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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十章: ゆるゆる休息時間!

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010_01_スイフトフェザーは喰えるやつ#1

「二人に話を聞きたければその前に問題を解決してくれ、って言われたけど、どういうことかなあ?」


 二人とも回復して、話ができるようになったから、と連絡が入ったのでウキウキしながらログインしたのだけれど、どうも雲行きが怪しい。


「さあね。まあ、行ってみればわかるんじゃない」


 そりゃあ、カンの言う通り行ってみればわかるだろうけど、そういうことを聞きたいんじゃないんだよ。何か面倒なことが起きたんじゃなければいいけど……きっと起きたから呼ばれてるんだろうな。


 試験農場に来い、ということだったので行ってみると、スイフトフェザーの檻の前にミライと、学者風のローブを着た知的ナイスミドルがほんの少し距離を置いて立っていた。お互いになんだか険悪なムードが漂っている。


「ミライと、ビッド教授? 変わった組み合わせですけど、一体どうしたんですか?」


 わたしは眉根を寄せて、二人をかわるがわる見比べる。


「ああ、君達よく来てくれた。実は最近僕のかわいいスイフトフェザー達が襲われる事件が発生してね。で、犯人を捕まえてみたら彼女だったんだ。

 だが再発防止のために彼女を例えばどこかに閉じ込めておくとか、ここに来させないことも難しい。かといってまた襲われるのは困る。どう解決したものか。なんとかしてくれたまえ」


 「はい」以外の選択肢を選ぶと無限ループになりそうな予感がしたので、「はい」と返事する。教授は嬉しそうに「じゃあ任せたよ」とダンディな笑みを浮かべ、悠々と去っていった。


 ミライが教授のスイフトフェザーを襲った……? なんでだろう? さっぱり分からない。わたしは困って、ミライの方を見た。


「ミライ、どうしてスイフトフェザーを襲ったの?」


「あそこにいるやつらが悪いのよ。ちゃんとここに、食料を囲っているのに出さないなんて! ふざけてるわ!」


 ミライは怒りをあらわに叫んだ。食料……? ええっと……ごはんが不十分だから、スイフトフェザーを襲って食べようとした? ええー?


「研究所が食事を与えない、なんてことはないと思うけど」


 カンが眉間にしわを寄せた。彼の言葉にミライはますます機嫌を悪くしたようだった。


「飲み物だけなんて! そんなの食事とは言えないわ! 肉が必要なのに!!」


「肉? えっと……ここにいるのは研究用で、食べるためのじゃないんだけど……。

 スイフトフェザー、食べたかったってこと??」


 何かあんまりおいしそうじゃないけどな、なんてどうでもいい事が頭をよぎる。


「まあ、本当はもっと強そうな奴――例えばそうね、前に見かけたあの真っ黒な、巨大で凶悪な竜なんか――の方がいいわね。

 そうね、あれがきっと伝説の黒竜なのよ。昔その心臓を食べた英雄は、その力を得て誰よりも強くなった、っていう。そうよ、あれがいいわ」


 彼女はわたしの問いに少し考えた後、興奮気味に答えた。その伝説の黒竜ってタイラントドラゴンじゃない? そんなの倒せっこない。ていうか、美味しいのかな? それ以前に食べれる物なのかな? 大型の肉食動物って、あんまり食べるイメージないけどな。


「食べたら、強く……? いや、倒せる時点で強いんだから、食べたからってわけじゃないだろうよ」


 カンが冷静に伝説に突っ込みを入れた。言われてみればそうなんだけど、どうでもいいよ!


 でもなんか変だ。強くなりたいから強いドラゴンの肉を食べたいってこと? 何でミライは突然そんな事言い出したんだろう?


 でも、何にしてもタイラントドラゴンは無理だよね。イベントであれだけ強い人がいても結局倒せなかったし、今回あの時以上に人を集めることなんてできないし。


 っていうか、あの時の主力ったジョー達リスクオンにしても、シンさん達金騎士団(ゴールドナイツ)にしても、もう敵になってしまったんだよね。……何か暗くなってきちゃった。こんなことを考えるのはやめよう。今はミライの食料問題が先だ。


「うーん、タイラントドラゴンは無理だけど、肉を食べたい、っていうのは研究所に掛け合ってみるよ。ちょっと待ってて」


 ミライとカンの二人を残し、急いで研究所の方へ行って、研究員さんを捕まえて聞いてみると、


「食事はきちんと出しているよ。え、肉? うーん、今までそんなリクエストは無かったんだけど……。

 大体、肉なんて一般階級、特に女性は食べないはずなんだけどなあ?」


 と困った顔をしていた。あれ? 今までは肉、食べなくても平気だったってこと? 何で突然そんなこと言い出したんだろう? なんか、引っかかるんだよね。


「必要なら、悪いんだけど自分達で取ってきてくれるかな。丁度食料の在庫が切れつつあるから、ついでに野菜とか果物とかもよろしく。クエストとして発注しておくから、今回採るものについては密漁のペナルティとかは心配しなくていいし、報酬も出るようにしておくよ。

 そうだ、彼女も連れて行ったらどうかな? 食べたいものを聞いておいた方がいいと思うし、気分転換にもなるんじゃないかな。じゃ、よろしく」


 と、研究員さんが提案してくれた。確かに食べたいものと違うと文句言われそうな気もするし、その方がいいかもね。


「肉、頼んでみたんだけど、他のものと合わせて自分達で獲ってこいって。

 ってわけで、今から食料を取りに行こうよ! 食べたいもの、教えて欲しいから、ミライも一緒に来てくれる?」


 ミライとカンに研究所の人からの依頼の事を話すと、


「ええ、そうね。貴女達だけじゃ何を取ってくるか分かったものじゃないわ。それに、あそこにずっといるのも息が詰まるもの」


 とミライは乗り気だった。その一方で、


「はあ、何なんだ一体。全く面倒な――」


 と、カンは面倒くささ全開だったので、


「宝剣の話とか、聞きたいんでしょ? だったらうだうだ言わずに協力する! ほら、行くよ!!」


 と、一喝しておいた。ちゃんと仲良くすること、って言われたばっかりなのにすぐこれだ。めんどくさがりのサボり魔め。


「……はいはい。そうでした。頑張りますよ、ええ、頑張りますとも」


 彼はふてくされた感じにため息を一つつくと、渋々、といった感じでついてきた。


 そんなこんなでわたし達三人は食料調達のため、町の外に出て、近くの森の方に向かった。でもこういうのも久しぶりだな。ミライは何食べるんだろう?


 ちょっと楽しみかも!


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