表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/46

フルーツポンチ。―雪乃

「…………あれ? 雪乃は何も頼まないの?」

「うーん…………自分の分まで手が回るかどうか分からなかったし、何も頼んでなかったわ…………」

なにせそこかしこに遠慮しない部員達がいるからね?

「あ、なら、ボクの食べかけだけど、食べる? 」

望乃夏がフルーツポンチを差し出す。

「あら、いいの? 」

ひとさじすくって口の中に流し込めば、しゅわわっとした感覚とフルーツの甘みが混ざりあって不思議な味になる。………………もっと欲しい、けど流石に望乃夏のを全部食べるわけには………………

「いいよ、全部食べちゃっても」

「ふぇ?………………ほんとに、いいの? 」

「いいっていいって。………………だって雪乃が物欲しそうに眺めてるのに、そこから奪い返す気にはならないよ………………」

「そ、そんな目で見てないからっ!? 」

………………し、失礼しちゃうわね。いくら私が食いしん坊だからって………………

「………………………………し、白峰、さん………………そ、そのスプーンってさ………………い、いわゆる間接キスって、やつ、だよね………………」

「ん? 」

その声に振り向くと、妙にモジモジする陸上部の長距離走組御一行様――の中の、長木屋さん。

「あら、それがどうかした?」

「………………へ、平然と………………私にもそれぐらいの積極さがあれば………………」

勝手にまた沈み始める。………………もう、一体何なのよ………………

「………………って、あら? 長木屋さん達はサイダーだけなの? 」

「………………うん。実はもうすぐ大会があるからね、それで今からカーボローディングしてるとこ」

「かーぼ………………?」

「あれ?白峰さん知らなかったの?………………毎日ご飯ばっかり食べてるから、ずっとやり続けてるのかと思ったけど………………」

「それどういう意味? 」

ぐいっと迫ると長木屋さんが後ずさる。

「す、ストップストップ!! ………………一応説明すると、カーボローディングってのは即効性のあるエネルギーを効率よく溜め込むためのトレーニングで、実力が必要な時の一週間前から四日前ぐらいまではすごくトレーニングして、フライドチキンとかお肉とかそういう油っこいものを食べるわけ。それで一度エネルギー源を枯渇させて、三日目からは炭水化物のオンパレードすることで当日はエネルギー源が溜まってるって寸法よ。」

「………………へぇ、そんなトレーニングが………………」

今度やってみようかしらね。………………でも、いくらご飯が好きだとはいえお肉が食べられないのはちょっと………………

「なるほど、つまり雪乃は常時カーボなんとかしてる状態ってわけかぁ………………………………道理で一日中スタミナある訳だよ、全く。」

望乃夏がなぜか納得してる。………………うーん、確かにこれが原因なのかしらね………………………………。

「い、一日中って………………」

長木屋さんがなぜか赤くなる。………………どうしたの? 周りを見渡すと、ほとんどの人が赤くなったりそっぽ向いたり………………………………え、望乃夏まで!?

「へぇ、一日中元気、ね………………。」

文化がニヤニヤする。………………………………あっ!?

「そ、そう言う意味じゃないからっ!!に、日中よ日中!!」

「ねぇねぇ墨森ちゃん墨森ちゃん、いつもはどっちから切り出してどっちが攻めるの?あとどっちが上に乗るの?」

「文化はそんなの聞かないで!?」

「え、えっと………………」

「望乃夏も答えようとしないで!?」

「………………………………いや、白峰さん………………その受け答えで大分(だいぶ)認めちゃってるような………………」

長木屋さんが重々しく言うと、私の熱はますますヒートアップする。………………ぽふん。

(やっぱりヤってるんだ………………)

(い、いいなぁ………………)

(………………え、これが普通なの!?)

色んなことをヒソヒソ話してる方に向かってひと睨み。………………うん、静かになったわね。そのままクルンと陸上部の方に向き直る。

「………………それにしても、大会前のこんな大変な時に、こんなバカなトレーニングに付き合わせちゃってごめんなさいね。」

「あ、あぁぁぁぁいやいやっ!?いいんですよそんなのっ!!」

我に返った長木屋さんが慌てて否定する。ところで陸上部の皆さん、なんで私の目を見てくれないんですかね?

「はっはっは、なんだカーボなんとかって?そんなんやってるから体力つかねーんだろ。肉食え肉を。」

「黒木先輩は茶化しちゃダメですよ。彼女達だって真面目なんですから………………」

怒ってるかなぁ、と横目で見ると、皆さんそっぽ向いてるわけで。

「おい有里紗、志乃は元気か。もののついでに由輝も元気か?」

「もののついでにって………………由輝先輩は今『最後の追い込みー!!』って走り込んでますよ。あと志乃先輩は相変わらずです。」

「ハッハッハ、だろーな。相変わらず何も考えてなさそうなツラしてたしよっ。………………ところでなんであいつら来ないんだ?」

「志乃先輩が由輝先輩に引っ張ってかれたんですよ………………『このままだと補習一直線だよー』って。」

「うっへぇ………………おお怖。そうか由輝にか………………」

黒木先輩が身震いする。………………………………それにしても、黒木先輩って陸上部と仲いいんですね………………

「ん、ああ。元は陸部だしな。………………それによぉ、俺は由輝のヤツにちょっっっっとした弱みを知られてるもんで」

「………………………………複雑ですね。」

………………ほんとにこの部って複雑だわ………………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ