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05 不貞寝

視点が主人公→ヘインズ家に変わります。

今更ですが、主人公以外の視点の時は三人称で表現しております。


この回では主人公が「え!? こんな事するの? 萎える……」っていうシーンがあります。

それにはちゃんと理由があるのです。それはこの先の回を読み続ければ分かるようになっております。

この先の伏線にもなっておりますので、気になる方は続きも読んでくださると嬉しいです。



 すると、扉が叩かれる音が聞こえた。


「若様の侍従のトミーと申します。奥様宛の手紙をお届けに参りました」

「どうぞ」

「失礼いたします」


 入って来たのは、緩いウェーブの水色の髪に深く青い瞳の可愛らしい顔をした美形の男だった。

 一瞬年下かと思ったくらいだ。ただ身長はそれなりに高いので、もしかしたら童顔で若く見えるだけなのかもしれない。


「お初にお目にかかります。改めて、若様専属侍従のトミーです。侯爵家へようこそ、シェリル様」

「シェリル・アストリーです。これからよろしくね」

「よろしくお願い致します。シェリル様、こちらを。ご実家からでございます」


 差し出された手紙はお父様からのものだった。


「ありがとう」

「では、これで失礼致します」


 トミーはうやうやしくお辞儀をしてから私の部屋を後にした。






 私が切るものを探す前にセリーナが備え付けの机へと促す。


「こちらの引き出しにペーパーナイフが入っておりますので、お使いください」

「ありがとう。気が利いてて助かる」

 

 私はお言葉に甘え、そのペーパーナイフを使って手紙を開き、中の手紙を取り出す。机に座って手紙を読むと、内容は最悪なものだった。


 お父様によって書かれた手紙の内容はこうだ。


 親愛なるシェリルへ

 急な輿入れで済まない。そして私の管理不行き届きを許して欲しい。

 シェリルについて行かせるはずの侍女が妊娠した。どうやら旦那に唆された様だ。今、その侍女は酷い悪阻でベッドから動けそうにない。とりあえず侍女の旦那を執事から下男に降格させる事しか私には出来なかった。なのでこちらから使用人を行かせる事が出来ない。本当に申し訳ないと思う。

                           イライアス


 読みきった私は、お父様からの手紙を……思わず握り潰してしまった。

 その様子を見ていた侍女三人が一斉にこちらを見る。


「……ごめんなさい。少し動揺してしまって……今日はもう休んでも良いかしら?」

「しょ……食事はいかがなさいます?」


 今はちょうど昼も終わりの時間帯。そんなに荷物を持って来ていないので、それを片付けてから摂る予定だった。


「いらない」

「なら、シャワーは浴びます?」

「いいわ。それよりもすぐに休みたいの」


 すると、ネルが私に近づいてきた。


「ではシェリル様。ちょっと失礼します」

「え?」


 侍女は私に手の平を向けると、一瞬私の身体が水に包まれ、その水が泡の様にポンポン消えた。


「何をしたの?」

「シェリル様の身体を浄化しました。簡単にいえば魔法で洗ったのです」

「へぇー……便利」

「ふふっ。よく言われます。あ、お着替えした方がよろしいですね」

「こちらでよろしかったですか?」


 それは私が持ってきた荷物に入っていたネグリジェだった。


「ありがとう」

「こちらで用意したものもありますが、慣れ親しんだものの方がよろしいでしょう」

「一応これも浄化しますね」


 ネルがそれを受け取ると、今度はネグリジェが丸い水の球体に包まれ浮かんだ。水の球体の中では水流がぐるぐる回っている。そして先程と同じく水の球体がポンポン泡の様に消えると、新品かと思うくらい綺麗になっていた。しかも乾いている。


「さぁ。これをお召しになってください」


 侍女達に促され、私はネグリジェに着替えて、ベッドの中へと入った。

 疲れたのもそうだが、完全に不貞寝だ。


 思っていたよりも幼い行動をした自分が恥ずかしい。

 こんな自分が結婚なんて出来るのだろうか?


 今はとにかく休みたいと、私は無理矢理目を閉じた。

 






 ※



 

「シェリル様……どうなさったのかしら?」

「ネル。いえ、副侍女長。こちらはいかがなさいましょう?」


 セリーナが示したのはシェリル様のご実家からの手紙だった。


「三人でいる時はネルでいいわ。これは……一先ず机の中へ仕舞いましょう。個人的な手紙だし、私達が読むわけにはいかないわね」

「若様に渡すのも……ですか?」


 ルースが控えめに首を傾げながら言うと、ネルの眉が中心に寄った。


「そうしたら、シェリル様の手紙は皆、若様を通さないといけないみたいじゃない。監視されている様で私だったら嫌」

「……それもそうですね」

「……今は敬語じゃなくてもいいわ。副侍女長って言っても古株ってだけで選ばれただけだし」

「……助かる。もう荷解きは終わったし、若様に知らせよっか」

「そうね。ルースは残って警護して」

「はい」

「私とセリーナは若のところへ……」


 すると扉がノックされ、ネルとセリーナは顔を見合わせ慌てて扉へと急いだ。


「シェーリル!! 終わっ……」


 フィランダーがシェリルを呼ぼうとすると、突然扉が開かれ二人の侍女に口を塞ぐ。


「んん!?」

「静かにしてください、若」

「ただ今シェリル様はお休みになられております」


 理解したフィランダーはこくりとうなずき、それを確認した侍女達は手を離した。


「倒れたのか?」

「いいえ。ご実家からの手紙をお読みになってから様子がおかしく……突然休むと……」

「そっか……その手紙は?」

「机の中に……もしかして若、読む気では?」

「いけない?」

「ダメです!! どうして若はそういう気遣いが出来ないのですか!?」

「せめてシェリル様の口から話してくれるのを待ちましょう。シェリル様が一番この状況を戸惑われておいでですから」

「……悪かった。やめるよ」

「ここはルースに任せて、お昼に行ってください」

「……せめてシェリルの寝顔を……」


 その言葉にセリーナとネルはフィランダーの腕を両脇から掴んで止めた。


「いけません。まだ結婚前ですよ」

「え? もう結婚予定だし……」

「節度を守りましょうね。ほら、トミー。何ボーッと見てるの。手伝いなさい」

「若様。ダメだって。ニールが食堂で首長くして待ってから行きましょうねー」


 トミーの力も加わり、フィランダーは使用人達によってシェリルの部屋から追い出されてしまった。




登場人物紹介


名前 トミー

所属 平民 ヘインズ家侍従

年齢 25歳

容姿

・髪 ゆるウェーブな水色

・瞳 深い青

・体型 中肉中背 細マッチョ

・顔 童顔 可愛い系の美形

・身長 172cm

魔法 水魔法 中


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