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16 愚かな自分

先に謝っておきます。ごめんなさい。胸糞展開ありです。



 帰ろうとすると、皆が私を無視する様に帰って行く。隣にいたダーシーさんは私に目を合わせると、今にも泣き出しそうな顔を一瞬見せてから、私を置いてその場を後にした。


「ホリー……」


 声がする方へ振り向くと、そこにはミックの姿があった。


「ミック……」

「ビルの奴、酷いよな。俺達を欺くなんてさ」

「……うん」

「皆のあからさまな態度も……ないよな。俺達、情報を持っていたって大したものは持ってなかったのに」

「そう……だよね」


 シランキオ人は懐に入れた者には優しいが、裏切った者には冷たい。恐らく、よくビルと一緒にいた私とミックが情報を漏らしたと思っているのだろう。

 ダーシーさんは次期子爵夫人。旦那さんに迷惑がかからない様、他のシランキオ人と同じ行動をとった。

 正直ダーシーさんにまで無視されたのはショックだったが、私が逆の立場でもそうする。ダーシーさんを恨む事は出来ない。






 そうなると、今後私の身の振り方を考えなければならない。……先程まで、ビルの事にショックを受けていたのが嘘の様に冷静になっている自分がいた。心のどこかでおかしいと思っていたせいだろうか。とにかく今はミックがこの先どうするのか気になった。


「ミックは……残る?」

「騎士団に? ……どうかな。残っても良い事なさそうだし。家に帰ろうにも俺は帰れないからなぁ」

「……どうして?」

「兄夫婦に子どもが出来て、俺の部屋は子供部屋になったんだと。だから帰ってきても部屋はないってさ」

「そうなの!?」

「うん。……だから騎士団にずっと居るつもりだったんだけど、無理そうだな。ってか、勘当されるかも」

「それは……私も……」

「ホリーは……帰るのか?」

「まだ分からないけど……」


 すると「はぁ」とミックはため息をついた。


「冒険者になるしか、道はないな」

「そんな事はないんじゃない? 書類仕事も出来るでしょう?」

「出来るけど、身体動かせないじゃん。うん。冒険者は合ってる気がする。……何なら、俺と一緒に来る?」

「え……」


 突然の申し出に、私は動揺した。


「……そういう選択肢もあるって考えてくれれば良いよ」

「そっ……か。ありがとう、ミック」

「もう、騎士団でまともに話せるのは、ホリーしか居ないからな」


 ミックは、寂しいそうな笑みを浮かべた。






 私が寄宿舎に戻ると、管理人がテナージャの騎士に変わっていた。寄宿舎の周りには何名かのテナージャの騎士達がうろついている。


自分の部屋に入り、部屋着に着替えた。その時に首にかかるものに気づく。


 ビルとお揃いで買ったネックレス。


 私は首の後ろに手を回し、ネックレスを外そうとしたが……出来なかった。……ビルとの思い出が……溢れ出してきたから。






 いつもは真面目な姿勢を貫いていたビルだが、私やミックの前ではおどけた表情も見せる事もあった。はにかむ様な笑顔を私だけが見れるのは役得だとも思っていた。よく私への愛を述べていたビル。


 あれは……全部嘘だったの?

 あのキスは? 私に見せるあの態度は?

 ……道理でおかしいと思った、たいして美人でも、魅力的な身体でもない私と付き合うだなんて……。


 それと同時に思うのは自分への怒り。

 どうして嘘に気づかなかったのか。家族からおかしいと散々言われたのに、どうしてビルを信じてしまったのか。

 ビルという敵を信じてしまった愚かな自分。それが一番許せない。

 こんな自分は騎士団にいらない。

 簡単に騙される様な女は即刻片田舎に帰るべきだ。







 涙が出るのを抑えて帰省用のカバンを出そうとクローゼットに向かおうとした。その瞬間……腹に強い痛みと共に、いつの間にか私の前に黒装束の男が立っていた。顔を見ると、茶髪の男は紫の瞳で私を蔑んだ。


「あ……」

「ブレンドン様から伝言。あぁ……『ビル』って言った方がよかった?」

「な……」

「君、もう要らないってさ。ブレンドン様もよく、君の様な貧相で可愛くない容姿の女と付き合えたよね? 偉いなぁ、ブレンドン様」


 下を見ると、私の腹にナイフが刺さっていた。


「あ……」


 目の前が歪んで、かすみ始めた。

 先程はまで痛かった腹の痛みも……ない。

 目が……とても重く感じる。


 目を閉じちゃダメだ……!!

 

 気合いで目を開けたのに……私の目の前は真っ暗になってしまった。









 ここまでが、ホリー・コリンソンだった私の人生だった。愚かな私は付き合っていた男に裏切られ、その男によって送られた暗殺者の手で殺されたのだ。








 そして気づくと、今まで寝た事もないくらい豪華なベッドの上だった。天蓋つきなんて、夢の様だ。

 腹を刺された後だったので、慌てて腹を触ったが何もなく綺麗なまま。ホッと一息ついた後、自分の手が思ったより小さい事に驚いた。


「え……子どもの手? それより……ここ、どこ?」


 ベッドから降りると、そこは今まで暮らした事がないくらい豪華な部屋だった。広さはホリーだった頃の邸の部屋より三倍はある。


「とりあえず……鏡…」


 キョロキョロと身体と目を動かして、姿見を見つけた。

 トコトコと歩いていくと、鏡には黒髪黒目の五、六歳くらいの少女が現れた。


「え……誰? ……これ……私の小さい時の姿じゃないし……」


 じーっと鏡を見ると、姉の小さい頃に似ている事に気づく。しかし……


「この部屋には……覚えがないなぁ……一体誰? ……貴女……」


 鏡に問いかけても、当然その答えは返って来なかった。


「私は『ホリー・コリンソン』だったのに……どうしてこんな姿に……」


 私はとにかく今までの記憶を思い出した。そしてホリー・コリンソンだった時の詳細な記憶が蘇る。


 暗殺者によって倒れるところまで思い出した後、今の自分の記憶も取り戻した。





「私は、シェリル。……シェリル・アストリー」


 アストリー伯爵の娘で、今年六歳になる令嬢。父と母と兄と使用人達に囲まれ、長閑(のどか)なアストリー領でのびのびと暮らしている。


「でも……歴史に関する情報も、派閥とかの情報も、この国が何て名前の国なのかも分からない……」


 これらの情報は全く頭に浮かんでこなかった。この歳ならしょうがないとも思う。でも、自分が今どこにいるかを知りたかった。


「……まずは情報集めかな。黒髪だからシランキオ人だとは思うけど……うん。とりあえず外に出よう」


 私は情報収集をするため、ドアへと向かった。




前回よりさらに気分が悪くなった方はごめんなさい!! 

これで第一章ホリー編完結となります。作者が今まで書いた中ではもっとも胸糞な話ですね。


活動報告には書いたのですが、過去編にあたる第一章はバッドエンドでした。読み返すと、ある人の言葉が優しく聞こえる……かもしれません。あまり作者の作品でこういう話がなかったので、今まで読んでくれた方は驚いたかと思います。わざとあらすじに「裏切られた」としか書かなかったのはこのためです。


活動報告にも第一章完結について載せる予定なので、よろしければお読みください。


第二章はもうちょっとほのぼのとしているので安心してください。まぁ……第一章ほどではありませんが、あらすじにも書いた通りの急展開ありです。

第二章でやっとあらすじを回収致します。実は第二章はほぼ書ききっているのですが、まだ納得いかない点がありますので、チェックが終わり次第投稿しますね。第二章は全21話の予定です。ちょっとだけお待ちください。



登場人物紹介


過去ーーーーーー


名前 ビル・ロッドフォード改めブレンドン・ニューマーク

年齢 20歳

所属 貴族 シランキオの子爵令息→テナージャの侯爵令息

容姿

・髪 茶のストレート

・瞳 茶

・体型 細マッチョ

・顔 真面目な印象 イケメン 

・身長 186cm

魔法 土魔法 高


名前 ジョシュア

年齢 20歳

所属 王族 王太子

容姿

・髪 金髪のストレート

・瞳 碧眼 

・体型 華奢

・顔 甘い中性的な顔 イケメン

・身長 172cm

魔法 光魔法 高


現代ーーーーーー


名前 シェリル・アストリー

年齢 6歳

所属 貴族 伯爵令嬢

性別 女

容姿

・髪 黒のストレート

・瞳 黒

・体型 標準

・顔 可愛い系の顔立ち 貴族の中では平凡

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