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文芸コラム 『言葉の精練』 -魔法に変わる言葉-  作者: Kobito


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祝!第50回記念 猫子が生まれた時 【前編】 (作・古寺猫子)


皆さん、お久しぶりでございます。美猫の古寺猫子です。

大雨、地震、猛暑、続けざまの台風という、天災続きの今日この頃ですが、皆さんは大過なく、ご無事でお過ごしでしょうか?

私はお陰様で、夏の暑さニモマケズ(時折、ご近所のお茶屋さんで、口どけなめらかなソフトクリームを頂いて、暑気払いさせて頂きながら)、元気に過ごさせて頂いております。

さて、今回は、〝祝、文芸コラム『言葉の精練』第50回記念〟、という事で、わたくし、猫子が生まれた頃の思い出話を、皆さんにお聞かせしようと思っております。

え?Kobitoさん得意の「どうしても言いたいコラム投入」を無事にかわして、第50回の節目を予定通り担当できて、嬉しいんじゃないかって?

そりゃあ、もう、文芸なんていうややこしいテーマのコラム連載で、とうとう第50回という節目にまで到達したんですからねぇ。私も、一担当者として万感の思いがあるわけですし、記念回は譲れないな、という思いは、正直言ってあったわけです。

それでね、実は早くから、この回の担当を、狙ってはいたんですよ。で、どうしたかって言うと、Kobitoさんに勘付かれないように、登場回数を調整して、第50回が私に回って来るように、計画的に、陰謀いんぼうをめぐらせていたわけです。

ところが、その私の健気けなげなミッション・インポッシブルを、無残に打ち砕く、Kobitoさんの「どうしても言いたいコラム投入」の提案が、さく裂したわけです。

それを聞いた時の私の動揺ぶりは、皆さんも想像にかたくないでしょう?

ですから、私もつい本音が出てしまって、

「節目の第50回は、ぜひとも、私に担当させて下さい!」と、率直に訴えることになったわけです。

そしたら、Kobitoさんったら、「うーん、そしたら、私の回は、『第50回目前記念』とかにして、本来の『第50回』は、その次に回して、それを猫子さんに担当してもらう、という形にしてはどう?」って提案したんです。

どうでしょう。この、私の無駄骨むだぼね感。

最初から、普通に「第50回を担当したいのですが、ご都合はいかがでしょう?」って、Kobitoさんに相談すればよかったんですよ。

まあ、そういう事で、今、私は、うれし恥ずかしという心境で、第50回を担当するという栄誉えいよを、もくもくみしめているというわけなのです。


では、程よくオチも付いた事ですし、そろそろ、本題の、『猫子が子猫だった頃のお話』を、始めさせて頂くとしましょうかね。


皆さんもご存じの通り、化け猫というあやかしの力は、生まれ持っての才覚さいかくではありません。

長命ちょうめいな猫の中の、ごく一部の猫が、その能力に目覚める、わば、亀のこうより年のこうの能力なのです。

ですから、当然の事として、生まれたばかりの頃の私は、ごく普通の、かあいらしい、どこにでもいる、いたいけな子猫だったのでございます。

私は、生まれたとき、栗饅頭くりまんじゅうくらいの大きさだったそうです。

お寺の住職さんの住まいの、物置にしていた奥の部屋の、ほこりをかぶった書棚やがらくたに囲まれた、長持ながもちの後ろの、文机ふみづくえの下が、私の生まれた場所でした。

私には、二匹の姉弟きょうだいがいました。私は三毛、姉は白毛、弟は、白地に黒のぶちの毛色でした。まだ、目も開いていない、生まれたばかりの時は、三匹で身を寄せ合って、ニーニー鳴きながら、食べ物を探しに外へ出かけたお母さんの帰りを、大人しく待っていたものです。

お母さんは(銀毛の猫でしたが)、物置部屋の奥の、土壁の高い所に開けられた、何だか分からない四角い窓のような穴から、出入りしていました。

その穴の向こうには、太いはりが並んだ屋根裏があって、斜めの屋根と梁が接する奥の壁際には、ちょうど猫の頭くらいの三角形のすき間が開いていて、そこから明るい外の光が、暗い屋根裏に差し込んでいました。お母さんはいつも、そのすき間をすり抜けて、瓦葺かわらぶきの屋根へ出ているのでした。

もちろん、それは後で知った事で、その時、まだ目も開いていない子猫だった私たちは、ただ身を寄せ合って丸まって、周りの音に聞き耳を立てながら、時々ニーニー鳴いている事しかできませんでした。

お母さんは、とても静かに帰って来るのですが、子猫たちは、そのかすかな気配と、日向ひなたのようなお母さんの香りを感じ取った者から、順々に頭をもたげて、「ニーイ!」「ニーイ!」と、ありったけの声で、その感じがする方に呼びかけました。

すると、お母さんは、もう私たちのそばに来ていて、一匹ずつの頭や体を、念入りに毛づくろいしてくれながら、横たわって、そのお腹に、いっせいにい寄る子猫たちを、招き入れてくれるのでした。


子猫たちは、お母さんの柔らかな毛並みと心地良い香りで、いっぱいに満たされながら、無我夢中になって、温かいお乳を飲ませてもらったのです。


お母さんのお乳と、甲斐甲斐かいがいしいお世話のおかげで、やがて、脚腰がしっかりしてきた子猫たちは、少しずつですが、文机の下から、出てみるようになりました。目はもう開いていますが、まだぼんやりとしか見えません。三匹の子猫のうち、姉の子猫は、大胆な性格だったので、よく、付き合いの良い私を従えて、ちょっとした冒険の旅に、出かけてみるのでした。

そして、大抵は、長持の後ろから出たあたりで、外から帰ってきたお母さんに見つかって、一匹ずつ、首根っこをくわえられて、手際よく、文机の下に、連れ戻されてしまうのでした。

末の弟の子猫は、割合慎重な性格だったので、姉や私から誘われても、文机の下から出てみようとはしませんでした。いつも、姉が私を誘って、長持に沿って歩き出すと、弟は心配そうに、文机の脚の陰から、髪をまん中で分けたような模様の頭を、少しのぞかせて、鼻をくんくんさせながら、大人しく見送っているのでした。

猫の姉弟きょうだいだって、人間の姉弟と同じように、一匹一匹、こんなにも性格が違うのですよ。

でも、この三匹の性格の違いが、後に大きな運命の分かれ道になろうとは、その時の私たちには、知るよしもなかったのです。


つづく



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すごく良い所なんですが、ちょっとお話が長くなって来たので、今回はこれで終わりにして、第51回で、気になる続きをお話しする事にしますね。

記念回なのだから、一回くらい多めに担当させてもらっても、ばちは当たらないでしょう。

ねぇ。Kobitoさん?


それでは、皆さん、またお会いする日まで、どなたも御機嫌よう。


猫子




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