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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十一章: またまた遺跡探検!

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011_07_パワーアップの代償は#1

「なになに? 『もう一度彼女と会いたかった。憂いの無い未来を、幸福に満ちた未来を築きたかった。彼らが火山の……を理解出来ないのは仕方がないとはいえ……』 すごい、まだ欠けてる部分もあるけど、これなら大体意味は分かるね! 彼女と会いたかった、って、ミライのご先祖様の事だよね!? あの場所に捕まえられてたのは、破壊神の完全封印の方法を知ってる超越者の男だったはずだから……ペンダントは、その男が渡したものだったってことだ!!」


 探検用情報端末(エクスプローラ・ギア)に送られてきた解読結果から導かれた結論に思わず声が弾む。今日は解読結果とか新たに分かったことを共有して、次にどうするかを決めよう、って事で集まってるんだ。


「多分ね。欠けてて読めないが、まあ火山の制御方法があって、その男はそれを知ってたって事か。ミライさんの話だと、あのペンダントは愛しい人――つまりその男――のところに行けるアイテムだった、ってことだった。その男が竜人の土地で獄死した後でもこの島を指しているってことは、別に男の居場所を指してるわけじゃなく、男の家だか何だか、とにかく島内の男が指定した場所を指しているはず。そこに何か、手がかりがあると良いんだが」


 カンは腕を組み、ホワイトボードの前をうろうろしながら、わたしに言ってるのか独り言なのか分からない調子で考えを早口に呟いた。とにかく、ペンダントが指す場所に行ってみればなにか手がかりがあるかも、ってことだよね。


 だけど……そっか。会いたかった、って書いて、その後処刑されてしまったわけだから……結局会えなかったんだな。災害を防いで、その後一緒に暮らそうと思ってたんだよね、きっと。そう思うとせつないなあ。でも、今度はちゃんと破壊神を止めないと。ミライ達には、一緒に暮らしてほしいもんね。


「そういえばリンさんが撮ってくれた写真を見てみたけど、盗掘犯の手がかりになりそうなものはなかった。でも、状況から考えたら竜人よりは黒雲(プレイヤー)だろうね。ただジョー達の様子から考えるに、リスクオンでもなさそうだ。そうすると金騎士団(ゴールドナイツ)ってことになるけど、調べようがない」


 カンはこちらを振り向いて、残念そうに首を振った。


「そっか……宝剣のことは、まだ何も手掛かりなし、か。じゃあ、やっぱり次はペンダントが示している場所に行ってみる、だね!」


 宝剣のことは気掛かりだけど、落ち込んでも仕方ない。自分の気分を上げるため、というのもあって、わたしは努めて明るく、元気にそう言った。だけど、カンは相変わらず浮かない顔をしていた。


「またセイさんに妨害されないとも限らないし、他にも新型(仮)がいないとも限らない。出て来られたら対抗できないからな……」


 彼は大きくため息をついた。う……言われてみればそうだよね……邪魔されるかもしれない。マドカさんやツバサでも防ぐのがやっとだったわけだし、わたし達はともかくミライやツバサが危険な目に遭うかもしれない。二人くらい強くなれれば、少なくともあんなにあっさりやられることは無くなるだろうけど、いきなりそんな達人クラスに強くなれるはずもなく。


「あー、もう! こっちも新型(仮)ゲットできたらいいのに!!」


 どうしていいのか分からず、そんな無理だとは分かりきった望みを叫びながら、わたしはぺたんと机の上に突っ伏した。


「ハッ! やめてよ、あんなつまらない機体を欲しがるなんてさ!!」


 ドアの方から、怒りを露わに吐き捨てるように言うレイさんの声が聞こえてきた。振り向くと、綺麗な顔を思いっきり不機嫌に歪めたレイさんが立っていた。その様子に、わたしは思わずまばたきを繰り返す。いつも余裕たっぷりで飄々とした感じなのに、こんなイライラしているのは珍しいな。


「新型機! 開発凍結にしたはずなのに、性懲りもなく続けてたなんてね! どこの馬鹿が予算出したんだよ!

 むやみやたらと丈夫でパワフル? 全くつまらない機体さ! 単にいい部品を使っただけの、従来のヒューマノイドの延長じゃないか!

 先生が設計した、極小マシンの動的結合により任意の――限界はあるけど――機能を瞬時に組み上げるシステムは実に素晴らしいのに! ちょっと竜人にパワーで劣るからって、数々の利点をあっさり全部捨てるなんて馬鹿げてる!!」


 カツカツと靴音を鳴らし、ぐるぐると落ち着きなく歩き回るレイさんは怒り心頭、って感じだった。あまりの剣幕に、マドカさんとカンが戸惑っていた。わたしもどうしていいか分からない。分かったのは、レイさんが今の機体をすごく好きなんだってことと、やっぱりセイのパワーアップは性能の良い新型機のお陰だったってことだ。


「えっと……ごめんなさい。だけど、あんまりにも新型機が強くて、どうにもならなかったんです。あんなのが出て来ちゃったら、ゲートを閉じるのも上手く行かなくなっちゃうなって。戦闘技術を磨いて強くなるにも時間が足らないし、だから同じ新型機が手に入れば何とかなるかもしれないって思っただけなんです」


 レイさんの怒りを鎮めて、新型機の対処方法を見つけないと、と思い、わたしはなるべく心を落ち着けて、ゆっくりめにレイさんに告げた。


「新型機は多分、あれ1台だけだからそれで彼女に対抗するのは無理だね。まあ複数あったとしても、警戒が厳重だろうし手に入れられないだろうけど。

 でも今の機体でも強くなる方法なら、まあ無いわけじゃないよ」


 レイさんは少し落ち着きを取り戻した様子で――というよりは無理矢理取り戻そうとして――笑顔を作った。


「え? そんな方法あるんですか!? 教えて下さい!!」

「どうせそんな美味しい話でもないんでしょう? 無茶の代償は何です? ホーラだけなら、まだ何とかなるかもしれませんが」


 何か可能性があるならラッキー、と喜ぶわたしとは対照的に、カンは思いっきり冷めた疑いの眼差しを向けていた。


「はあ……カン君は全く可愛くないなぁ。リンみたいに素直に飛びついてくれると嬉しいんだけどな! すーぐ疑いの目を向けるの、良くないよ。

 でもそうだねえ、結論としては君の言う通り余計にホーラは必要になるかなぁ」


 レイさんはちょっぴり苦笑いを浮かべてカンを見た。いつもの調子がすっかり戻った感じだ。


「どういうことですか? あ……誤解しないで下さい! ホーラが……お金が惜しいわけじゃないんです。お金があれば使えるなら……セイに勝てる可能性が上がるなら、なんでも使ってみたいんですけど、でも気になるっていうか」


 わたしが言うと、レイさんはクスリと笑って、


「ま、やってみれば分かるよ。【ブースト】って機能さ。システムに過負荷を掛けて高性能を引き出し、強制的にその出力で動かすんだ。因みに、一般には出回ってない機能さ」


 と答えた。よく分からないけど、ブーストを使うと無茶なパワーが出せるってこと? で、また有料アプリなのかな。


「じゃあ、とりあえずやってみたいです!」


 わたしが手を挙げると、レイさんは嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。


「お、いいねその前向きなチャレンジ精神。じゃあ早速行ってみよう! マドカさん、相手頼んでいいかなあ?」


「もっちろんだわよ」


 と、マドカさんも二つ返事で引き受けてくれた。


 よし! 何かチートでパワーアップみたいな感じでちょっとアレだけど、強くならなきゃ何ともならないしね。とにかくどんなものか、やってみよう!!

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