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第19話

 鏡の前で身嗜みをチェックする。

 白いブラウスに黒地に白いチェックのスカート。ブレザーではなく、カーディガンを着る。

 うん、前に似た感じの事やったね。一番最初だったと思う。

 そうです。6月に入り、衣替えの季節がやってきました。まだ、ブラウス1枚じゃ肌寒かったりするので、薄手のカーディガンです。なぜか、カーディガンや、ニットベストとかセーターに、学校指定のが無いんだよねえ。柄物とか派手な色が禁止って書かれてるくらいで。てな訳で、カーディガンです。ロング丈だけど、柄物じゃないし、色は黒だからセーフだよね。怒られないよね。

 薄手のセーターは柄物しかないし、ニットベストはあんまり好きじゃない。なので、選択肢が無かったのだ。

 なんで、ロング丈かと言うと、柄物以外で持ってるのがロング丈しか無いからだ。長めの裾とか、長めの袖とか、個人的には凄い破壊力のある萌えポイントだと思うんだ! いや、自分自身に萌えポイントを追加したって意味がないんだけどね。でも、やっちゃうよね仕方ないね。萌え袖は正義!

 ネクタイはどうしようかな。確か、着けなくても良かったと思うけども。……うん、着けた方が可愛いね、着けようそうしよう。


 うむ、我ながら納得のいく美少女ができた! あ、自分で言うなって? 事実なんだから仕方あるまいて。それを鼻に掛けてる訳じゃ無いし。

 てか、ロングカーデだとスカートが見えるかギリギリだな。まあ、カーデの下のボタンは止めてないからスカートも見えるだろうし、何も穿いてない感じにはならないし、いいか。


 さて、下に降りて朝食だ。

 あれから、家でゆっくりせずに早朝登校を続けてるから、あまり時間がないぞ。

 希帆きほかえでちゃんも、合わせてくれてるのか、比較的早い時間に登校するようになったのが、嬉しい反面申し訳ないね。本当に良い友達だと思う。何よりも可愛いし!


「おはよう」


 リビングへと入り、挨拶をしながら椅子へ座る。

 雪花せっかが早速、足に擦り寄って来るけど、黒いハイソックスなので勘弁して欲しい。いや、可愛いのよ? 凄い可愛いんだけど、毛がついて目立つんだよね。まあ、カーディガンも黒だから抱き上げる事すらできないんだけどね。……よーし、諦めよう。家を出る時にドレッサーで取り除けばいいさ! け、決して可愛さにやられたとかそんなんじゃない!


「おはよー、姉ちゃん。お、姉ちゃんとこも衣替え?」


 私の正面に座るりくが、相変わらず物凄い量の朝食を食べながらそう言ってきた。も、って事は陸も今日から衣替えなんだろう。確か、中学もこの頃だったしね。

 陸を見れば、白いポロシャツを着ている。うん、相変わらずだっさい制服だ。

 冬服はブレザーだし、なかなかに良いと思うのだけど、夏服がいかん。なんで、ポロシャツなんだ。半袖カッターシャツじゃいかんのか、と声を大にして言いたい。


「おはよ。相変わらず夏服ださいねー」

「言うなよー、これ着るの嫌なんだし。竜泉りゅうせんは自由度高そうでいいなあ」


 私がそう言うと、顔を顰めながら返す陸。

 まあまあ、あと1年の辛抱ですよ。


「あと1年で陸も竜泉入るんだから、それまで我慢我慢。……あ、そういえば陸は特待で竜泉入るの?」


 聞くまでも無い事かもしれないが、一応確認。陸はアンダー代表だし、特待生の話は絶対に来るだろう。


「いや、話が来ても特待生では入らないよ。このままユースに上がって続けるつもりだし、ユースに所属してるとサッカー部入れないからね」


 さすがに、サッカー特待で入った人間が、サッカー部に所属しないのはまずいっしょ。と陸が答えた。

 なるほどなるほど、そう言えばそうだね。ユースの事とか、すっかり頭から抜けていたよ。


「まあ、先生からは今の調子でいけば、竜泉に入るのは問題なさそうって言われてるからね。このまま頑張るよ」


 さすがは文武両道のチートキャラだねえ。イケメン爆発すればいいのに。あ、でも可愛い弟が爆発したら嫌だなあ。てかあれだ。陸に彼女とかできたらどう反応すればいいんだ、私。なんか、凄い寂しい気分になりそう。……まあ、その時が来たら姉離れができたんだと心から祝福してあげよう。寂しいけどね。

 よーし、いかんね! まるでブラコンみたいな思考になってたよ! 私がブラコンとか無いし!


「あ、受験で思い出したけど、アイツ(・・・)も竜泉入るって言って、猛勉強してるよ」


 私が1人で妙な思考に陥っていると、陸がニヤニヤしながら1つの情報をくれた。

 ……アイツ? 誰の事だろう。陸の友人で、そら様とか言いながら、ただ純粋に崇拝してくる男子ではないだろう。あの子は成績はそこまで良い方じゃないと聞いているし。てか、陸が面白そうな顔をして言ってくるって事は、大分絞られるはず。て事は女子? 女子で私絡みで陸を面白がらせる子……あ、あーあの子か。あの子が竜泉に来るかもしれんのか。

 困ったな。陸に助けを求めても、見てる分にはすげー面白いって助けてくれないからなあ。

 ……うん。心苦しいが、あの子には落ちて貰う事を祈ろう。凄く申し訳ないが、仕方ない。

 別にあの子が嫌いってわけではないのだけど、うん、仕方ない。


 そんな雑談をしながら朝食を摂っていたら、時間も丁度よくなった。

 さてさて、学校へ行きますかね。




 ----------




「おはよー、空!」

「空さん、おはようございます」


 学校へ付き、教室で少し待っていると、希帆と楓ちゃんも教室に入ってきて、私の元へと来た。

 2人は中学が一緒という事もあり、駅で待ち合わせをして登校しているらしい。

 希帆と楓ちゃんと一緒に電車登校とか、凄く羨ましいです。私も一緒に登校したいです。

 ……って、どうせ駅前通るんだし、2人と待ち合わせて一緒に行けばいいんだよね! なんで思いつかなかったんだろうか!

 後で提案してみよう、そうしよう。


「ねーねー、空」


 私が、思いついた事をいつ提案しようか考えていると、希帆に話しかけられた。なんだろう?


「カーディガン着て、暑くないの?」


 あー、それか。暑くないよ。てか、希帆は既に半袖のブラウス1枚だけど肌寒くないのかね。6月ならまだ長袖で良いと思うのだけど。あと、楓ちゃんだってニットベスト着てるじゃんか。ブラウスだって長袖だしさ。


「平気だよ、これも薄手のやつだし」

「信じられない! 空もだけど楓もだよ。絶対暑いよー」


 私が答えると、希帆がそう言う。楓ちゃんには既に行きで聞いたのだろうな。隣で、平気なんですけどねえ、とコロコロ笑っている。

 てか、希帆は暑がりなんだろうか。なんだか、見てるだけで暑い! と、言われそうな勢いだ。

 私はどちらかと言うと、寒いほうが苦手なので夏場でも長袖はよく着るのだがな。お店の冷房って強すぎだよね。あれに薄着で突入するとか死ねる。


「希帆は暑がりなの?」

「暑いの嫌い! アイスとプールや海は大好きだけどね! あ、プールと言えば明後日プール開きだね!」


 あー、もうそんな時期か。うちのプールもそろそろ準備した方がいいかもなあ。

 そういえば、プールは男子女子は別なのかしら。屋内と屋外に1個ずつプールはあったはずだから、さすがに別だよね。

 いやー、中学の時は一緒だったからなあ。野郎共の視線が凄いのなんの。

 あ、世の男どもよ。君達はなるべく視線を向けないようにしているのかもしれないが、こっちをチラチラ見ているの、気付いているんだからな!


「プールかあ、授業だとあんまり好きじゃないんだよねえ」

「え、なんで?」

「私が好きなのは、プールサイドでのんびりする事なんだよね。授業だとのんびりできないからね」


 私がそう呟くと、希帆が不思議そうな顔をしたので、答える。

 必要な事とは分かっているのだけどね。こればっかりは仕方ない。

 プールサイドでのんびり本を読んで、気が向いたら少し泳いで、またのんびり。

 これが良いのであって、授業のプールは楽しくないのだ。

 

 その後も夏へ向けての他愛の無い会話を続け、うちのプール開きをする時は2人も呼ぶ事になった。

 希帆と楓ちゃんと一緒にキャッキャしながらプール掃除して、そのまま遊ぶのだ。これを楽しみと言わずして、なんと言えばよいのか!

 あ、手伝ってくれる2人を労う為にもお菓子を作ろう。

 夏のお菓子かー。アイスとかシャーベットかな? でも、夏と言っても6月だしなあ。

 身体を冷やすってよりは、爽やかで食べやすい感じのがいいかな。

 と、なるとなんだろう……。水羊羹とか? でも、さすがに作った事ないしなあ。

 んー……あ、フルーツポンチとかいいかも。うんうん、いいかもしれない。夏っぽし、極端に身体冷やさないしね!

 となると、食材用意したり、どんな感じの作るか考えたりしなきゃね!

 楽しみだわー。2人とも喜んでくれるかなあ。


 そんな事を考えていた私は置いておいて、HRホームルームが始まり、鹿せんせいから、プール開きの事が伝えられた。男子達からは歓声が湧き上がり、その後、男女別である事を告げられ、怒号と悲しみに包まれたのは完全に余談であろう。

 そんなに女子と一緒にプール入りたいのかお前らは!




 ----------




 数日が経ち、無事にプール開きも終わり、水泳の授業も始まった。

 そんな事はさて置き、今日は家のプール掃除ですよ。梅雨になる前に片付けたいからね。

 ん? 水泳の授業はどうしたのか、だって? ただ先生の指示に従って泳いでるだけですよ。そんな描写が欲しいの? 欲しいね。うん、分かるよ。欲しいよね。だが、断る。

 この片桐空の最も好きな事の1つは、サービスシーンをくれと言ってる奴に、ノーと断ってやる事だ。

 ……うん、ごめんよ。言ってみたかっただけなんだ。実際、大した事なかったよ。

 ただ、ひいらぎさんのお胸がFカップだと思ったら、Gカップだったりしただけだ。Gカップとか初めて見たよ。凄いよ。凄い柔らかかったよ。なんて言うかあれだよね。頭を挟んでみたいと思ったね。さすがにやらなかったけどさ。

 あとはそうだなあ、希帆の胸が1センチ育ったとかで胸を張られたけど、柊さんの後だから涙を誘う結果でしかなかったりしたよ。

 後、希帆と楓ちゃんに揉まれた。盛大に揉まれた。楓ちゃんは揉み返せるから、よくはないんだけど別にいい。希帆は揉み返せないのでずるいと思うんだ!

 あ、1センチ大きくなったって喜んでた希帆が私のを揉んで驚愕していた。前に触ったときより大きくなってるらしい。

 やっぱり育ってたのか。いや、最近どうもブラがきつくなった気がしてたんだよね。

 しかし、体重も変わらないのに育つってどういう事なんだろう。これが女体の神秘ってやつですかね。うん、違いますね。


 さて、話を戻そう。

 今日は希帆達がお昼前に来る為、少し早めに準備に取りかからなくてはならない。

 迎えに行く時間もあるからね。ちゃっちゃと作って冷やしておかねば。

 あ、お菓子はフルーツポンチに決まりました。と言ってもね。白玉作るだけなんだ。ナタデココもみかんもチェリーもパイナップルも全部缶詰なんだ。うん、済まない。けど、どうしろってんだ。バナナとキウィは切るけどね。これ、料理って言わないよね。

 うん、お昼ご飯は頑張ろう。

 お昼は何にしようかな。ちょっと可愛くお洒落な感じでいきたいね。そして夏っぽい感じ!

 ……冷蔵庫には、トマト、大蒜と生ハムですか。これは昨日買い物に行ってない予感!

 どう考えても大した物作れないね。……うーん、待ち合わせの後に買い物するか? でもなあ、それだとお昼までに掃除終わるか微妙だよねえ。

 よし、これでなんとかするしかないか! 大丈夫、調味料は一通りあるし、バジルだって育ててる。パスタは必ず買い置きがある! だから、パスタにすればいいのだ! あ、私がパスタ大好きだからね。必ずストックがあるようにしてるよ。

 

 さてさて、パスタソースだけ先に作って迎えに行きますかね。

 トマトを種を除いてざく切りにして、大蒜はみじん切り。バジルも適当な大きさに切る。あ、バジルは飾り用に少し切らずに残しておこうね。

 あとは、ボウルにトマト、大蒜、オリーブオイル、レモン汁、塩胡椒を入れて合わせ、冷やすだけ。バジルは最後に乗せるので切ったまま冷蔵庫に入れておく。

 簡単やわー。パスタまじ簡単やわー。素晴らしいね。こんなに簡単で凄く美味しい。しかも安い。


 因みに、弟の陸にはパスタは好評なんだけど不評である。

 美味しいのだけど、なんか食べたーって感じがしないんだとか。作る時は私の倍くらい盛りつけてあげてるんだけどね! 作る身にもなれって感じだよね!


 ……どうでもいいか。2人を迎えに行こう。

 って、お昼頑張るって言ったのに簡単に済ませようとしてるね。ま、まあ、美味しければいいんだよ!




 ----------




 駅に着くと、2人は既に待っていたので、少し急いで2人の元へ行く。


「おはよー! 今日はよろしくね!」

「おはようございます。よろしくお願いします」

「おはよう。こちらこそよろしくね」


 2人が何をよろしくと言ってるのかは分からないが、まあいいか。

 掃除を手伝ってもらう訳だし、こちらこそよろしく、だ。


 しかしあれだ。2人の格好があれだ。

 希帆は、迷彩柄のミニスカートにボーダー柄のホルターキャミとカットソー。

 楓ちゃんは、チェックのロングバルーンスカートに、襟と裾にフラワーモチーフのレースがついた半袖カットソーとポンチョパーカー。

 私はと言うと、ジーンズにボーダー柄のレイヤード風のドレープドルマンカットソーだ。

 ……うん、超かぶった。カットソー超かぶった!

 いやね、全部カットソーとは言え形は違うんだけどさ。ここまで見事にかぶるとは思わなかったよ。びっくりだね。


 その後、2人を可愛い可愛いと褒め称え、2人からは、相変わらず露出が少ない! と文句を言われた。

 いいじゃんかよー別によー。てか、楓ちゃんだって露出少ないじゃんかよー。なんで文句言われるんだよー。

 そんな感じの事を言ったら、可愛い子の薄着は見たいでしょ、と言い返されました。楓ちゃんだって可愛いじゃんかよー。




 ----------




 さて、家に帰って来ました。これから水着に着替えて掃除です。

 水着はこの前買った新しいやつでいいかな。2人もそうみたいだし。

 地下にあるお風呂場で着替えるのだけど、まあなんだ。一応はタオル巻いてるけど、人目が殆ど無い室内のせいか、チラチラ見えてるんだよね。何がとは言いませんよ。ただ、男の浪漫がここにはあるとだけ言っておこう。


 プールの掃除だけど、実はプール内を掃除する必要はない。

 なんでかと言うと、電気分解の塩素発生装置がある為、1年中プールに入る事はできるからだ。

 そして、プールの底はプール清掃ロボットに任せればいい。

 じゃあ、私達は何をするのかと言うと、プールサイドの掃除と水に浮いているゴミ取りだ。

 これが案外重労働である。なにせ、冬から秋にかけて基本的にずっと放置されている場所だ。結構汚れている。小まめにやればいいのにと思うかもしれないが、入る訳でもないのに掃除をするのは、やる気にならないと言うか……うん、済まない。


 ゴミ袋を用意して、大きいゴミを取り除き、その後掃き掃除。そしてデッキブラシで掃除。

 いやあ、あれだね。3人だと早い早い。


「いやー、暑いね!」

「ですねえ。早くプールに入りたいです」

「お疲れさま。手伝ってくれてありがとうね。お昼食べたら掃除も完了するだろうし、そしたらプール入ろう」


 例年ならちゃんと綺麗になるまで結構時間がかかるのだが、今年は早かった。

 今の時間は11時半。1時間ちょっとで終わった計算だね。そして掃き掃除まではいいのだけど、デッキブラシで擦るせいで暑い暑い。本当ならすぐにでもプールに入りたい所だが、掃除ロボットは、あと1時間くらいかかる。なので、我慢だ。

 今日のお昼はプールサイドの屋外用ソファでまったり食べよう。

 あ、因みに今日は私達以外に誰も居ません。陸はサッカーの練習、父は休日出勤、母は昔の友人とランチだとか。

 だから、私達3人分の食事を作るだけでいいのだ。陸の分を作らなくていいから、かなり楽だ。まあ、陸の食べっぷりも見てて気持ち良いので、作るの嫌いって訳じゃないけどさ。

 因みに、母の友人の女性は、昔は気合入ってたのかなあって人が多い為、ちょっと怖い。中身は凄い良い人なんだけどね。パッと見は尻込みしてしまう感じだ。母の交友関係は時々分からない。


「ご飯はなんですか!」


 違う事を考えていたら、希帆がご飯に食いついた。本当にこの子は食べ物になると反応が良い。

 まあ、そこが可愛いのだけどさ。変な男に餌付けされないかお姉さん心配ですよ。


「今日は、夏っぽくさっぱりした冷製パスタを作ろうかと思ってるよ」

「おお! あの山椒のジェノベーゼの写真テロ以来、空の作ったパスタが食べたかったんだ!」

「楽しみですね!」


 私が答えると目の色を変えて喜ぶ希帆。楓ちゃんも嬉しそうにしているが、テンションが圧倒的に違う。てか、山椒のジェノベーゼとか覚えてたんか。そんなに食べたかったのなら、既に2回うちに来てた訳だし言えばよかったのにね。

 いや、普通に考えたら言えないかな。私なら言えないわな。うん、足を洗ってご飯作りに行こう。


 お昼ご飯を作ると言っても、やる事は既にパスタを茹でるだけだったりする。既にソースは作って冷やしてあるからね。

 さて、冷製パスタな訳だし、やっぱり麺はカッペリーニだよね。冷たいパスタは細麺!

 まずは、パスタを茹でる。茹で時間は通常よりも1分くらい長めにするのがコツ。後で冷水で冷やすからね。普通の茹で時間だとしまって硬くなってしまうのだ。

 で、茹で上がったパスタをザルに上げ、流水で洗い、氷水でしっかり冷やす。

 冷やしたパスタをしっかり水切りして、迎えに行く前に作っておいたソースにバジルと一緒に入れて、全体を合わす。

 そして、皿に盛りつけて、生ハムと飾りバジルを乗せたら完成だ。粉チーズはお好みで。

 お皿は涼しさを演出する為に、透明なガラス皿にしてみました!


 あとは飲み物かな。夏と言えば麦茶だけど、この料理には合わない気がする。

 ここは、オサレ感を出す為に紅茶だろうか。うん、紅茶だ。使うのはダージリンのファーストフラッシュ。なんでかと言うと、タンニンが少ないからアイスティーにした時に濁りにくいのだ。

 まずは、沸騰させ少し冷ましたお湯で普通に紅茶を入れ、3分ほど置く。

 その後、茶漉しで漉しながら普通にサーバーへと移す。砂糖を入れるならこのタイミングだ。今回はどうしようかな。2人とも甘いの好きだし、少しだけ入れておきますかね。

 あとは氷を大量に入れたサーバーへと移し、一気に冷やすだけ。これでお店に出てくるような透き通ったアイスティーの出来上がり!

 冷蔵庫とかでゆっくり冷やすと、タンニンとかカテキンが出てきて濁っちゃうらしい。別に味に大差がある訳ではないけども、やっぱり透き通った紅茶って憧れるよね!

 さて、ご飯できたし2人を呼ばないとな。


「できたよー」

「「待ってました!」」


 私が声をかけると、ご飯を作ってる間、雪花せっかと一緒に遊んでいた2人が勢いよくこちらを向く。

 希帆の反応は予測できてたけど、楓ちゃんまで同じ反応をするとは意外だった。

 普段は、もっと慎みがあるんだけども。まあ、一生懸命掃除したからお腹減ってるのかな。


「じゃあ、私はご飯運ぶから2人はお茶お願いね」

「あれ? リビングで食べるんじゃないの?」


 私がお茶を運ぶように言うと、不思議そうな顔をしてそう聞かれた。

 あれ? 言ってなかったっけか。まあ、いいか。


「今日はプールサイドのソファで食べようと思うんだ。きっと気持ちいいよ」

「おー! いいねいいね!」

「なんか、リゾート地に来た気分ですね!」


 外で食べる旨を伝えると、キャッキャキャッキャと嬉しそうにはしゃぐ2人。

 しかし、楓ちゃんよ。ここはリゾート地じゃなくて住宅街なんだ。……海とか見えなくてごめんね。海が無いこの土地が悪いから、私は別に悪くないけどさ。って、これ誰も悪くないね。住んでる所のせいにしちゃいけないね。


 外で食べるご飯は美味しかった。

 閑静な住宅街で周りは静か。たまに車の走る音が聞こえる程度である。そして、時折抜ける風が頬を撫で、プールの水の香りを運び、夏の到来を思わせるのだ。これで、ご飯を食べ終わったら、清掃ロボットをちゃっちゃと片付けて泳ぐ事ができる。最高だろう、こんな生活。


「ふー、美味しかったねえ」

「美味しかったです」

「ふふ、お粗末さまでした」


 そう言って、2人は満足そうに紅茶を飲んでいる。ニコニコしながら食べる2人を眺めながらの食事は最高だった。

 自分の作ったご飯を美味しそうに食べてくれると言うのは、とても幸せな事だ。それが、可愛い女の子なら尚良い。


「私達、すっかり空さんに餌付けされちゃってますね」

「そうだねえ、でも幸せだからいいやー」


 食事を作ったのなんて数回なのに、そんな事を言い出した。希帆も同意するが、脱力して伸びてるので、いつものキレは無い。なんて言うか、プールサイドよりも縁側でお茶啜ってるのが似合いそうな脱力っぷりである。


 餌付けなんて大げさな、そんなに数作った訳でもないし。と言ってみれば、数なんて関係ないです。と楓ちゃんから言われ、希帆からは、フロランタンから虜だよ! と言われた。

 そんなものなのだろうか。しかし、希帆は餌付けされるの早くないかね? やっぱり変な男に餌付けされないか心配だよ。

 しかし、そんなに喜んでくれるなら、少し考えていた事を話してみようかな?


「ならさ、夏休みに海に行く時に貸別荘とかコテージでもかりる?」

「どういうこと?」

「なんでですか?」


 さすがに唐突だったのか、意味が分からないと言う顔をされた。


「貸別荘やコテージって食事が付かない代わりに安いんだよ。だから、普通の宿に泊まるお金で、自分達の好きな物を調達して食べられるってわけ。まあ、その代わり食事は自分で作る必要があるんだけどね」

「……つまり、海でたくさん泳いで、空の料理も食べ放題ってわけ?」


 私が詳しい説明をすると、希帆が真剣な顔をしてそんな事を言ってきた。

 ……酷くねーですか。私だけが作るんですか。一緒にお手伝いしてくれんですか?


「希帆ちゃん、そこは一緒に作りましょうよ」

「あ、そっか。それもそうだね!」


 よかった。私1人で作る事態は避けられそうだ。ありがとう楓ちゃん。あなたが居てよかった。

 しかし、あれだな。引率入れるとしても4人か。貸別荘をかりるには少ない感じが否めないな。ああいうのは人数が多ければ多いほど安くなるしなあ。食事を作るにしたって人数が増えた方が、1人頭の金額は減るわけだし。


「そう言えばさ。私達だけで行く? それとも誰か誘う?」

「ああ……どうしましょうね」


 ん? なんで2人は私を見るの? え、私が決める事なの?


「どう思う?」

「どう思います?」

「……まあ、人数増えた方が1人頭は安くなるよ?」


 私にはそう答えるしかなかったよ。嫌だとも増やそうとも言えず、ただ事実を述べるだけ。

 しかし、私がそう答えたからなのか、誰を誘うか相談を始めた。私の意見は、人数が増える事に肯定的と取られたらしい。まあ、正直どっちでもいいのだけどさ。


「で、誰誘う?」

「やっぱり、共通の友達がいいですよねえ」

「……と、なるとだ。……館林たてばやし君、宝蔵院ほうぞういん君、鍋島なべしま君辺りが候補なのかな?」

「次点で、今川いまがわ君と真田さなだ君でしょうか。柊さんとなつめさんはそこまで親しい訳ではないですし。今川君達も誘えるほど仲良くはないかもですね」

「そう考えると友達って男子しかいないね!」

「ですねえ、基本的に3人で居るので他の友達ってなるとあんまり考えてませんでした」

「じゃあ、誘ってみるのは、館林君と宝蔵院君、鍋島君かな。今川君達と、柊さん、棗さんは、それまでに仲良くなれたらって事で!」

「そうですね。空さんそれでいいですか?」


 ……ん?

 あ、ごめん聞いてなかった。行くならどこかなーとか、自分の望み通り場所になるなら、あの店は外せないなーとか考えてました。ごめんなさい。


「だからー。友達誘うって相談してたでしょ? で、館林君と宝蔵院君と鍋島君を誘う事にしたけどいいかって聞いてるの!」


 希帆の顔が、まったくもー! と言わんばかりである。うん、聞いてなくてごめんなさい。

 てか、あの人達って友達だったの? 友達? 友達ってなんだ?

 少なくとも、2人はあの人達を友達だと思ってるのだろう。でも、私は?

 そもそも友達ってなんだ? 希帆と楓ちゃんは友達だ。なんでかと言えば、仲が良いからになるんだろう。好きだし。じゃあ、仲が良くて好きなら友達なのか? あの人達と仲が良いかって言われたら……良いなあ。男子の中じゃ一番どころか、希帆と楓ちゃんに次ぐな。じゃあ、好きかって言われたら別にって感じなんだけど。好きでも嫌いでもないって友達なのかな。

 友達の定義ってなんだ! ああ、もうどうでもいいや。お好きにどうぞ!


 お好きにどうぞって言ったら、じゃあ決まり! って言ってた。早速、学校で会ったら誘うつもりだろう。

 そして、こんな話をしていたら、とても重要な事を思い出したんだ。


「その前に、一緒に行ってくれる保護者が必要だよね。さすがに」

「「あっ」」


 2人ともすっかり頭から抜けていたらしい。


「私の家は、陸と雪花が居るし難しいのだけど、2人は?」

「……私のうちは、弟達の世話があるし、無理だと思う」

「となると、可能性があるのは私ですか。ですが、共働きですし……」


 ……うーん。こりゃ立ち消えのフラグがありますよ。

 うん、よし! 今から心配して仕方ないね! 相談してみるだけしてみればいいのさ!

 よし、プール入ろうそうしよう!


「今から悩んでも仕方ないしさ。プール入ろうか!」

「そうだね!」

「そうですね!」


 誘ったら2人も了承してくれたので、清掃ロボットをプールから取り出し、さっそく泳いだ。

 途中、取り出してきたビーチボールで遊んだり、マット型の浮き輪でまったりしたりした。

 そして、休憩中にフルーツポンチを食べて、また遊ぶ。遊んだ後はホットタブに入ってまたまったり。

 母が夕方に帰ってきて、買い物も済ませてきたようだったので、一緒にお手伝い。

 女の子が2人増えると一気に食卓が華やぐと喜んでいた。ちなみにメニューは中華丼と春巻きでした。春巻き美味しいです。


 で、さすがに明日も学校があるので、送って1日終了。

 さすがに今日は館林には会わなかったよ。希帆達を送るたびに会ってたらびっくりだけどね。


 あ、学校に一緒に行く件は明日から早速実行される事になりました。

 遠足前日の小学生並に楽しみにしてます。

サービスシーンがダイジェスト。それが、なんぞクオリティ。

……ホントすんません。

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