先へ進む通路も・・・。





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