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01 王城にて

あけましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いいたします!!


初回二話は主人公以外の視点から始まります。

この回はパトリック(フィランダーの父)視点。途中でクラレンス(テナーキオ国王)視点になります。

登場人物に関しては後書きをご覧ください。





 ※






 ここはテナーキオ王国の王城。

 常に人が行き交うこの国で一番忙しい場所だ。


 そんな王城の一室ではある男達が対峙していた。


「パトリック。先日次期ヘインズ夫人が、君の家の騎士団に襲われたと聞いた。本当か?」

「はっ! 事実でございます」

「私は言ったはずだ。『大事にせよ』と。……聞いてなかったのか?」

「いいえ。息子にも申し伝えました。息子は魔道具をシェリルに渡して外せない様にしていたそうですが、思っていたよりも騎士団が厄介だった様で……」


 パトリックと呼ばれた男が眉をしかめながら答える。

 この男の名はパトリック・ヘインズ。王城で王国騎士団長をしているフィランダーの父親だ。


 対峙している相手はテナーキオ王国の国王クラレンス。

 自身の執務室の椅子に座り、机の上で手を組んで話を聞いていた。






 話している内容は先日ヘインズ邸で起こった次期侯爵夫人襲撃事件について。

 次期侯爵であるフィランダーの妻シェリルが、ヘインズ家に仕える騎士団に襲われてしまった。彼女は常に三人の侍女を抱えていたが次々と引き剥がされ、大怪我を負う結果に。

 幸いフィランダーの回復魔法ですぐ治したとはいえ、怪我を負った事実は隠せず、騎士団員達は全員監獄行きを言い渡された。

 騎士団員は貴族の次男以下で構成されていたため、家の名に傷がついたと即座に縁を切る貴族が続出。商会を経営していた家は大々的に新聞で報じられたため、大打撃を負う結果となった。


 多くがテナージャ系の貴族であり、この事件で信用は地に落ち、彼らは現在信用回復のために奔走している。






「ほぅ。万全を敷いていたのにも関わらず、出し抜かれてしまったという訳だね」

「……はい」


 パトリックは眉をひそめ神妙な顔でうなずいた。


「『テナーキオ派に行くために手っ取り早く彼女と結婚した』という噂が出ているのだが……これは真実か?」

「いえ。全く違います。息子は初めてシェリルと会ってからずっと求婚し続けておりました。シランキオ人と結婚したいのなら、別の者と結婚すれば良かった。なのに彼女にこだわりました。それは紛れもなく息子が彼女に惚れたからです」

「父であるお前から見て、息子は本気で惚れていると?」


 ふと、結婚式前にヘインズ領に帰った時の事を思い出す。

 「シェリルの剣舞が観たい」というと、いつも冷静なフィランダーがムキになった顔に変わった。

 まるで幼少期に戻ったかの様な表情にパトリックは嬉しくてたまらなかった。

 

「あの子は昔から大人びておりまして、自分も甘えてしまった事もあってか、あまり子どもらしい子どもではありませんでした。そんな息子がまるで幼少期に戻ったかの様に、なり振り構わずシェリルに構ってもらう様子を見ると間違いないかと」

「……構ってもらう?」

「はい。シェリルは上手くあしらっておりました」

「……あしらう?」

「はい」






 夕食時の二人の会話を聞いていると、まるでフィランダーが息子でシェリルがその母親の様なのだ。


「明日はいよいよ結婚式だね。今日から一緒にベッドを温めたいなぁ」

「一緒にいるだけで疲れそうだから嫌です。私が疲れやすい事、知ってるでしょ?」

「ちょっとだけでもぉ……」

「明日に備えて一人でゆっくり寝たいわ」

「えー……」

「私が熱出して寝込んでも良いなら別だけど?」

「やめます! やめさせて頂きます!!」

「……お前達はいつもこんななのか?」


 パトリックが口を挟むと、シェリルの顔がみるみるうちに赤くなった。


「す……すみません」

「いやいや、俺が聞いていても息子が失礼な事を言っているのが分かるよ。済まないね」

「ごめん。父上が居た事忘れてた」

「いつも居ないからな」

「本っ当にごめんなさい」

「ははは。こんなに楽しい食事は久しぶりだよ。いつも王都の邸で一人だからね」

「え……使用人達とは一緒では?」

「使用人は別だからね」

「そうなのですね。うちは田舎だからなのか、両親不在の時は使用人達と食べていたのです。……それが普通だと思ってまして……」

「それは良い事を聞いた。王都に戻ったら提案してみるよ」

「命令しないとあそこの人達は動かないよ」

「そうか。なら命令してみる」

「や……やめた方が……」

「一人で食べる食事は味気ないからな」


 パトリックは王都に戻ったあと、本当にこれを実行した。

 今では一緒に食卓を囲む事が当たり前になりつつある。パトリックは本気でシェリルに感謝していた。






 ※





 一方パトリックの意外な返答にクラレンスは驚いていた。


「……聞いていると次期ヘインズ夫人はフィランダーに全く惚れてない様なのだが……」

「そうですね……ただ、相性は良いと思います。あの息子に対して普通の人に接する様な態度はなかなか出来ませんから」

「あぁ、そうだな。そういう意味では良い縁談だったな」


 クラレンスもフィランダーの人気には同情していた。

 

 自身も婚約者選定の時から令嬢につきまとわれ困っていたからだ。

 今の妻は押しかける事はせずたまに会った時に軽く言葉を交わす程度。それがなぜか印象に残り自分から求婚した。

 ……それが彼女の戦略だと知ったのは結婚したあとの事。だが嫌な気はしなかった。


「普通に接してくれるのは案外難しいからな」

「えぇ。『自分』を見てくれるというのは嬉しいものです」


 その言葉はいかに貴族達が外見しか見ていない事を物語っている。


「……ヘインズ家に余計な者を入れるきっかけを作ったのは私だ。だから今回の事は嬉しくもある。が、その結果一人の女性を傷つける事になったのは辛い。……しばらくはまだ油断せぬ様にな」

「はっ」


 そう言ってパトリックは国王の執務室を退出した。


「ふぅ……」


 思わずクラレンスは天を仰ぎため息をついた。








ヘインズ家に災いをもたらしたのは紛れもなく王家だった。

 幼いフィランダーが余計な苦労をしなければならなかったのも、王家のわがままのせいだ。


 クラレンスは後悔していた。あわよくば王太子の側近にと思っていたが、本人は全くその気がないのに気づかなかったのだから。その結果パトリックの妻が天に召されるきっかけになろうとは思わなかった。


 そして学ぶ事を制限してしまった結果、今だに魔法が使える者と使えない者の溝が埋まらない事を指摘したシェリル。

 身体が弱いにも関わらず素晴らしい剣舞を披露した彼女にもクラレンスは気をかけていた。


 二人には幸せになって欲しい。


 しかしその障害の筆頭が自分の息子だ。


「あいつは……何を考えているんだか……」


 そう言ってクラレンスは机に目を向けると、処理しなければならない書類の山と格闘するため、ペンを取った。





登場人物紹介



名前 シェリル・ヘインズ

所属 貴族 次期ヘインズ侯爵夫人 元アストリー伯爵令嬢

年齢 18歳

容姿

・髪 ストレートの黒

・瞳 黒

・体型 AAAカップ やや引き締まった身体

・顔 前世の姉に近い顔

・身長 162cm

魔法 なし



名前 フィランダー・ヘインズ

所属 貴族 次期ヘインズ侯爵

年齢 25歳

容姿

・髪 ゆるウェーブの金髪

・瞳 水色

・体型 ヒョロッとした身体

・顔 軽薄そうな顔 イケメン

・身長 180cm

魔法 水魔法 高



名前 パトリック・ヘインズ

所属 貴族 侯爵 騎士団長

年齢 45歳

容姿

・髪 ゆるウェーブの金髪

・瞳 水色

・体型 がっしり

・顔 真面目な顔 イケメン

・身長 178cm

魔法 水魔法 高





名前 クラレンス

所属 王族 国王

年齢 50歳

容姿

・髪 ストレートの金髪

・瞳 水色

・体型 中肉中背

・顔 甘い中性的な顔 イケメン 

・身長 175cm

魔法 光魔法 高


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