03 お茶会しませんか?
お待たせしました。
主人公視点です。
※申し訳ございません。シェリルは一回だけアストリー家主催のパーティーに出ていましたので訂正しました。
2021.1.12
※
「ん~……よく寝た」
私は今、絶賛一人就寝を満喫中。
一人で寝ているせいか、フィランダーと添い寝している時より清々しい朝だ。
「おはようございます。シェリル様」
「おはよう。今日はセリーナの番?」
「はい。服は何になさいますか?」
「今日は……緑にする」
「かしこまりました」
セリーナは緑のワンピースを手に、私の着替えを手伝ってくれた。
「今日は調子が良い様ですね」
「そうなの。一人で寝ているのが良かったみたい」
「それは……良いのか悪いのか、判断しかねますね」
使用人からすれば、主人と寝ない方が調子が良いのは複雑だろう。フィランダーと一緒に寝ていた時は知らず知らずのうちに緊張していたのかもしれない。
支度が終わり食堂へ向かうために廊下に出ると、ネルとルースが待っていた。
「「おはようございます、シェリル様」」
「おはよう。あれ? ネル、何か良い事あった?」
「あ、分かります?」
ふふふと笑うネルにセリーナとルースは苦笑いだ。
「食堂に行ったらお話ししますね」
「あ、うん」
何だろ?
食堂に降りると、椅子に座っているフィランダーと側に立ってるトミーが私達を待っていた。
「おはよう、シェリル」
「おはよう」
私が席に着くと、早速ネルから報告を受けた。
「実は副侍女長を一旦降りる事になりました」
「……え?」
私は思わず目を丸くした。
「それでですね、新たな副侍女長をコリーンが引き継ぐ事になったのです」
「コリーン」とネルが呼ぶと、彼女はネルの横に立つ。
「本日より、副侍女長として精進致す所存です」
「あの……ネル……いいの?」
「はい。私はシェリル様の侍女として専念したいので」
「時期が来れば、交代する予定ですから」
「それなら良いんだけど……あ、コリーンが嫌って事はないからね。しっかりやってくれそう」
「ありがとうございます。あの、シェリル様。なかなか直接言う機会がありませんでしたので、この場を借りてお礼を伝えたかったのです。私もですが……夫が大変お世話になりました」
「……夫?」
コリーンの夫なんて……ピンと来ない。
そういえば、うちの使用人達は全員結婚してるんだっけ?
「ごめん。コリーンの夫って誰?」
「私の夫はクリフと言います」
「………………え!?」
クリフって二十歳くらいだったよね? コリーンは確か……二十五か六だった様な……え!?
「私の方が六つも年上ですが優しい夫です。夫の心からの笑みを見る事が出来たのはシェリル様のお陰です。本当にありがとうございます」
「あ……うん、それは……よかった。うん」
それを見ていたフィランダーはクスクス笑う。
「シェリル。動揺しっぱなしだよ」
「だ……だって。どれにどう驚けば良いのか分からなくて……。あー……結婚した相手も一緒に覚えておけばよかった」
するとフィランダーが私から目線をそらした。
「あー……実はまだシェリルに紹介していない使用人達がいるからね。言っても分からないと思う」
「……それ、影の人?」
気まずそうな顔でコクリと縦にうなずくフィランダー。
「影だって知らない方が良い事もあるからさ。新婚旅行の時に一部の影が着いてくる予定だからその時に紹介するよ」
「一部だけ?」
「ごめんシェリル! 隠れて動きたいのも居るから……」
「……分かった。ちょっと不満だけど我慢するわ」
すると食事が運ばれてきたので、私は食事に集中する事にした。
朝食が終わり部屋に戻ってソファーへ腰を下ろすと、セリーナが「お願いがあります」と申し出た。
「何?」
「お茶会しませんか?」
「え……誰か呼ぶの?」
「いいえ。私達とです。この四人でやりませんか?」
「は? 四人で?」
「はい!」
「う……うん。やろうか」
セリーナに私は圧倒された私は、この日急遽侍女達と四人のお茶会を開く事になった。
急な事なので令嬢や夫人達がやるテーブルセッテングされたお茶会ではなく、ごく身内で行う様な簡易的なものだ。
私の部屋のソファーの前のテーブルには、今日のお茶請けが一人一つずつ用意された。今はネルがお茶を用意しているところだ。
私は内心ウキウキしていた。
家族以外でのお茶会は初めてだったから。
「私、お茶会って出た事ないから楽しみ」
思わず心の声が漏れた私の言葉に侍女達が固まった。
「……え? シェリル様。お茶会は……一度も?」
「そうよ」
「どうしましょう。きちんと正式にセッティングした方が……」
「いいよ、このままで」
私が押し切り皆の席にお茶を配り終えたあと、全員ソファーに腰をおろした。
「お茶会って言っても、何をして良いのか分からないのよね」
「今回は私達とだけですから雑談に近いと思います」
「雑談……」
「シェリル様はご実家のお茶会にも出席されなかったのですか?」
領持ちの貴族は社交シーズン中、お茶会とパーティーを最低一回は開かなくてはならない。免除されるのは困窮している家くらいだ。
シェリルの実家であるアストリー家も王都にいる時はお茶会もパーティーも開いていた。
「そうなの。いつもいつも体調不良で……自分家のお茶会も出た事がなくて……パーティーは一度出たけど……もうグループが出来てて入れなかったのよね」
「そうなのですか!? では慣れないとですね」
「と言っても、私達はあまり存じ上げないのですが……」
すると、ネルが渋い顔で口を開いた。
「私は出た事ありますけど……その……イーディス様のなので……」
「あぁ……」と皆で察する。
「悪口大会かしら?」
「それに近いですね。皆、貴族ですから率直には言わないですけど……聞いていてあまり気分の良いものではありませんでしたね」
「わ……私達のはそうではなく……そう。腹を割って話しましょう」
「腹を割る?」
「そうです。例えばまだシェリル様はネルの一族が元貴族って事をご存知ないでしょ?」
「そうなの?」
「えぇ。と言っても、テナージャ王国時代の話ですよ?」
「聞きたい」
「では……」
ネルの一族とトミーの一族はそれぞれテナージャの下位貴族だったそう。テナージャ王国時代に繋がりのあった上位貴族が不祥事を起こした。その巻き添えを喰らい、没落する事態になったのだという。
「その時に助けて頂いたのがヘインズ侯爵家なのです。以前ヘインズ侯爵家は水の精霊に好かれている家系と言ったのを覚えていますか?」
「うん。覚えてる」
「私とトミーの一族も水の精霊に好かれる家系だったのです。その縁もあってか当時の当主様が受け入れてくださいまして……それ以来、ここでお仕えしているのです」
「なるほど。だから水魔法が使える人が多いのか」
テナージャ人は精霊から魔法を授かった一族と言われている。
なので生まれたあとに精霊が憑き、魔法が得られるという考え方なのだ。
魔力過多症は強い精霊に好かれ過ぎて身体が耐えられなくなってしまう事から発症してしまうのだという。
「必ず水になる訳ではなのですが……たまたまですね」
「精霊ね……ねぇ、精霊って見た事ある?」
「え!? ありませんよ! 精霊を見て話せるのは教会の上位の人や聖女と言われる人くらいです」
「水の精霊に好かれてるって言ってたから……つい見えるのかと」
「水魔法を発現する人が多くいるのでそう言われているのですよ。私は見た事ないです」
「セリーナとルースは?」
「私も見た事ありませんよ」
「そもそも見えたら教会に連れてかれます」
「それもそうだね」
ネルの話が終わり、私はルースに目がいった。
登場人物紹介
使用人ーーーーーーーーーーーーーー
名前 ルース
所属 平民 ヘインズ家侍女
年齢 20歳
容姿
・髪 ストレートな暗い緑髪
・瞳 黒
・体型 Dカップ 引き締まっている
・顔 泣きボクロ 可愛い系の美人
・身長 172cm
魔法 風魔法 中
名前 コリーン
所属 平民 ヘインズ家副侍女長
年齢 26歳
容姿
・髪 癖のある茶髪
・瞳 緑
・体型 痩せ型 Bカップ
・顔 一重 そばかす顔
・身長 158cm
魔法 風魔法 中
名前 クリフ
所属 平民 ヘインズ家影
年齢 20歳
容姿
・髪 ストレートな紫
・瞳 水色
・体型 中肉中背 細マッチョ
・顔 困り顔 美形 一重
・身長 180cm
魔法 闇魔法 中
貴族ーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 イーディス・ケネット
所属 貴族 次期ケネット侯爵夫人 元ヘインズ侯爵令嬢
年齢 20歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの金髪
・瞳 水色
・体型 Cカップ 標準
・顔 猫目 綺麗系の顔立ち
・身長 160cm
魔法 水魔法 高




