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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第九章: どきどき帝国潜入!

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009_04_帝国行きはどうなるの#1

「わ、何? 小さい家がたくさんある! 研究所の中に村?」


「村ってわけじゃなくて、家らしい。台所とか各個人の寝室とか、機能ごとに建物が分かれているらしいよ」


「へー。変わってるね。いちいち違う建物に行くの、ちょっとめんどくさそうな気もするけど」


 採ってきた食材を持って研究所に行くと、直接ミライのところに持って行って、と頼まれた。で、ミライの【家】だと教えられた場所に行ってみたら、結構広い敷地に、日干しレンガの小さな家――っていうか小屋――がいくつか建っていてびっくりした。


「ミライ、食べ物持ってきたけど」


 小屋の一つを覗くとミライがいたので声を掛ける。中から彼女が出てきた。


「あら、食べ物? ふーん……。とりあえず中に入れてくれればいいわ。

 それより丁度良かったわ。貴女達に渡すものがあるの。ちょっと来なさい」


 そう言われて小屋の中に入ると、机の上に沢山のカラフルな紐と、綺麗な石が並んでいた。その横に二つ、それらで作ったっぽいチョーカーが置いてあった。石の周りを紐で編んで、幾何学的な模様を作ってある。どこかの部族のお守りみたいな感じだ。エキゾチックでかわいい。


 ミライは赤い石を中心にしたカラフルなチョーカーをわたしの首に巻いた。そして白い石中心の色味の無い方をカンの首に巻こうとして、身長が足らずに苦戦していた。


「かわいいけどこれ、一体何?」


 わたしが聞くと、彼女はカンの方を諦めてこちらを見た。


「目印よ。貴女達はみんな同じ見た目なんだもの、誰が誰だかわからないわ。ちゃんとすぐに見分けられるようにしたいのよ」


 そっか。彼女から見たらわたしたちみんななんか黒い人型なんだっけ。それじゃあ仕方ないよね。


「ほら、貴方も着けてくれないと困るわ」


「ああ、成程。それに、俺達以外の黒雲と混同されても困るし、いいアイデアかもね」


 ミライからチョーカーを受け取ったカンはそれを首に巻きながらつぶやいた。


「なくすんじゃないわよ」


「うん」


 首ならよっぽど戦闘中に落とすことはないと思うけど……あ、緊急帰還したらなくしちゃうから、しないように気を付けなくちゃ。けどこれ、ホントかわいいな。


「ねえミライ、これの作り方教えてくれない?」


「今はそんなことをしている場合じゃないわ。

 さっき底意地の悪い黒雲が、貴女達が来たら一緒に貴女達の家に行ってみろ、と言ってたわ。ようやく宝剣を取り返す話ができるらしいわね」


 ミライは冷たく笑った。


「え……まあ、そんな話はあるんだけど……。でもレイさん、何でミライに……?」


「分からないが、面倒な話になりそうな事だけは感じるね。

 けどまあ、仕方ない。スポンサーの意向には逆らいたくないし、彼女を連れて行かないと」


 ミライが言ったことに、わたしもカンも戸惑ったけれど、カンの言う通り、ひとまず彼女も一緒に話をすることになった。


---


「お帰りなさい。あら、ミライも一緒なのね。

 え? レイの指示? でもあいつ、いないわよ? ま、ほっときましょ。

 で、どうだったのかしら?」


 白騎士団(ホワイトナイツ)の仮拠点――というか、結局立て直しの目途が立たなくて、研究所内が本拠地になりそうらしい――に戻ると、マドカさんが迎えてくれた。


「アマネさんの許可、もらえました!」


「そう。上手く行ったのね。よかったわ」


 わたしが答えると、マドカさんは笑顔でねぎらってくれた。


「ようやく宝剣を取り戻しに行けるのね!

 全く、黒雲は毎日毎日私にどうでもいい事を尋ねるばかりで約束を反故にする気かと思っていたわ。でも、これでやっと――」


 暗い笑みを浮かべるミライに、わたしは慌てて、


「あ、ミライ、ゴメン。けど、そのためにはまずスターリングって街を守らないといけないんだ。そこから帝国行きの船が出るんだけど、船を使うための条件は敵から街を守るのに協力することだから。

 だから、今すぐってわけじゃないよ」


 と説明する。肩透かしをくらった彼女の顔に、みるみる怒りが浮かぶ。


「ふざけないで! 一体いつまで待たせるのよ。船くらい、奪ってでも手に入れなさいよ! 貴女達の争いになんて、巻き込まれている場合じゃないのよ!」


「そうは言っても、こっちにだって事情が――」


 反論しようとしたところで、かちゃりと扉の開く音がした。気になって、思わずそちらを見る。


「あれ? 何だか修羅場な感じ? 来るタイミング間違えたかな?」


 扉から、皮肉っぽい笑みを浮かべたレイさんが入ってきた。


「寧ろ扉の前でタイミングを見計らっていたのでは?」


 カンに冷たい視線を向けられて、レイさんは苦笑した。


「ああ、居ないと思ってたのに! 結局来るのね!!」


 ミライがうんざりした様子で、諦めたのか大きくため息を吐いて椅子に体を預けた。レイさん、苦手なんだろうな。


「そもそも僕がここに来るように言ったんだしね。遅刻しちゃったけど。

 ま、僕も君がやってることには興味あるわけだし、そのために白騎士団に動いてもらわないといけないわけだしさ。

 それに協力しようって、言っただろ?」


 レイさんがそう言ってミライに笑いかけると、彼女はフン、と鼻で笑った。


「協力? 邪魔の間違いじゃないかしら。宝剣を取り戻すよりも、黒雲同士の戦いを優先するなんて!」


 刺々しいミライに、レイさんは少しだけ苦笑したけれど、


「それで、帝国に行くために銀騎士団のスターリング防衛戦に協力しろって言われてるんだっけ」


 と、すぐにいつもの調子でわたしに問いかけてきた。


「はい、そうです」


 わたしはもらったマップを机に拡げ、金騎士団(ゴールドナイツ)白騎士団(ホワイトナイツ)で、銀騎士団(シルバーナイツ)の本拠地を攻めるリスクオンを後ろから攻撃すること、ただしリスクオンも他ギルドと協力してそれを妨害するかもしれないことを説明した。すると、


「あー、そのことなんですが……」


 と、それまでずっと黙っていたカンがちょっと言いにくそうに切り出した。一体なんだろう?


 あんまりいい話じゃなさそうだけど。

お読み頂きありがとうございます

後二話程度、会話中心です。

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