表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプライアンス部の青葉さんは恋をしたい~関わるとトゲがある美人同僚に同棲を提案された件  作者: 潮海璃月/神楽圭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/42

第40話 青葉さんは脱線しがち

 俺と青葉さんは、会社を挟んでほぼ真逆の位置に住んでいる。そのせいで、最近はすっかり財布が軽い。口座残高に比例してアプリが重くなる仕組みがあったら、こっちも随分軽くなってしまっているに違いない。


 電車に乗ってすぐは、ある意味放心状態にあった。でもしばらくして、青葉さんのLINEに返事をしていないどころか、今から行くとも言っていないことに気付いた。


 LINEは「で、結局爆美女って何?」で止まっている。こちらは一世一代の決心をしたところだというのに、なんでこんなくだらないメッセージを見なければならんのだ。


 しかも何を言えばいいのか余計分からなくなった。困り果てた末に、無難なメッセージを送る。


『もう家着いてんの?』


 そわそわと既読を待つ。青葉さんはいつも既読が早いのに、こんな時に限って返事がない。俺がしばらく返事をしなかったせいだろうけども。


 ……寝てたらどうするんだ。叩き起こすのか。勢いで電車に乗って何も考えていなかった。乗り換えながら狼狽する。いや青葉さんは夜型だと知っているが、だがしかし。


 青葉さんからの返事は、最寄駅に着いてもないままだった。やってしまったか。俺は突然部屋の扉の前に現れる不審者になってしまうのか。ここにきて、同居同盟締結直後の柿井さんとの会話が頭に浮かんだ――どんな場合に男は有罪とされるのか。いやいや、今更そんな伏線回収がされて堪るか。


 その矢先、やっと、LINEがきた。


『一人寂しく金獅子狩ってる』


 思わず通話アイコンを押していた。青葉さんの欠けた茶碗のアイコンが表示され、すぐに通話中に変わる。


「《びっくりした、どうしたの?》」

「いや、いま駅に着いたから。もういいかなと思って」

「《ああ、もう家着くってこと?》」

「青葉さんの」


 勢いよく口にすると、電話の向こうが沈黙した。


「《……明日の食パン買ってないんだけど》」

「どうでもいいよそんなことは!」


 笑いながら叫ぶと、電話の向こうの青葉さんも笑った。どうでもよくないよ、パン派なのに、と言っている。


「《爆発する美女に対する警護?》」

「そうじゃないんだけど」

「《もうすぐ着くってこと? あと5分くらい?》」

「いやもうマンション見えてる、1分くらい」

「《メリーさんじゃん》」

「人を勝手にホラーにするな」

「《爆発する美女の伏線回収来たと思って》」

「結局青葉さんの中ではホラーなのかよ、それは……」

「《いつまでも返事くれないからちゃんと調べたよ。激おこみたいな感じね》」

「本質に行きすぎて逆に意味の分からない説明になってるぞ」

「《そういえばこの間、人事のハイゲルさんが『げきおこ』って言ってて笑っちゃった。語彙が可愛すぎる》」

「ハイゲルさんの流暢さ謎過ぎるな。って、そうじゃなくて……」


 なんでこんなくだらないことばかり話さねばならんのだ。笑いながら、エレベーターを待つのも煩わしく、階段を上った。心臓がうるさく鼓動するのは運動不足のせいかもしれない。


「《階段? いま何階?》」

「3階。心折れそう」

「《折れるのは足では?》」

「さすがにそこまで運動不足じゃない」


 さすがに5階まで階段は馬鹿げていた。寒さなどとうに消え、コートが鬱陶しいくらい暑かった。


 やっとのことで階段を上りきり、通路に顔を出すと、一部屋の扉が開いた。いつものもこもこカーディガンを着た、眼鏡姿の青葉さんが顔を出していた。


「おかえり」


 目の前と耳の横と、二つの声が聞こえる。通話を終えながら、少し息切れもしながら部屋の前まで歩いた。


「それで結局、爆発する美女の警護じゃなくてなに?」

「青葉さんが好きだって言いにきた」


 青葉さんは扉と口を半開きにしたまま、目を点にしていた。


 もう俺に終電はなかった。


「青葉さんが好きだから、会いに来た」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ