91.王女の企みは消えない
「もう!なんなの!?
またお父様やお兄様に叱られたわ!?
どうして私が叱られなきゃいけないの!
悪いのは私が呼んだのに断ったレイニードの方じゃない!
王女の誘いを断るなんて、ありえないわ!」
謁見室まで呼ばれたと思ったらお父様に叱られて、
ちゃんと説明したのに聞いてもらえなかった。
私が、王女が呼んでいるというのに断るなんて不敬だわ!
そう言ったのに、まだお前はわかっていないのかってため息。何よ、それ。
その上、私の侍女を全部女官に入れ替えするなんて…ありえない!
私室に入って、近くにあったクッションを手に取って壁に投げると、
棚にあたって何かが割れた音がした。
それに気が付いたのか、音もなく入ってきたのは見慣れない女官で、
私に目を向けることも無くそれを片付けて去って行った。
「もう!なんなのよ!
だから女官なんて嫌いなのよ!」
私の言うことを何でも聞く侍女も、脅して縛り付けてある侍女も、
使える者は全部いなくなってしまった。
女官に言うことを聞かせよう思っても、何か言えば全部女官長に伝わってしまう。
あの真面目でちっとも優しくなくてニコリともしない女官長に。
どうしてこうもうまくいかないのかしら。
レイニードに兄がいると聞いて、とりあえずそっちでいいと婚約の話をしたのに、
ライニードにも断られるなんて…おかしいでしょう?
この国のたった一人しかいない王女の求婚を簡単に断るなんて!
ジョランド公爵家嫡男と婚約してしまえば、後はどうにでもなる。
ライニードが亡くなればレイニードが嫡男になるのだから。
婚約していた嫡男が亡くなった場合、
その弟を嫡男にして婚約を継続させるというのはめずらしいことじゃない。
レイニードの婚約は婿入りだと聞いている。
だったら、レイニードが公爵家を継ぐことになれば、間違いなく婚約は解消される。
これならレイニードに直接婚約話を持って行かなくてもいい。
今は魔術師を目指しているとしても、公爵家を継ぐとなれば話は別だ。
もともとレイニードが魔術師になる理由は、
婿入り先が魔術師の家系の侯爵家だからだと聞いている。
レイニードが公爵となり、私が降嫁する。
これで何の問題も無いじゃない?
そう思ってジョランド家に婚約を申し込んでもらったのに。
10年は結婚する気が無いって、なにそれ。
そんな理由で断るなんて、ありえないでしょう。
8歳の令嬢と婚約話を進めているって…本気なの?信じられない。
お兄様にも何とかしてってお願いしたのに、
その令嬢の姉と婚約したってデレデレしていて話にならなかった。
もうこれはレイニードに会って、婚約を承諾させるしかない。
本人がいいというのなら、お父様たちだって文句は無いだろう。
そう思って夜会に来ているレイニードを連れて来てもらおうと思ったのに。
どうしてうまくいかないの!?
侍女を全部取り上げられて、他の貴族との文のやりとりも禁じられた。
…悔しいけど、今は何もできない。
まずは手駒を増やしてから…でも、侍女はもう手に入らない。
学園の入学まであと三か月…その間はおとなしく過ごすふりをして…。
学園に入学したら…令息や令嬢を味方につけて、また力を持てばいい。
レイニードは誰にも渡さない。あれは私の騎士だもの。




