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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十二章: みんなで伝説探究

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012_01_指し示されたその先に

「あれ? 何それ刺繍? すごい! キレイ!!」


 ミライが持っていたペンダントが指す場所にみんなで向かうため、わたしがミライの家に迎えに行くと、彼女は大きな布に刺繍をしているところだった。色とりどりの丸や三角や四角が並んでいる。


「えっ!? あ……何よ、うるさい黒雲(リン)じゃない。あ……そう、もうそんな時間なのね。早く行きましょ!」


 刺繍に集中していた彼女は、わたしが声を掛けるまで全く気付かなかったようで、ものすごく慌てて刺繍を隠し、そそくさと立ち上がった。


「何で隠すの? 何か見られちゃいけない……あ、分かった。それ、ツバサへのサプライズプレゼントでしょ?

 ふふーん……いいよいいよ、黙ってる。ぜーったい言わないから!」


「な……何を言ってるのかしら! そ……そうよ、こんな事してる場合じゃないわ。早く行きましょ!」


 彼女はぷい、と視線を逸らし、そのままずんずんと外へ歩いて行った。相変わらず素直じゃないな。


 そんな彼女を追いかけてわたしも外に出ると、ツバサとカンが待っていた。ツバサはミライとは別の家に住んでいて――どうも竜人は一人一人別の家っていうか小屋に住むらしい――こちらはカンが迎えに行ったところだった。そういえば、カンに会うのも久しぶり……というほど日は経ってないけど、最近は大体ログイン時間が別々だったし、一緒だとしてもわたしはマドカさんと特訓で、カンは何か調べものをしてたりだったから会ってはいなかったなあ。


「ああ、ミライさん。リンさんも。これで揃ったね。じゃあ、行こうか。定員の都合と、コンパスの指す場所を見ながら、って事で残念ながら今回は徒歩だけど……」


 言いながら、カンはミライの方をちらりと見た。ミライは心外、というようにため息を吐き、


「心配ないわ。私だってずっと、旅してきたんだもの」


 と、きっぱり言った。それを聞いたカンは「ああ、ごめん」ときまり悪そうに謝った。


「よし、じゃあ行こうよ! えっと……とりあえず向こうを指してる」


 わたしはミライに預かっておいて、と言われたペンダントを取り出し、それが指す方向を目指して歩き始める。一体、この島のどこを指しているんだろう?



「気を付けろ。黒雲が2……いや3人こちらを狙って近づいてきている」


 ペンダントを頼りに進み、とある森の中に入り暫く進んだところで、小声で、でもごく自然に落ち着いた調子でツバサが告げた。


「え、そんなの分かるのか。この森の中じゃ監視装置も上手く使えないから、俺には分からないんだけど……」


 ツバサの警告にカンが驚いていた。あれ? 現代の科学技術、負けちゃった?


「まさか、リスクオン? わたし達の事、狙ってるとか? でもどうやって居場所が分かったんだろ。偶然誰かが近くにいるだけだったらいいけど、何にしても警戒しなくっちゃ」


 わたしは剣と盾をもう一度しっかりと握り直す。


「あまり力を入れすぎると向こうに気づかれる……いや、そんな事は関係ないようだな。来るぞ。幸福な未来は下がっていてくれ。淀んだ黒雲(カン)、彼女を頼む。うるさい黒雲(リン)、襲ってくる奴らを排除するぞ」


 ツバサは真っ直ぐ森の奥を見たまま冷静に言った。


「りょーかい!」

「……Aye, Sir!」


 わたしとカンはそれぞれ返事をして、襲撃に備える。ツバサ、ミライのそばにいたらいいのに。でも銃を持ってるカンなら遠くからでも攻撃できるから丁度いいし、それより自分が敵をさっさと倒してしまった方が結局安全ってことなのかな。


 そんな事を考えている暇なんてなく、すぐさま静かな森の中に、金属のぶつかり合う音と銃声が響くことになった。


「……! 何だ、バレてんじゃん。ってか強いねー。そいつだって金騎士団(ゴールドナイツ)の中では下っ端でも、その辺のプレイヤーよりはずっと強いはずなんだけど。ま、僕が回復するくらいの時間は稼いでくれたからいっか」


 一度距離をとり、ツバサにあっさりと斬り落とされた腕を回復させ、カタールを再装着しながらタクさんが冷たく言った。彼と交代にツバサを攻撃してきた、彼の言うところの下っ端金騎士団員は、あっさりと黒くきらめく粒に変えられていた。


「金騎士団! いきなり襲ってくるってどういうこと!?」


 わたしは襲ってきた下っ端金騎士団員その2の攻撃を盾で受け流し、カウンターで剣を振り下ろす。相手の肩にざっくりと赤い筋が走った。彼はわたしに答えることは無く、ただ傷を回復させようと傷薬を取り出そうとしていた。答える気は全くなさそう――もしかしたら何も聞いてないのかも――なので、もう問いかけるのはやめて、回復する隙に、わたしは真っ直ぐに剣を突き刺した。シンさんみたいな全身鎧じゃなくて、割と軽装な感じだったので、彼はあっさりと黒い粒に変わってくれた。


 うん、わたし、強くなってるかも! ちなみにブーストは対策を打たれないように新型機以外には使うな、と言われているから今は使ってない。でも、使いこなすための特訓のおかげで、普通の状態でもかなり動けるようになったと思う。マドカさん、ありがとうございます!


 さて、下っ端じゃなくてタクさんなら何か知ってるかな。そう思って、わたしの方なんて見向きもせず、ひたすらツバサに打ちかかっている彼に向けて踏み込もうとしたんだけど、


「く……時間をかけ過ぎた。こいつは囮、か」


 と、タクさんの攻撃は難なく防ぎながらも、苦々し気に呟くツバサの声と、

 

「どうやら、囲まれたらしい。それにしても金騎士団て結構人数いるんだな……。悪いけど、二人とも暫くは少し、大人しくしてくれるかな。間違っても強行突破とかしないで。ああ、リンさんも」


 ミライのそばで、眉根を寄せ周りを見回すカンのため息が聞こえてきたので踏みとどまった。


 うーん……でもこうなってしまったら、金騎士団の目的とかもはっきりさせておいた方が良いだろうし、警戒しつつ、探ってみた方がいいか。でも金騎士団がどうしてもこっちを攻撃してくるようなら、何としても二人の事は守らなきゃ。


 負けないぞ!

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