人混みに流されて。―月夜
タイトル見てたら卒業したくなってきた。
「………………さて、と。ねぇ雪乃、次はどこ行こっか?」
「そう、ねぇ………………ご飯にはまだ早いし………………灰谷さんは、どこか行きたいところある?」
「い、いえっ………………あー、こういう所、あんまり来ないんで………………すいません………………」
慌てて謝る。………………あー、もう、貧乏なの丸出しじゃん………………
「ん、忘れてた………………雪乃の制汗剤と、月夜ちゃんのシャンプー。」
「そういえば、それを買いに来たんだったわね……………… 灰谷さんを着せ替え人形にするのに夢中で、すっかり忘れてたわ。」
「なっ、き、着せ替え人形って………………」
「あはは、確かに楽しかったからねぇ。」
「墨森先輩まで………………」
わ、私ってもしかして遊ばれてる………………?
「………………そういえば、先輩達は春物は?」
「ん、いいの無かったからパス。」
「そうですか………………」
………………ちぇ、私も先輩達に『シカエシ』したかったなぁ………………
「………………あ、今『シカエシしたい』とか考えてたでしょ?」
「ど、どどどどどどうしてそれをっ!?」
「あ、図星なんだ………………」
か、カマかけ………………?
「………………ま、着せ替え人形ごっこはまた今度………………ね? でないと雪乃が嫉妬しちゃうからっ♪」
「し、しないわよっ!?」
白峰先輩がぷりぷりと怒ってる。………………うーん、いつもはクールな感じだけど、墨森先輩が絡むとどうも暴走しやすいんだなぁ………………白峰先輩。
「………………ほ、ほらっ、さっさとシャンプーとか見に行くわよっ、さぁっ、」
「はいはい、分かったって………………」
白峰先輩に引きずられるようにして、下の階にあるドラッグストアへと向かう。
「んーと………………雪乃、こっち」
来慣れてるのか、すたすたとエスカレーターに歩いていく白峰先輩を墨森先輩が止める。
「なんでよ、こっちじゃないの?」
「ほら、月夜ちゃん今は超ミニだし」
「………………確かに」
………………そ、そういえばそうだった………………慌ててスカートの裾を押さえる。
「バレーのパンツって結構ミニなのに、足出すの慣れてないの?」
「そ、それとこれとは話が別なんですよっ………………」
「まぁ、分からなくはないわね………………」
白峰先輩みたいに筋肉付いてるならいいけど、私の足細いからなぁ………………
「それなら、向こうのエレベーターで降りましょ」
そういう訳で3人でエレベーターの前に並ぶと、扉が空いた瞬間に人混みに襲われる。
「おわっ!?」
「は、離れないようにくっついてっ!?」
人混みが引くと、同時にエレベーターへと入り込もうとする人の流れに押し込まれる。………………や、やばいっ、先輩達を見失った!? 扉が閉まる前に辺りを見回すけれど、見つからなくて。
「ちょっ、雪乃、月夜ちゃん、いるっ!?」
扉が閉まってからそんな声が聞こえてくる。
「こ、ここにいますっ」
「私もここよ」
すぐ近くで声がして、顔をあげればそこに二人共いた。
「………………ふぅ、死ぬかと思った………………」
「ほんとに。今日はすごい人手ね………………離れないように、手でも繋いでましょっか」
言うが早いか、白峰先輩が墨森先輩の手を握る。
「じゃ、じゃあ私もっ」
そう言って手を差し出すと、ちょうどエレベーターの扉が開いて人の群れに襲われる。
「うわぁっ!?」
「つ、月夜ちゃんっ!?」
すごい力で流されそうになって、必死に手を伸ばす。その手を墨森先輩が掴んで引き戻すと、そのまま抱きとめられる。同時に扉が閉まった。
「………………ふぅ、危ないところだったぁ………………」
「………………………………」
「あ、大丈夫だった? ………………って、おーい、月夜ちゃん………………?」
墨森先輩の呼びかける声が、なんだか遠く聞こえて。
「………………あぁっ、す、すいません………………」
慌てて身体を離すと、そのまま後ろを向く。
(………………せ、先輩って、こんな柔らかかったんだ………………)
荒くなる息を誤魔化すのが精一杯だった。




