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知らない雪乃。―望乃夏

「………………どう?落ち着いた?」

「は、はい………………なんとか………………」

んく、んく、と、ボクの入れたアールグレイを飲み干す美鳥ちゃん。………………うーん、ほんとに耐性ないんだなぁ………………

「………………………………ごめんなさい、その………………奥手で、そういうこと苦手なんです………………………………あ、あのっ、………………この学校に入ったからには、やっぱりそういうことしないと浮いちゃうんですか?」

「いやいや、そんなことないって。………………むしろうちらは、特殊な方、かな。まだ仲良くなって半年も経ってないし………………」

「そ、それなのに、こんなに息ピッタリ………………」

「あはは、そこはほんとに不思議だよねぇ………………なんか雪乃とは、初めて会った時からお互い気になってたって言うか………………………………」

「の、望乃夏………………もう、その辺に………………」

雪乃が目に見えてモジモジする。………………いや、可愛いんだけどさ、照れ隠しに絨毯の毛を引っこ抜くのはやめて?そこだけハゲちゃうからっ………………

「おーい、そこのあまあまカップルさんよー………………………………何のためにあたしらを招き入れたのか、そろそろ思い出してくれるとありがたいんだけどー?」

文化の呆れたような声に、急に現実に引き戻される。………………………………あれ?そういえば何をしようとしてたんだっけ………………?

「………………ちぇっ、このまま話を流して、ビデオ見せないようにしようと思ったのに………………」

「おっと、そうはさせないぞ?………………ぐふふ、こんないいもんを1人だけで仕舞っとくのは勿体ないからねえ。それじゃ流すぞー。」

文化が、ベッドサイドの小型テレビ―――『帰りがいつも遅くなって申し訳ないから』って、春休みに雪乃が見つけてきてくれた―――にビデオカメラを繋いで、再生ボタンを押した。

まず写ったのは、………………『お花畑』。

「ちょっと文化っ!?なんてもの撮ってるのよ!?」

雪乃が慌ててビデオカメラに手を伸ばすと、一瞬先に文化がビデオカメラを取り上げる。

「いやー間違えた間違えた。これテスト撮りのやつだったわ。」

「も、もっと他のものでテストしなさいよっ!!………………………………なんでまた、更衣室の中なんて………………」

「え、けっこうノリノリで撮らされてくれた子もいるよ?」

画面に目を戻すと、確かにそこには画面に向けてピースする子………………ってこれ、栗橋さんじゃん………………せめて胸ぐらいは隠そうよ………………

「………………………………文化、私はこんな事のために、ビデオカメラ代を部費から捻出する許可を出したんじゃないんだけど?」

雪乃がポキポキと指を鳴らす。

「さ、さーて、そろそろ次のテープ流そうかなっ」

文化がビデオカメラを止めて別のテープを差し込む。

「こ、これは、部活紹介のやつだからな?」

「な、なんでそんなの持ってきたのよっ!?」

「え、何それ見たい見たい。」

「望乃夏っ!?」

あわあわする雪乃を尻目に、テープが回る。まず映し出されたのは、緊張して引きつった顔の雪乃。

『は、はじめ………………まして………………現バレーボール部部長の、白峰』

「にゃぁぁぁぁっ!?」

雪乃がビデオカメラからテープを引っ張り出す。

「あっこらっ!!そんな乱暴に扱うなよっ!!壊れたらどうすんだっ!!」

「う、うるさいうるさいうるさーい!!の、ののかっ、今見たことは忘れなさい、いいわねっ!?」

「ひっ!?………………わ、わかり、ましたっ!!」

あまりの剣幕に思わず後ずさる。………………さ、さっきトイレ行っといてよかった………………

「………………それじゃあ本題に入ろうか。」

「ちょっと待って!!じゃあさっきまでのは何だったの!?」

「あ、これこないだの練習試合のじゃん。いやぁこれは相手が可哀想だったよな………………雪乃のスパイクでエース物理的に潰しちゃってトラウマだらけにしたし」

「文化は話を盛らないでっ!?………………それに流れ弾食らわしたのは黒木先輩よ。それでも、ボコボコにしたのは否定しないけど………………」

「否定しないんかいっ。」

「あ、あのぉ………………とりあえず、試合のビデオ見ませんか?………………私、白峰先輩の戦い方、見てみたいですっ。」

月夜ちゃんが恐る恐る切り出す。

「………………み、見て面白いものじゃないわよ?」

「………………いや、憧れてたんで………………」

「………………………………そ、そう?………………も、もうっ、仕方ないわねっ………………」

………………雪乃、チョロい。しかも月夜ちゃん、こっち向いて一瞬ベロ出したし。

「………………お、始まった。」

画面を覗き込むと、そこには、ボクの知らない雪乃が居た。

『ハァァァっ!!』

『カバー遅いわよっ!!』

『ジュリ!!撃ち落とせっ!!』

画面から聞こえてくるのは、雪乃の怒号と重い音が大半。思わず雪乃の方を向くと、雪乃は明後日の方向に向かってお話してた。………………おーい、ゆきのー?

「………………とまぁ、これが雪乃の真の姿なわけだが。」

「………………こ、怖いですね………………」

月夜ちゃんがぶるりと震える。

「………………さ、さっき相手にしなくてよかった………………」

美鳥ちゃんはすっかり顔が青ざめている。

「いや、すっかり安心してるみたいだけどよ………………土日練だと二つに分かれて模擬戦があるんだよなぁ。」

「「ひっ!?」」

新入生二人で抱き合ってがたがたと震える。………………おーい、大丈夫かーい?

「はっはっは、そう怖がるなって。だいたい1ヶ月もすりゃ慣れるからよっ。………………それまではオムツ履いてた方がいいかもよー?チビったら自分で掃除しろよー?」

「ち、チビっ………………」

二人共お腹の下に手をあてて真っ赤になる。

「………………………………雪乃、まさか………………ね?」

………………ってあれ、おーい、雪乃ー?

「………………私ってそんなに怖いのかしら………………」

そこには、鏡の前でにらめっこする雪乃が居た。

………………うん、もう考えるのやーめたっ。

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